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異世界遁世  作者: 半防御 with G
勇者という若人たち
29/50

第29話 告白

寒い。それは寒いのであろう。気にするな

一方その頃、ショウタウン駅でも開通式典が行われていた。

元村長であり、現在は名誉駅長のフロッピ爺さんが演説をしていたのだが……

感極まった住民たちによって、演説の途中で胴上げが始まってしまった。


「わっショイ! わっショイ!」

「ちょ、待て! まだ肝心なことを……!」


宙を舞うフロッピ。

その隙に、発車ベルが鳴り響く。

彼は「この鉄道が将来、山を登ってゾージルシ駅(魔王国)まで延伸する」という

超重要プロジェクトを発表する予定だったのだが、言う前に1番電車が出発してしまった。

まあ、パニックにならなくてよかったかもしれない。何もなかったことにしておこう。



■ソルビトール商会・本店(龍の山)

俺は応接室で、捕らえた男と対峙していた。

男の名はゼネスト。

驚いたことに、彼は国一番の裏組織「闇ギルド」のギルドマスターだった。


「……なるほど。国への反逆というより、特定の貴族への私怨か」

ゼネストの話は意外なものだった。

彼が闇ギルドを作ったのは、社会で燻っている南大陸からの移民たちに、

仕事(食い扶持)を与えるためだったという。

主な業務は、工事の妨害やヤジ、集会へのサクラなど、いわゆる「嫌がらせ」レベル。

暗殺や誘拐などの重犯罪は、あえて法外な高値をふっかけることで、

実質的に受注しないようにしていたらしい。


「だが、前回の勇者襲撃と、今回の王の暗殺未遂は?」

「……隣国の貴族から、断りきれない額の依頼が来たんだ。断れば組織ごと潰すと脅されてな」

「隣国の貴族か……」


俺はニヤリとした。

よし、これで大義名分ができた。その貴族の領地を賠償として没収しよう。

あそこは平地だ。ちょうどいい車両基地ができるぞ。

「……あんたの作った鉄道工事のおかげで、俺の部下(移民)たちは真っ当な職に就けた。

それには感謝している」

ゼネストがポツリと言う。

あれほどの大規模公共工事で、末端の労働者にまで利益を分配する為政者など、

今まで見たことがないという。


「……じゃあ、なんで最後に王を殺そうとした?」

「個人的なケジメだ。

部下たちが幸せになった今、俺自身の過去を清算して、組織を解散するつもりだった」


そこで語られたのは、現王オワコンとの因縁だった。

かつて、青年時代のゼネストは王立研究所の研究員であり、ある画期的な発見をした。

長年の研究をまとめ、いよいよ大学で発表という当日。

家族に不幸があり、彼はレポートの提出を同僚に託した。

その同僚こそが、若き日のオワコン王子だった。


だが、ボタンの掛け違いが起きた。

レポートは提出されず、ゼネストは「発表をすっぽかした」として研究室を追放された。

失意の彼は商業ギルドの下働きに落ち、そこで自分より悲惨な境遇の南大陸の労働者たちを見て、

闇ギルドを立ち上げた。


数年後。

偶然再会したオワコンは、悪びれもせずにこう言ったという。

『あ、ごめんね。あの時のレポート、馬車の座席から出てきたわ』

そう言って、封筒を渡してきたそうだ。

悪気はない。

きっと本当に忘れていただけなのだろう。

だが、その「うっかり」が、一人の研究者の人生を完全に破壊したのだ。


「……ということなんだ。俺はボロボロになりながら生きてきたのに、あいつは……」

ゼネストが拳を握りしめる。

俺はため息をつき、部屋の仕切り(パーテーション)に向かって声をかけた。

「……だ、そうだ」


仕切りの向こうから、ジャガ、クレメンス、ファミマが姿を現した。

「……ごめんなさい。あんなダメ親父に人生を翻弄させてしまって」

実の娘であるクレメンスが頭を下げる。

ジャガも複雑な顔をしていた。


「実は、こいつが南の連中に慈善事業(炊き出し)をやってくれていたのは知ってるんだ。

俺の仲間達を守ってくれた恩はある」

「まあ、殴ればスッキリしたでしょうに」

「相手は一国の王だぞ、ファミマ」

ファミマの脳筋発言を諌める。


「……これが、その時のレポートだ」

ゼネストが懐から、茶色く変色した古い封筒を取り出した。

未開封のままだ。見るのも辛かったのだろう。

俺は許可をもらって封を開け、中身の羊皮紙に目を通した。


……数秒後。

俺の手が震えた。

羊皮紙って植物性の紙はないのか。

あ、パラレルの功績か。

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