第23話 第2の方はどこに?
テンションを上げるために、らでんの「ピピカソ」リピート再生。
巡ってきたぁ
ショウタウンに、空前の「王女ブーム」が到来した。
クレメンス王女(中身はオッサン)が考案した、ジンギスカンの締めに
「うどん」を入れるスタイルが定着したのだ。
肉と野菜の旨味を吸ったうどん。……忘れてた。締めは大事だ。
その功績(?)を称え、南門から城までの大通りが【クレメンス通り】と命名された。
ついでに、彼女はフルト(外交官)のコネを使って、
ゾージルシ王国(魔族)の第3皇子クロロホルム主催のパーティーにも参加した。
初の人族の王女の来訪ということで、会場は話題で持ちきりだったらしい。
俺の両脇に、龍の王女と、人の王女。
絵面だけ見ればハーレムだが、中身は「鬼嫁」と「高校のツレ」だ。
俺は胃を痛めながらも、龍族としての存在感をアピールし、友好的な関係を築くことに成功した。
◇
ナンダカンダで、クレメンスは2ヶ月ほどショウタウンに滞在した。
その間、彼女はただ遊んでいたわけではない。
1.ジャガに依頼し、街の風景や構造を写実的に描かせる。(後に絵葉書として販売予定)
2.チークワンブーとゴボテンに命じ、詳細な経済レポートと都市計画書を作成させる。
3.パラレルに、3ヶ月・1年・5年・10年スパンの事業計画プレゼンを練習させる。
準備は整った。
俺たちはゴボテンが作った【飛行船】に乗り込み、王都チーギュウへ向かった。
見た目の説得力は重要だ。
◇
ググレカス王国の王都【チーギュウ】。
南部に位置し、モレシャン共和国とエリカトラウデ連邦に挟まれた貿易都市だ。
ここから各地方都市へ物資が運ばれ、税を吸い上げるシステムだったため、
彼らは隣国には興味があっても、辺境のショウタウンには無関心だった。
しかし、ショウタウンは龍族・魔族との独自貿易のみで急成長した。
税収が50倍になり、領主が子爵になっても、その実態は一部の商人とギルドしか知らなかったのだ。
3年でここまで発展するのは異常だ。
ブォォォォン……(飛行船の駆動音)
王都の上空に巨大な影が差す。
パニックになった王宮魔導師たちが、矢や攻撃魔法を放ってきた。
俺は甲板に立ち、【収納魔法】ですべての攻撃を吸い込む。
「……いきなり攻撃とはな」
「まあまあ、UFOが来たようなもんだし。初見だから許してやろうぜ」
隣でクレメンス(ハシガミ)が笑う。
俺たちは悠々と、城の中庭に着陸した。
◇
ズシォォォン……!
土煙が晴れると、完全武装の兵士たちがズラリと包囲していた。
その真ん中を、クレメンスが堂々と歩き出す。
出迎えご苦労! 父上はどちらか!」
王女の帰還に、兵士たちがどよめく。
俺たちは謁見室ではなく、より内密な話ができる貴賓室へと案内された。
「お父様、ただいま戻りました」
「おお、クレメンス……!」
現王オワコンは、安堵と困惑が入り混じった複雑な顔をしていた。
隣にいた第3王子レスバが説明する。
「姉上! 書き置きもなく消えられたので、我々はてっきり魔族かショウタウンに
誘拐されたのではないかと……!」
「書き置き? 残したわよ、5箇所に」
「えっ」
「執務室の机の引き出しに入れたやつは?」
レスバが側近に目配せする。
数分後、慌てて戻ってきた側近が、一枚の紙を持っていた。
「……ありました。一番上の引き出しに」
「……2ヶ月間、一度も引き出しを開けなかったのか」
俺は呆れた。
この国の中枢は、想像以上にオワコン化している。
「ま、まあよい。無事で何よりじゃ」
王が誤魔化そうとしたので、レスバが青ざめた顔で言った。
「……姉上、まずいです」
「何が?」
「誘拐されたと勘違いした父上が、例の『アレ』を発動してしまいました」
「アレって……まさか」
「はい。『勇者召喚』です。召喚された勇者パーティ御一行は、
5日前にショウタウンへ向けて出発しました」
入れ違いだ。
今頃、異世界から呼ばれた可哀想な現代人たちが、俺の街へ向かっている。
「……まだ着いてないなら、どうにかなりそうですね」
チークワンブーが一歩進み出た。
「陛下。これから説明いたしますが、ショウタウンは龍族と極めて深い関係にあります」
「龍族……?」
「はい。こちらにおわすのが、龍族の王女であらせられるファミマ様です」
紹介されたファミマが、サングラスをずらしてニヤリと笑う。
「どーも。今なら『先払い』で、この城ごと更地にしてもいいけど?」
「ひぃッ!?」
王が椅子から転げ落ちそうになる。
一方、レスバ王子は目を輝かせてファミマに近づいた。
手には、あの「白いお皿」とマジックペンを持っている。
「あ、あの! 僕、ギルガメッシュ・ライトの大ファンで! サインを……
え、龍族の方だったのですか!?」
驚きのあまり、レスバの手から皿が滑り落ちた。
カアァァァン!
硬質な音が響いたが、皿は割れなかった。
「……ふぅ。品質管理は完璧です」
後ろでパラレルが胸を撫で下ろしている。そこかよ。
場が落ち着いたところで、
「ハッシー、アレはどこら辺に設置する?」
「私の部屋の隣がいいなぁ。すぐ遊びに行けるし」
「了解」
俺とクレメンスは、呆気にとられる王と王子を放置して、部屋を出ていった。
パン祭りの皿、丈夫だよね。




