第31話 持つものと持たざるもの
こんなに寒いのに、町ではマラソンやっとりますわ。
健康なんでしょうね。
うらやましい。無駄にうらやましい。
もう健康は買えないですから。
健康、ご苦労様です。
ゼネスト博士の島流し(という名のリゾート・ラボ行き)決定から3日後。
俺たちは再び、ショウタウンの地下にある「居酒屋互助会」に招集された。
■ショウタウン・居酒屋互助会
店の入口には、手書きで『第1回 エネルギーフェア』という看板が立っている。
文化祭か。
だが、店内のメンツは重厚だ。
龍族からはソルビトール、コンスターチ、ファミマ。
人族からは領主パラレル、シリアル。
王族関係では、ググレカスのクレメンス、グウカワ、レスバ。
魔族からはゾージルシのクロロホルム皇子。
そして、勇者パーティの面々と、いつもの互助会メンバー。
世界のVIPが、この狭い地下居酒屋にすし詰め状態だ。
ゴボテンがマイクを持って前に出た。
「えー、皆様お集まりいただき、ありがとうございます。
この度、あまりにも画期的なものが発明されまして……黙って実用化して戦争になってもマズいので、
ここで発表させていただきまーす」
軽いノリで、彼はテーブルの布を取り払った。
そこには、日本の空気清浄機のような見た目の機械が鎮座していた。
「この機械の発案者、ゼネストさんです!」
拍手の中、ゼネストが登場し、プロジェクターを使って説明を始めた。
数日前まで暗闇で生きていた元闇ギルド長が、今はスポットライトを浴びている。
少し緊張しているが、その表情は誇らしげだ。
照明が戻ると、会場は拍手喝采だった。
ゴボテンが機械内部の解説を引き継ぐ。
「仕組みはこうです。まず、私が開発した『チート発電機』を小型化して内蔵しました。
さすが俺、世界のソニ雄」
「自分で言うな」
「その電気を、特殊加工した『龍のウロコ』に流します。
すると、上部のファンから『魔素』が放出されるのです」
ゴボテンがスイッチを入れると、機械が低い唸りを上げ、涼やかな風が出てきた。
「先ほど、外気中の魔素濃度を測定しました。これを基準値として『1ゼネ』とします」
「単位になったか」
「現在の室内濃度は……1.13ゼネです」
数値が表示される。
魔族のクロロホルム皇子が深呼吸をした。
「……ふむ。確かに魔素が濃い『希ガス』」
「使い方合ってるけど、なんか違うぞ」
ネットスラングを使いこなす皇子は放っておいて、ゴボテンが続ける。
「それだけではありません。逆の動作をすれば、空気中の魔素を吸い取って、
電気に変えることも可能です。」
「まあ、電気は実際無限に産み出せるわけですので……」
ゼネストが力強く宣言する。
「ここに、魔素の安定供給、そして電気エネルギーの活用拡大を宣言します!」
うおおおおお!
会場が揺れるほどの歓声。
エネルギー革命の瞬間だ。
VIPたちは興奮冷めやらぬまま、祝賀会場となる城へと移動していった。
◇
店内に、元日本人(転生者・召喚者)だけが残った。
空気が一変する。
ゴボテンが真剣な顔で切り出した。
「……実はね、まだあそこで言えなかったことがあるんだ」
彼は虚空に手を伸ばした。
すると、空間から「3穴の電源コード」がニョキッと出てきた。
コンセントに繋がっていないのに、通電ランプが光っている。
「……これ、勇者の紅まさりちゃんの能力だ」
ゴボテンが、勇者パーティの賢者・紅まさり(妹)を示す。
「彼女、『アイテムボックス』という収納魔法が使えるんだけど、ただの収納じゃない。
内部で時間が経過するし、空間が固定されている」
「まさか……」
「このケーブルの先、ボックスの中に『小型発電機』を入れて稼働させてるんだ」
俺とジャガは息を飲んだ。
コードには、プラス極、マイナス極、アースの端子。
紅まさりが、えへへと笑う。
「私の魔法の魔道具化が成功しまして! 今は小型発電機ですが、大規模な発電所とか、
上下水道のタンクとか、ガスの配管とかに繋げてボックスに入れれば、
どこでもインフラ供給できるんです! すごくないですか?」
無邪気な笑顔。
だが、俺たちの背筋は凍りついた。
「……まさりちゃん。それは、この魔法が使える『持つもの』の特権だ。
だが、絶対に公にするな。誘拐されるぞ」
「えっ?」
「国が放っておかない。お前を捕まえて、一生地下牢に閉じ込めて、
死ぬまで電気や水を吐き出し続ける『永久機関』として扱われるぞ」
「か、監禁……!?」
ジャガも真顔で頷く。
「間違いなくな。戦争の道具にもなる。移動する補給基地だ」
「そ、そうだよねー……」
紅まさりの顔が青ざめる。
俺はため息をついた。
「俺もさ、これから大陸間鉄道を作るけど……
正直、『駅の出入り口に転移門をつければ一瞬じゃん』って思うことはあるんだ」
「でも、やらない?」
「ああ。それをやれば、行商人や運送業者の仕事を奪って、恨みを買って殺される。
軍事利用もされる。
そして何より、俺自身が『便利な道具』として世界中から狙われる」
だから、あえて手間のかかる鉄道を敷くのだ。
技術は共有できても、個人のチート能力は共有できない。
突出した能力は、身を滅ぼす。
「……まあ、裏で色々やっていく分には構わない。そのうち勇者として冒険に行くだろうから、
旅先でこっそり使う分には便利だしな」
「は、はい! 秘密にします!」
こうして、紅まさりのために、地下3階にさらに秘密の「工房用空間」が増設された。
持つものは、持たざるものの前では、その爪を隠さねばならないのだ。
島流しといっても、転移門繋がって来てますし、
これからリゾート地として、研究所として島が発展していくわけですよ。
クレメンスの詫びですな。
かといって、国で手放さないという、、、
いずれ国の重鎮になるのでしょう。




