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エイシスト  作者: 翔陽
18/39

神に反逆する者達


——反逆者について六柱神が会合を開く中。


いつきの住む街から、そう遠くない荒野——。



その荒野の中心に、

ひとつの礼拝堂が立っていた。


十字架は折れ、

天井は崩れ、

祈りの場だった面影はない。


そこは、もはや廃墟だった。


だが——

"重力"だけが、異様なほど安定していた。


礼拝堂の中央に立つ男。

オリエント。


明るい短髪。

すらりとした体躯たいく

軽い口調。


まるで散歩の途中のような顔で、彼は言った。


「ねえ君。

“神”って、役に立った?」


床にひざまずかされているのは、

地方で“神の声を聞く”と称していた預言者。


震えながら、答える。


「か、神は……我々を……」


どこか気怠けだるそうなオリエント。

彼はため息をつくと、

左手を伸ばし、てのひらを開いた。


次の瞬間——


"重力"が、反転した。


預言者の身体が天井へ叩きつけられ、

骨が砕ける音が礼拝堂に響く。


だが、死なない。


「死なせないよ」

オリエントは淡々と言う。

「“失敗例”だから」


背後から、低い声。


「……もう十分だ」

腕を組んだペイモンが言う。

「長引かせると、逃げられる可能性が出る」


預言者は必死に逃げようと足掻あがく。


だが——


ペイモンが一歩、踏み出した。


空間が、"遅く"なる。


恐怖が、形を持つ。


「……っ」


呼吸が、

思考が、

動作が——


すべて、"鈍る"。


「"畏怖いふ"は便利だ」

ペイモンは静かに言った。

「人は“逃げる判断”を、最初に失う」


その横で。


黒い長髪の男、アリトンが壁にもたれかかる。


「……"拒絶"」


たった一言。


それだけで、

預言者の“祈り”が消えた。


声は出ている。


「……どうか……」

「……神よ...お救いください……」


だが、それは意味を持たない。


信仰そのものが、"拒絶"された。


「祈れない……?」

オリエントは楽しそうに笑う。

「可哀想だね」


彼は左手を握った。


途端、預言者の身体が"落下"する。


「仕上げだな」

舌を出しながら近づく、ハザエル。


その手にはナイフが光る。


「安心しろ」

「命令されれば、人は従う」

預言者を見て嬉しそうに話しかけた。


「どうか...見逃して下さい...」

怯えた声の預言者。


その言葉は彼らには届かない。


刃が、喉元に触れる。


「——"動くな"よ」

ハザエルが澄ました声で呟く。


その一言で、

預言者の震えが止まった。


礼拝堂は、沈黙する。


そこに、情けはない。


刃が横に走る。

血が床を染める。


ハザエルはナイフについた血を舐めた。


オリエントは、その様子を見下ろして言う。


「ね?」

「“神”、いらないでしょ」


ペイモンが問う。

「……次は?」


オリエントは崩れた天井を見上げる。


「——“神”はどこにいる?」


ハザエルが笑う。

「祭りはどうだ?」



「あぁ...いいねぇ……」

オリエントも笑った。

「壊すか。」


アリトンが、ぽつりと言う。

「……それなら、神は動く」


「動けばいい」

オリエントは即答する。


その瞬間——

"重力"が礼拝堂全体を歪ませた。


「神は“特別”じゃなくなる」


ハザエルが歓喜する。

「最高じゃん!」


ペイモンは目を伏せた。

「……世界が壊れるぞ」


オリエントはペイモンの方を振り返り、

挑発的に笑う。


「違うっ」

「作り替えるんだ!」



その瞬間とき


街中の高層ビルの屋上。

アルゴスは"観測"していた。


——無数の瞳が一斉にまたたく。


「……秩序が乱れる。」


想いが交錯する因果。


世界は——

少しずつ、戻れない方向へ進み続けていた。


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