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異世界遁世  作者: 半防御 with G
文明開化の音がする
32/50

第32話 楽しい大陸間トンネル

健康になりたい。

実は原付でこけて、左足を骨折していたが、なんとか治りかけている。

その時に「健康っていいなぁ」って思った。

あほみたいに山登ってたけど、できないってツライね。

山登ってる時、「なんでこんなツライことしてんだ」と後悔するけどね。

ググレカス王国の王都【チーギュウ】から、南の大陸の玄関口へ。

そこは、かつて小国が乱立し「ごちゃごちゃ」していた地域だったが、

クレメンス王女が武力と交渉でまとめ上げ、新たに**【ランニングハイ保護国】が誕生していた。

首都の名は【クツズレ】**。


この大陸間には海がある。最大水深200m。

ここに鉄道を通すため、海底トンネルを建設することになった。

「そんなことできるわけない」「夢物語だ」

発表された時、世界中から批判の声が上がった。

だが、男たちは歯を食いしばり、可能性ある限り掘り続けた。

これは、そんな男たちの熱き物語である。


 風の中の~す~ばる~……

 (ナレーション:田口〇モロヲ)



プロジェクト始動の前日。

大陸間にある大きめの無人島(後のゼネス島)に、南大陸から選抜された

「口の堅そうな男たち」30人が集められた。

提示された給料は、中くらいの「龍のウロコ」。

その価値を知る彼らは、恐怖と歓喜で震え上がっていた。


現場監督のコンスターチが挨拶に立つ。

「えー、ドラゴン工務店のコンスターチです。現場監督です。

で、実際に現場を仕切るのは、こちらの『山田さん』でーす」

「……どうも、山田です」

マスクとサングラスで顔を隠したショウが軽く手を挙げた。バレたくない一心だ。


「やることは単純ですから、さっそく現場行きましょうか」

全員で【転移門】をくぐる。

出た先は、海底だった。


「……えっ?」

作業員たちが息を飲む。

そこは、海中を貫く透明なチューブの中だった。

強化ガラス(魔法生成)の壁の向こうには、深海の魚たちが泳いでいる。

水深200mの天然水族館だ。

「とりあえず2kmほど作っておきました。

整地して線路も置いてあるんで、あとはボルトを締めて固定する簡単なお仕事です。

国のために頑張りましょう!」

山田ショウが軽い調子で言う。

掘るのではない。ショウが【土魔法】と【空間魔法】で作った空間に、線路を固定するだけだ。



休憩中、山田は労働者側の班長・ポリウレタンと打ち合わせをしていた。

「……というわけで、1日10kmずつ進めようと思うんだけど」

「イケますよ、山田さん。ボルト締めるだけなら余裕ですよ」

ポリウレタンが力こぶを作る。南の男たちはタフだ。

「そうかぁ。うーん、当初は線路2本(複線)の予定だったけど……

インフラ用とか、メンテ用とか、貨物専用線も欲しいよなぁ」

「土地(海底)は余ってますしね」

「よし。計5本にしとくか」

「いいですねぇ! やりましょう!」

その場のノリで、工期と規模が倍になった。


島に設置された臨時駅と換気口周辺は、作業員たちの居住区となった。

山田は彼らに、翻訳した娯楽雑誌を与えたり、

作業中に「落ちてきた魚(海流に巻き込まれたマグロなど)」の販売ルートを教えたり、

海底で見つけた沈没船のお宝を引き上げさせたりした。


「山田さん! また金貨の山が出ました!」

「おう、それは君らのボーナスだ。あと、駅前の一等地は今のうちに買っておけよ? 将来化けるぞ」

そんな「駅前利権」の勧めまでやっているうちに、わずか1ヶ月半で大陸間トンネルは

繋がってしまった。


あとは、両サイドの陸地からループ状に掘り進めて、このトンネルに接続するだけだ。

そこはググレカス王国の一般業者の担当なので、放置した。

結果、接続工事に1年半かかった。


 ◇


その1年半の間に、海底トンネル作業員たちは巨万の富を得ていた。

山田の助言通りに首都クツズレや島の土地を買い占めていた彼らは、駅舎や駅前ビルを建設。

そこは、最新の文化と流行の発信地――通称「セ〇ン文化」が花開く、

オシャレな行政特区となっていた。


そして、ついに全線開通の日。

この奇跡の大陸間鉄道は、謎の現場監督の名を取って、こう名付けられた。

【ヤマダカツテナイ鉄道】

その愛称を聞くたびに、ショウが微妙な顔をしたのは言うまでもない。

メンテナンスが必要だから、線路を交換する。

そんで工事会社ができる。

ゼネス島とクツズレの資金源だよね。

ぜひ弁当屋・土産屋を充実させてほしい。

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