第49回 国際救助隊結成
おもえば2時起きだった。
眠い。
でも、やってやった感が大いにある。
今日は肉を食おう。
ハンバーグでなく、歯茎に刺さる肉を喰うぞ!
『ガハハハ! これでこの世界も我々のものじゃ!』
『意外とチョロいですな、上官殿』
『これがチームワークの勝利ですかな』
ボイスチャットから、老人の汚い高笑いが聞こえてくる。
画面の中では、重装備のキャラたちが勝利のポーズを決めていた。
『待てーい! そんなことはさせんぞ!』
『悪は許さないわ!』
そこに勇者チームが突っ込むが……。
ドガガガガ! チュドーン!
連携の取れた老人会の十字砲火を浴び、あっけなく全滅した。
これは、俺が作ったバトルロイヤル・ネットゲーム**『ペーエックス(Pex)』**の光景だ。
プレイヤーは、
チーム【老人会】:前龍王ホエイパウダ、前国王オワコン、元村長フロッピ。
チーム【勇者】:安納、綾紫。
暇を持て余した隠居老人たちの廃人プレイに、現役世代が敗北した瞬間だった。
「……お前ら、リアルで働けよ」
俺は管理者権限で、安納のスマホにチャットを送った。
◇
実質的に、勇者は強い。
死んでも蘇るし、ステータスも高い。
冒険者ギルドでもトップランカーだ。
だが、暇なのだ。平和すぎて。
綾紫は『リュウチューブ』で**「綾紫ヘルシーチャンネル」**を開設し、
ピラティス動画を配信している。
なぜか再生数が爆発的に伸びてバズっている。
コメント欄を見ると「揺れた」「神アングル」などの書き込みが多い。
……薄着だからか? けしからん、もっとやれ。
ちなみに、VTuberデンプンさんのチャンネルは、登録者数が100万人を超え
「金の盾」が贈られた。
記念に全世界ライブをやるそうだ。
オリジナルグッズとして**「特別養護ホーム永住権(優先予約券)」**が発売されるらしいが、
ファン層(若者)は気にならないのか? ブラックジョークが過ぎるぞ。
◇
そんな「強いのに暇」な勇者たちの就職先として、
アタオカ国連ビルの33階に**【国際救助隊】**が結成された。
世界中で災害や事故が起きると、現場の最寄りにある「はるか学園」へ【転移門】で移動し、
そこから紅まさり製の最新モービル(ドリル戦車や垂直離着陸機)で出動する。
世界の安全と平和を守る、正義の味方だ。
この前も、線路に紛れ込んだ「子犬」を助けた。
今は事務所でマスコットとして飼われている。
……ただ、そいつは子犬じゃない。
どう見ても**「フェンリル(神喰い狼)」**の幼体だ。
まあ、勇者が飼うなら大丈夫だろう。
事務所を訪ねると、安納がコーヒーを淹れてくれた。
「なんか、毎日が楽しいですよ。世界の役に立ってるんだっていう気がして」
「そうか」
「前までは、いつ地球に帰れるんだろうって思ってましたけど……
もう、この世界に骨を埋めます」
「私もです。ここが私たちの居場所ですから」
綾紫も微笑む。
さすが勇者だ。
覚悟が決まった顔はいい。
◇
龍王の任期も残り1ヶ月。
俺は南大陸で採れたばかりの「7色のマンゴー」を持って、神様の世界へ挨拶に向かった。
「……どうですか神様。世界はこんな感じで、どうでしょう?」
「んむ。上出来、上出来じゃよ」
神様はマンゴーを受け取り、満足げに頷いた。
龍王になって1年11ヶ月。
インフラ整備、世界平和、勇者の就職斡旋。なんとかやり切った。
感無量である。
◇
その後。
リュウチューブにて、『世界神のわがままch』という謎のチャンネルが開設された。
最初の動画は「異世界お供え物ランキング」。
第7位:ショウの7色マンゴー
評価コメント:『珍しいからといって美味いとは限らない。味が渋滞している』
……くっ、辛口だ。
ちなみに、栄えある第1位は――
第1位:紅はるかの特製芋羊羹と、淹れたての緑茶
評価コメント:『これだよこれ。日本人の心だね』
……へぇー。
結局、神様も「和」には勝てないってことか。
俺も次は、コンビニスイーツでも開発して持っていくか。
昔、同人ソフトでキャラの赤と青をずらせば立体になるのではないかと、
手前で幅が変わるみたいなやつ作った。
透明ケースに赤と青のセロハンつけてメガネにしてもらう。
しかし、コミケ前日の徹夜で、セロハン切るだけなのに、左の指元切って血だらけ。
青いセロハンなのに、赤かったりする。




