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異世界遁世  作者: 半防御 with G
勇者という若人たち
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第28話 ゲキオコプンプン鉄道・始動

服を着るという概念を越える。喝!

チーギュウ中央駅のセレモニー会場は、異様な熱気に包まれていた。

開業記念入場券(硬券・ナンバリング入り)が、既に定価の200倍で取引されているらしい。

アホか。

切符は電車に乗ってこそだろう。コレクターの心理は分からんでもないが、転売ヤーは滅べ。


さて、本日のメインイベントは、ググレカス国王・オワコンによる記念演説だ。

これは鉄道開通を祝う名誉ある場だが、同時に「餌」でもある。

急激な改革を憎む「闇ギルド」を炙り出すための囮だ。

だからこそ、血気盛んな第3王子レスバは参加させない。

「お前は次の『アタオカ国際空港』の開港式で主役になれ」と諭し、城で待機させている。



壇上に、オワコン王がゆっくりと姿を現した。

その隣には、派手な衣装の男――ジャガが立っている。

彼は通訳兼、人間スピーカーだ。

俺が作った【風魔法・音響増幅システム】を使い、

王の言葉を南大陸の言葉に翻訳して叫ぶ手筈になっている。


「……えー、この鉄道は、国民の皆様、そして特に南大陸の人々によって、

ありえない速さで完成したことを感謝いたします」

『この鉄道は! 皆と! 特に南の兄弟たちのおかげで! 爆速でできたぜ! ありがとな!』


オワコンの厳かな声の後に、ジャガのファンキーな翻訳が大音量で流れる。

 俺の耳には【言語理解】スキルがあるため、

単に同じ内容をキャラ変して2回言っているようにしか聞こえない。うるさい。


パチパチパチ……(北の人々の拍手)

……ドワァァァァッ!!(一拍遅れて、南の人々の歓声)

拍手が2段階で鳴り響く。


「このチーギュウ中央駅は、終点ではございません。

東西の都市に延伸し、国境を越えることを望んでおります」

『ここはゴールじゃねぇ! スタートだ! もっとデカく繋がるぞ!』


「さて、これは希望ではなく予定なのですが……鉄道はさらに南へ延伸し、海を越え、

200km先の大陸へ進出することが決定しました」

会場がざわめく。

海峡横断鉄道。青函トンネルの4倍近い距離だ。


「後ほど希望者を募ります。またしばらくお力を貸していただきたい。

……あなた自身の未来のために」

『海を渡るぞ! 故郷くにまで線路を引くんだ! 手伝ってくれ! 

あんたらの未来のために!』


一瞬の静寂の後、爆発的な熱狂が会場を包んだ。

南の労働者たちが泣きながら叫んでいる。

故郷へ錦を飾るどころか、故郷への道そのものを作るのだ。

これ以上のモチベーションはない。


なかなかいいスピーチだ。

つい、これが「暗殺者を釣るための囮」だということを忘れてしまいそうだ。



「……では、快適な旅を」


オワコン王が原稿を畳み、満足げに壇上を後にしようとした。

俺は舞台袖の影に潜んでいた。

その時、王の死角――舞台装置の裏に、見知らぬ男が立っているのが見えた。

スタッフではない。その手には、妖しく光るナイフが握られている。

(……来たな)

俺は無言で【転移】した。

男が王の背中に飛び掛かろうとした瞬間、俺はその背後に現れた。


「……っ!?」

男が振り返る暇も与えない。

首根っこを掴み、足元の床に開いた【転移ゲート(本店行き)】へ、ゴミ袋のように放り込んだ。


ヒュン。

男の姿が消える。

すべては一瞬の出来事。

オワコン王が振り返った時には、そこには俺が立っているだけだった。


「おお、ショウ殿。いらしてたんですね」

「……ええ。素晴らしい演説でした。歴史に名を残しましたね、陛下」

「ありがとうねぇ~。いやぁ、緊張したよ」


王は笑顔で汗を拭っている。

自分がたった今、暗殺されそうになっていたことに全く気づいていないようだ。

それは何より。平和ボケもここまで来れば才能だ。

「では、私は裏の片付けがありますので」

俺は一礼して、再び闇に消えた。


さて。

本店(龍の山)に放り込んだ「ゴミ」の処理だ。

じっくり締め上げて、依頼主を吐かせるとしよう。

ゲキオコプンプン丸になるのは、これからだ。

路線名を、チューチューにしようと思ったけど、文字数足りんと思ってさ。

チューチューで良かったなぁ。

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