試される者
特訓から三日が過ぎた。
ましろといつきは、路地や屋上、廃工場の跡地を使い、徹底的に体術の練習を続けていた。
「"右手"で触れて力を統一……うん、できた!」
いつきは汗をぬぐいながら笑う。
「いいわ、その調子。今度は連続の攻撃を想定してみる」
ましろの指導の下、いつきは"右手"で自分の運動エネルギーを統合し、跳躍や蹴り、腕の動きを補強する。
アルゴスは少し離れた場所から静かに見守る。
「次に動く者は……アレスだ」
彼の声には警告の響きが含まれていた。
「無闇に"力"を使えば、世界はまたズレる」
⸻
その頃、光のない円卓の間。
アレスは拳を握りしめ、家臣イニュオに向かって低く言った。
「……任せたぞ、イニュオ」
「了解。任せろ、アレス」
イニュオは血に染まる槍と盾を持ちながら、深紅の鎧に身を包み、鋭い眼光をアレスに向ける。
「"右手"の少年か……噂通りの力かな」
「破壊はするな、観察だ。俺は出ない」
アレスは冷たく告げる。
「任せるのはお前だ、イニュオ。
結果次第で次は俺が行く」
イニュオは頷き、静かに空間を裂くような気配を漂わせた。
「わかった……ヒカリノ大陸か、待っていろ」
⸻
カラスがなく。
その夜、
特訓を終えたいつきとましろが廃工場で休憩していた。
「今日も疲れたね……」
ましろは息を整えながら言う。
「でも、少しずつ"右手"の感覚がつかめてきた……」
いつきは額の汗を拭い、右手を握りしめる。
突然、空気がひんやりと変わった。街灯の光がわずかに揺れ、微細な因果のズレが路地に広がる。
「……何だ?」
ましろが警戒し、立ち上がる。
次の瞬間、影が二人の前に現れた。
「……はじめまして。」
血に染まる槍と盾を持ちながら深紅の鎧を纏い、冷徹な瞳を持つ女——アレスの家臣イニュオだった。
その気配だけで、路地の空気は圧迫される。
「……お前は?……」
いつきは息を呑む。
イニュオは微笑むことなく、二人をまっすぐに見据える。
「アレスの命令で来た。イニュオだ。君の"力"を確かめる」
ましろは瞬間的に身体を低く構えた。
「……いつき、準備して!」
"右手"で身体に触れるいつき。
運動エネルギーを統一する。
目には、相手の意思と矢印が浮かび上がる
——今度はただの防御だけでは済まされない。
直感だった。
イニュオの冷たい瞳が二人を射抜く。
「……行くぞ」
廃工場は瞬間的に静まり返り、次の衝撃を待つ——。




