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異世界遁世  作者: 半防御 with G
ショウタウンと陰キャ互助会
18/50

第18話 上空からのハネムーン

この職場唯一の良いところは、帰り道にうまいラーメン屋があるという事だ。

それもまた、二〇系のようなやさぐれた感じでなく、穏やかな醤油系だしのラーメン。

何のだしなのか知らん。メンが柔らかなのでおじいちゃんのオラにやさしい。

あー優しくしてほしい。猫飼いたい。

魔王国の外交官として、異例の出世を果たしたフルトはご機嫌だった。  

彼は地図を広げ、故郷である魔族の国――正式名称【ゾージルシ王国】の素晴らしさを語りだした。

「我が国の主な産業は魔石っすね。魔道具の動力として使われる鉱石で……」

「……魔道具?」

 俺の脳裏に、ある男の顔が浮かんだ。  

ゴボテン(松下ソニ雄)。 彼はエンジニアだ。

魔石の話を聞けば喜んで飛びついただろうに。  

……まあ、いいか。忘れていたものは仕方ない。


「でも、土壌が悪くて作物が育たないんすよねぇ」

「なら、芋類を育てろよ」

横から口を挟んだのは、チークワンブーだ。

「痩せた土地なら根菜だ。それに光魔法と水魔法を組み合わせれば、屋内での水耕栽培も可能だぞ。

設備投資は必要だが、ペイできる」

「マ、マジっすか……!」

フルトが驚愕している。  

パン屋だと思っていた男が、国家レベルの農業改革案を出し始めたのだ。  

まさに知の巨人現る。  

もしこの異世界に秩序があったら、チークワンブーは王になっていただろう。  

魔族側の転生者が、このポンコツ(フルト)しかいなかったのが悔やまれる。



フルトの話によると、ゾージルシ王国には手先が器用なドワーフが多く住んでいるらしい。  

彼らは蒸留酒や特殊金属の加工が得意だが、魔族もプライドが高いため、冷遇されているそうだ。  

俺は彼らをスカウトすることに決めた。  

本店の近くに蒸留所を作りたい。


「よし。俺が龍族の使者として入国しよう」

「えっ、私も行く!」

 ファミマが手を挙げた。  

支店巡りを兼ねて、魔王国へ行きたいという。  

……お?  これは、実質的な「新婚旅行ハネムーン」になりえるのではないか!  

同行するフルト(ガイド)とシリアル(付き人)が邪魔だが、まあ良しとしよう。



位置関係からして、龍の山を下ればすぐにゾージルシ王国だ。  

だが、ドラゴン姿で降り立てば戦争になる。  

そこで俺たちは、特製のパラグライダーで優雅に下山することにした。


「ヒィィィィッ! ぅぅぅ!」

シリアルが白目を剥いて固まっていたが、絶景だった。  

およそ2日で、首都【タイーガ】に到着。  

国境で若干警戒されたが、龍王の親書と外交官フルトの案内により、VIP待遇で宮殿に通された。


魔王との謁見。  

俺はサプライズとして、【転移魔法】で龍王ホエイパウダを呼び出した。

「「!!??」」

魔王と龍王、トップ同士の緊急会談だ。  

俺は仲介役として、魔石と食料の貿易、および農業支援(チークワンブーの知恵)を提案した。  

食い物がないから、戦争を仕掛けてくるのだ。

腹が満たされれば、争いは減る。  

交渉は成立。  

交流の証として、ドワーフの技術者たちを龍の山へ派遣してもらうことになった。



一通りの外交を終えて、残りは観光だ。  

フルトがニヤニヤしながら近づいてきた。

「へへっ、ショウさん。夜の繁華街、いい店ありますよぉ?」

「バカ言え。新婚旅行(という名目)なんだぞ。嫁(予定)を置いて行けるわけないだろうが!」


 俺は丁重に断り、グルメツアーへと切り替えた。  

ゾージルシは、豚肉料理が有名らしい。オーク肉だろうか?  

フルト曰く、彼がソーセージと生姜焼きを普及させたそうだ。

「ほう。じゃあ、燻製くんせいもあるのか?」

「くんせい? なんすかそれ」

「……保存食としての価値が上がるだろ。あと、餌のビート(甜菜)から砂糖が取れることは?」

「えっ、砂糖になるんすかアレ!?」

 俺は頭を抱えた。  

転生者あるあるだろうが! そこは基本だろ!  

やはりこいつは食への執着が足りない。


さらに北へ足を伸ばすと、海があった。  

冬は流氷で閉ざされる極寒の海。

そこではカニ、タラ、アンコウなどが獲れるという。

「アンコウか。アンキモ(肝)は?」

「捨ててますよ。あんなグロテスクなもん、食えるわけないっしょ」

「……はぁ?」

俺は信じられないものを見る目でフルトを見た。

「貴様、『美味し〇ぼ』を読んだことがないのか? 

アンキモは『海のフォアグラ』と称された至高の食材だぞ!」

「いや、知らないっすよ……」

「それに、捌けるやつなら知り合いにいるだろ。地下に」

居酒屋店主兼デザイナーのジャガだ。彼なら完璧に調理できるはずだ。  

フルトの偏食のせいで、この国の食文化は未開のままだ。  

こういう食材を、俺の食卓(と龍族)に回してほしいのだ。


俺は決断した。  

首都タイーガに、【ソルビトール商会・タイーガ支店】を設立する。  

表向きは貿易拠点だが、実態は「俺のための食材調達所」だ。  

ついでに、フルトが自由に行き来できるための転移ポイントにもなる。


「……ショウさん、また勝手に支店増やして。ファミマさんに怒られますよ?」

「大丈夫だ。名目は『龍族のため』だからな。俺も一応、名誉龍族だし」

こうして俺たちは、ドワーフと新鮮なアンコウを土産に、転移で一瞬にして帰宅した。  

ハネムーンらしい甘い時間は……まあ、アンキモが美味かったから良しとしよう。

タイーガ支店は誰が支店長になるのかな?

ショウタウン支店長も定めてないのに。バイトか契約社員かな。

商業ギルドに派遣してもらうんだろうね。

そうなると、いろいろバレちゃうんだろうね。

あのヌルヌルはアロエか!椿油か!とか。まぁカリスマがいるからいいけど。

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