第20話 新たな偉業を称えよう
ストックってなんだろうね。
余裕を持った投稿で、次はどうなるんだろうという期待感を導くのが
作者の妙だと聞いていたのに、俺も「どうなるんだろう」と思っている。
体調悪いのに。
ショウタウンの城内は、パニックに陥っていた。
王女が単身で乗り込んできたのだから無理もない。
畑作業をしていた領主パラレルが、泥だらけのまま緊急招集された。
「申し訳ありません、王女殿下。イチゴの収穫が始まりまして」
「……イチゴ? この季節に?」
「はい。ゾージルシ(魔王国)から耐寒性の苗が送られてきまして。ビニールハウス栽培です」
「……そう」
クレメンスは眩暈を覚えた。
王都では冬の果物など高級品だというのに、ここでは当たり前のように栽培されている。
この格差はなんだ。
街の発展を探っていくと、必ず一人の人物に行き着く。
パラレルが呼ぶ「師匠」という存在だ。
「その師匠とは、どちらに?」
「はい。この街の背後に聳える山脈に、大きな滝がありますね?
あの滝の上に本店があり、そこにおられます」
パラレルは、師匠から言われていたマニュアル通りに答えた。
『厄介そうな人が来たら、居場所を教えていい。どうせあの絶壁と滝を見て諦めるから』と。
ほう……あの上ねぇ」
クレメンスは窓の外、遥か高みにある滝を見上げて、ニヤリと笑った。
◇
クレメンスは【龍前温泉】に来ていた。
露天風呂に浸かりながら、眼前の山脈を観察する。
どうやら人工の滝らしく、水量が調整されているようだ。
一部が凍結し、氷柱が美しい景観を作り出している。
「……これ、日光の『華厳の滝』じゃん」
彼女は確信した。
昼に食べた名物のジンギスカンもそうだ。
タレに漬け込んだ肉を、専用鍋で野菜と一緒に「焼く・煮る」スタイル。
あれは北海道名物『松尾〇ンギスカン』そのものだ。
「知れば知るほど、日本人の影が濃い……」
ウズウズが止まらない。
クレメンスは立ち上がった。
◇
■ソルビトール商会・本店(滝の上)
この山は火山であり、地下にはマグマ、山頂には万年雪がある。
俺はこの温度差を利用できないかと模索中だった。
「氷を【転移】させて、夏場の村の真ん中に置けば、天然のクーラーにならないか?」
「おお、これあると助かるなぁ。今年の夏は暑そうだし」
「冬場は小さく砕いて、冷蔵庫代わりに各家庭に配るのもいい。安全だしな」
「それはいいですね」
背後から、聞き慣れない女の声がした。
振り返ると――
崖の縁から、ボロボロの服を着て、両手に短剣を持った女が這い上がってきたところだった。
「……え?」
どこから来た?
まさか、あの凍った滝を登ってきたのか!?
よく見れば、泥と雪にまみれているが、すげー美人だ。
だが、その手には武器。殺気はないが、只者ではない。
「……戦う?」
「ノー、ノー、ノー」
俺が炎を纏った槍(収納済み)を構えようとすると、女は首を振って短剣を収めた。
敵意はないらしい。
俺は【土魔法】で即席のテーブルと椅子を作り、熱いお茶を出し、収納からダウンコートを渡した。
「……コンスターチ、お前ならあそこ登れるか?」
「いや、人型なら無理だわ。爪が立たん」
「これは偉業だな。記念碑か銅像でも建てるか?」
「観光地化するか?」
「いや、誰も来ないって。タヒぬぞ」
オッサン二人で盛り上がっていると、お茶を飲んで落ち着いた女が割り込んできた。
「……ここって、ソルビトール商会の本店ですよね」
「いかにも」
「この街の黒幕……いえ、凄腕の経営者がいると聞きましたが」
「こいつだよ」
コンスターチが俺を指差す。
女は俺をじっと見つめた。
「あなた、もしかして……転生前は日本人ですか?」
「えっ。……まあ、そうだよ。多摩あたりに住んでて、50歳でこっちに来たけど」
「多摩……ニュータウンの方かしら」
女はふぅ、と息を吐き、姿勢を正した。
「私は転生前、赤羽に住んでて……今はググレカス王国の第1王女やってます、クレメンスです」
「赤羽! センベロの聖地じゃないですか。……え、王女様!?」
「ええ。単刀直入に言います」
クレメンスは、俺の手をガシッと握った。
「結婚してください」
「……は?」
時間が止まった、気がした。
50歳・多摩のおっさんに、赤羽の王女様(物理Sランク)からの求婚。
また一つ、新たな厄介事が舞い込んできた。
第2章が終了ってことで、気軽に読んでて申し訳ないと思っております。
休憩が明けそうなのでここで切り上げますが、誠にありがとうございます。
双方にありがとうございます。
オッサンになったからかも知れんが、ありがたい。ありがたい。




