第19話 新たな厄介者の到来
白菜と豚肉を交互に挟んだ鍋のお値段以上の美味さに虜ロール
めんどいのでポン酢で食う。美味し。
冬のマジックなのかもしれんが、ずっと掛かっていたい。
この前、朝食ったら、ポン酢でむせた。マジック解除。
「えぇっ!? 魔石!? こんなにくれるのぉ!?」
元・秘密基地(現・居酒屋ジャガ)のさらに地下。
俺は【空間拡張】で地下2階を増築し、そこに帰還したゴボテン専用の工房を作ってやった。
お土産の魔石(ゾージルシ王国産)を渡すと、彼は子供のように目を輝かせた。
「いやぁ、飛行船で帰ってきて正解だったわー。魔石エンジンのテストも兼ねてたんだけど、最高だね」
「……飛行船?」
「うん。作った」
俺は天を仰いだ。
そんな移動手段があるなら、最初から言ってくれ。
そうすれば、パラグライダーで決死のダイブなんてしなくて済んだし、
ゾージルシ王国に入国する際も怪しまれなかったはずだ。
……まあ、もう遅い。転移門も設置したし。
「早速、上(居酒屋)までのエレベーター作るわ。動力はこれで十分だし!」
ゴボテンは魔石を抱きしめて作業台へ走っていった。
◇
さて、俺たちの住むショウタウンは、主に人族が暮らす**【ググレカス王国】に属している。
王都の名は【チーギュウ】**。
……建国者のネーミングセンスを疑いたくなるが、歴史ある大国だ。
この国は、魔族の国(ゾージルシ王国)とは長年対立関係にある。
かつて国土を荒らされ、なんとか復興してきた歴史があるため、国民感情は良くない。
だが最近、辺境のショウタウンが龍族の仲介で魔族と貿易を始め、
あろうことか王都チーギュウを超える経済規模になってしまった。
王宮では、連日議論が交わされていた。
「姉上、これは由々しき事態です。ショウタウンの行為は裏切りではないでしょうか」
第3王子**【レスバ】**が熱弁を振るう。彼は理想主義者で、プライドが高い。
「おいおいおい、メンツとかどうでもいいのよ。利益追求! 国民還元! これ常識でしょ?」
それを鼻で笑うのが、第1王女**【クレメンス】**だ。
彼女は超現実主義であり、国の財政を実質的に支えている。
「ようやくゾージルシとの貿易ルートが開けたのよ? 黙認一択だわ」
「人族としてのプライドはないのですか、姉上!」
「プライドで飯は食えないの。……ねえ、お父様?」
話を振られた現王**【オワコン】**は、玉座で気だるげに頬杖をついていた。
彼は政治への関心を失い、最近はもっぱら文化事業(という名の浪費)に現実逃避している。
「うむ……まあ、余は平和なら何でもよいがのぅ」
「王がそれでは困ります!」
居ても立ってもいられなくなったクレメンス王女は、決断した。
自分の目で確かめるしかない。
彼女は「視察に行く」という書き置きを残し、単身王宮を飛び出した。
……だが、その書き置きは、何者かの手によって持ち去られてしまった。
◇
「なんだと! クレメンスが誘拐されただと!?」
翌朝、オワコン王は激怒した。
娘の書き置きがないため、行方不明(誘拐)と判断されたのだ。
「姉上の短剣スキルはSクラス、身体強化魔法も使えます。そう簡単に誘拐など……」
「それでも女子だからなぁ。心配じゃ」
オロオロする王の前に、一人の大臣が進み出た。
野心家の宰相、**【アボーン】**である。
「陛下。これは魔族、あるいはそれに組するショウタウンの陰謀かもしれません。
何らかの対策を取りませんと、国が……」
「それはそうなんだが……軍を動かすのは金がかかるし……」
「では、例のアレをやりましょう」
「……アレ、か」
王の顔色が変わる。
レスバ王子が怪訝な顔をした。
「アレとは?」
「……『勇者召喚』じゃ」
異世界からの救世主を呼ぶ。
それは、国の情勢を一発逆転させるための、禁断の(そして安上がりな)秘策だった。
◇
一方その頃。
クレメンス王女は、王家の馬車を自ら御して爆走していた。
王都から5日。
辺境の領地に入った途端、ガタガタだった砂利道が、
綺麗に舗装されたアスファルト(錬金術コンクリート)に変わった。
「……なによこれ。王都より整備されてるじゃない」
さらに進み、ショウタウンの全貌が見えた時、彼女は絶句した。
城壁の向こうに広がるのは、中世の街並みではない。
3階建て以上のビル群。
ガラス張りの窓。
規則正しく整備された道路網。
「……エレベーターまである?」
外周には環状線のモノレールらしき高架が建設中で、地下では「東西南北線」なる
地下鉄工事が進んでいるという看板が見えた。
そして、住所表示板にはこう書かれている。
『青龍区 1丁目』『朱雀大通り』
「……ここ、日本じゃん」
クレメンスは呟いた。
王族としての言葉遣いが崩れる。
そこにあるのは、異世界の神秘的な都市ではない。
前世で慣れ親しんだ、そこそこ栄えた日本の地方都市そのものだった。
「普通の地方都市じゃん……!」
そう。
第1王女クレメンスもまた、かつて日本で生きた記憶を持つ「転生者」だったのだ。
国の権力者登場。
どうしよう? メルヘンっぽくいこうかなって思っていたのに
夜中3時のテンションでこうなってしまった。
走り出したら止まらないのよね。




