第24話 勇者たちの進路相談
寒い、服着てなかった。
「あれ、お姉ちゃんいるじゃん」
王女の私室で【転移門】の設置場所を検討していると、背後から鈴を転がしたような声がした。
振り返ると、アイドル顔負けの美少女が立っている。
この国の第2王女、**【グウカワ】**だ。
名前の由来は「ぐうの音も出ないほど可愛い」から来ているらしい。親バカ極まれりだ。
「……アンタ、留学してたんじゃなかったの?」
「卒業したわー。で、帰ってきたら『クレ姉が誘拐された』って大騒ぎでさ。
そんなわけないよね? この国一番の短剣使いが捕まるわけないし」
「そんなに強いんだ、ハッシー」
「頑張ったからね」
クレメンス(ハシガミ)が力こぶを作ってみせる。
俺はグウカワに向き直り、一礼した。
「初めてお目にかかります。龍族の王子(仮)になりました、ショウです。
おそらく近々、姉上のクレメンスさんと婚姻しますので、お見知り置きを」
「へぇ~、やるねぇクレ姉。」
「まあ、腐れ縁だからね。……よし、ショウ。この扉の先に置いて」
俺はクレメンスの指示通り、部屋のクローゼットの扉に【転移魔法】を付与し、
龍の山にある本店と空間を繋げた。
「そういえば、召喚された勇者たちの顔を知らんな。
これから回収に行くんですが、グウカワ王女もご一緒しませんか?」
「行くー!」
軽い。この姉妹、フットワークが軽すぎる。
◇
本店を経由し、ショウタウン支店へ。そこから商会の馬車で城(パラレルの館)へと向かった。
中庭の東屋では、元村長のフロッピ爺さんが、
4人の若者にお茶と温泉まんじゅうを振る舞っていた。
「すいません。……あの、勇者の方々ですか?」
俺が声をかけると、4人が緊張感なく立ち上がった。
まだあどけない少年少女たちだ。
・安納:18歳、剣士
・綾紫:16歳、剣闘士
・紅はるか:17歳、魔導士(姉)
・紅まさり:16歳、賢者(妹)
遅れて馬車から王女二人が降りてくると、彼らは反射的に剣の柄に手を当てた。
クレメンスが鋭い視線を送る。
「……無礼よ」
「あっ、すいません! 気をつけます!」
リーダーの安納が慌てて頭を下げる。
「私たちは、捕らわれた王女を救いに来まして……」
「その王女が、この人。私の姉のクレメンス王女よ」
グウカワが紹介すると、4人は「ええっ!?」と驚愕し、その場に平伏した。
救出対象が目の前にいるのだから当然だ。
その時だった。
ヒュンッ!
どこからともなく、四方から鋼鉄の矢が飛んできた。
狙いは勇者か、それともフロッピか。
「チッ……!」
俺は瞬時に【転移魔法】を展開。
勇者たちの周囲に空間の穴を開け、飛んできた矢を吸い込み、
そのまま射手の方角へ出口を開いて撃ち返した。
ドサッ、ドサッという音が周囲から聞こえる。
「一人逃がした! クレメンス、いけるか!」
「任せて!」
クレメンスがドレスの裾を翻し、弾丸のような速度で駆け出した。
逃げようとした賊の背後に一瞬で追いつき、短剣閃一閃。アキレス腱を切り裂く。
「ぐあっ……!」
賊が倒れ込み、懐から何かを取り出そうとした。
魔力が膨れ上がる。自爆だ。
「させん!」
俺は賊の上半身を【収納魔法】の亜空間で覆った。
ドォン!!
空間内で爆発が起きたが、こちらの世界には風圧一つ漏れない。
あぶねぇ。
「……手首に『闇ギルド』の紋章があるわね」
クレメンスが気絶した賊の手首を確認する。
俺は【鑑定魔法】で、呆然としている勇者たちを見た。
【ステータス確認】
安納:ランクC
綾紫:ランクC
紅姉妹:ランクB
「……え? BとCしかない?」
弱すぎる。
ちなみに隣のクレメンスを見ると、
【短剣スキル:SS】
と表示されていた。Sの上にSSがあるのかよ。
「……安納と綾紫、ちょっとクレメンスと戦ってごらん。紅姉妹は俺とやってみよう」
「えっ、でも王女様に剣を向けるなんて……」
「いいから。訓練だ」
遠慮がちに始まった模擬戦だったが、結果は惨憺たるものだった。
5戦して、5敗。
勇者チームの完敗だ。手も足も出ない。
「……な、なんでだよ!」
リーダーの安納が地面を叩いて悔しがる。
「城内での訓練では、騎士団長にも負けなしだったのに! 俺たちは最強の勇者のはずなのに!」
「……ああ、なるほど」
俺とクレメンスは顔を見合わせた。
典型的な「接待プレイ」だ。
王宮の騎士たちは、召喚された勇者の機嫌を損ねないよう、
わざと負けて自信をつけさせていたのだろう。
実戦を知らないまま戦場に出されていたら、彼らは最初のゴブリンで死んでいたかもしれない。
「……もしかしたら、闇ギルドは弱い勇者を狙って、王家の権威を失墜させようとしたのかもな」
ビビリ散らかしている4人。
このままでは使い物にならない。
「……よし。場所を変えよう」
「どこへですか?」
「『進路相談室』だ」
俺は彼らを連れて、地下の居酒屋(互助会)へ向かうことにした。
まずは現実を教え、彼らの適性を見極めなければならない。
闇ギルドって、まぁいいや




