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異世界遁世  作者: 半防御 with G
龍の山とソロキャンプ
9/50

第09話 息子を英雄にしてみよう

今日は職場で忘れ物に気が付き、原付で取りに帰った。

全面的に危険より、ところどころ危険が危険だ。

山道の下り坂のカーブが凍結って罠だろ。

異世界の扉ってどこにでもあるんだね。行きたくないけど。

考えてみれば、俺はずっと飢えていたのかもしれない。  

食料にではなく、「まともな人間との会話」にだ。


北の村の村長とは、ぐっと距離が近くなった。  

やはり同年代(精神年齢)の会話は落ち着く。  

俺は村長を本店の前にある畑に招待してアドバイスをもらったり、会長(古龍ソルビトール)に

引き合わせたりした。  

ついには、村長のボロ家を【収納建築術】でリフォームし、さらにファミマ(龍形態)を使って

大規模な土木工事まで手伝ってやった。


そして何より、村長の息子である「パラレル」のことだ。  

彼は病弱で寝たきりだったが、俺が習得したばかりの【光魔法】を試すと、嘘のように回復した。  

彼は賢かった。

スポンジが水を吸うように知識を吸収する。  

俺は彼をたまに龍の里(本店)に呼び出し、前世の知識――土木、地政学、複式簿記などを叩き込んだ。


「……なるほど。村の特産として酒と羊毛、毛織物をブランド化し、観光資源として

温泉を整備するわけですね」

眼鏡をかけたパラレルが、真剣な顔でノートを取っている。

「その通りだ。村の発展が見えてきたな。パラレル、ここから先は君が紡ぐ物語だ。

思うがままに励んでくれ」

「師匠……! ありがとうございます!」

俺は爽やかに笑って、全ての責任と労力を次期村長に丸投げした。  

もちろん、裏からのサポート(口出し)はするけれど。


 ◇


秋になり、酒の原酒ができた。  

だが、龍たちが「早く飲ませろ」「熟成まで待てん」とうるさい。  

仕方がないので、俺は魔法で解決することにした。

「確か、発酵ってのは菌の働きで……要は『腐る直前』だよな?」

試行錯誤の末、俺は【黒魔法】のスキルを習得した。  

本来は相手を弱らせたり腐食させたりする物騒な魔法だが、調整して【発酵】として使う。  

樽に手をかざし、時間を進めるイメージで魔力を送る。  

……成功だ。芳醇な香りが漂う。


また、街へ買い出しに行く際、ファミマ(絶世の美少女)を連れていると目立って仕方がない。  

商人たちに怪しまれ、根掘り葉掘り聞かれるのが面倒なので、

俺は無属性魔法の【隠蔽(HIDING)】を習得した。  

これで気配を消し、必要なものを仕入れるだけ……のはずだった。

生活が豊かになり、地域での商売なのに莫大な利益が出てしまった。  

まずい。  

目立つ。  

このままでは、「あの山には何かある」と国に勘づかれ、俺の平穏なスローライフが

脅かされる予感がする。



「……よし。木を隠すなら森の中だ」

俺は決断した。  

北の村を発展させ、そちらに世間の注目を集める。

そうすれば、俺の山(本店)はただの「仕入れ先」として埋没できるはずだ。  

名付けて『パラレル英雄化計画』。


俺はシムシティをプレイする感覚で、パラレルに知恵と魔法を貸した。

1.上下水道の完備。    

スライムを使った汚水処理槽を設置し、衛生環境を劇的に改善。  

2.治水とインフラ。    

氾濫しがちな川を工事し、貯水池を作成。水車を動力に。  

3.都市計画ゾーニング。    

工業区、農地、商業区、住宅地を明確に区分けし、効率化。

4.行政改革。    

治安維持のための堀の建設、公正な税制、そして教育の義務化。


俺は楽しかった。  

自分の手で街が育っていくのは、ゲームのようで面白かったのだ。


――数年後。  

気がつけば、パラレルは王都から功績を認められて「子爵」になり、

北の村は巨大な城塞都市になっていた。  

全ての功績はパラレルのものとされている。計画通りだ。

ただ一つ、誤算があった。

「……おいパラレル。領地の名前、なんだこれ」

「はい! 師匠への感謝を込めて『ショウタウン』と命名し、王家に登録しました!」


地図に刻まれた文字を見て、俺は膝から崩れ落ちた。  

やりすぎた。  

自分の名前がついた都市なんて、恥ずかしくて直視できない。  

ゲーム気分だったが、リアルで見ると引くレベルだ。



俺は反省し、もう月一回ショウタウンに顔を出す程度にして、

山での畑仕事と酒造りに専念することにした。

パラレルに家督を譲って引退した「元・村長」は、今では俺の商会に入り浸っている。  

商会とパラレルのショウタウンを【転移門】で繋げたため、いつでも来れるからだ。


「いやぁショウ殿、この酒はたまらんのぉ」 「カッカッカ! 人間にしては味が分かるではないか」

縁側で、元村長と前龍王ソルビトールが酒を酌み交わしている。  

酒の味なんて17パラレルには分からないし、ファミマは下戸だ。  

結局、最後はこの二人の爺さんと俺とで宴会になり、朝まで雑魚寝する。


囲炉裏の火を見つめながら、俺は思う。  

街は発展しすぎたし、名前は黒歴史確定だが……こうして気の合う友と酒を飲む時間。  

これこそが、俺が求めていた「異世界生活」なのかもしれない。

投稿の行ぞろえ中に、パラレルが12歳だってことに気が付いた。

12歳だったから、17歳に変更しておいた。あぶない。

酷なことをさせていた。

せめて高校生で領土を立て直してね

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