第17話 戦争を知らない子供たち
勤務場所は曜日で異なるのだが、今日はしんどい現場。
おまえやっとけよという感じで放置され、エアコンが効かない。寒い。
原付で着てたユ〇クロのウエットスーツ生地のコートを着て、作業を行う。
誰もいないけど、寒い。
なので歌うのさ。ピピカソを!
魔族のスパイ(フルト)が混じっているということで、急遽、龍の山(本店)にて緊急会議が開かれた。
参加者は俺、龍王ホエイパウダ、前龍王ソルビトール、ファミマ。
そして人間側からは、領主パラレルと、その姉であり「ギルガメッシュ・ライト」の幹部シリアル。
さらに、転生者であるチークワンブー、ジャガ、フルトだ。
まずは俺が、今までの経緯を説明した。
山に引きこもりたくてインフラを整備したこと。
便利さを追求したら、結果的に村が都市になったこと。
「……なにか、これだけのことをしておいて『平穏な暮らし』ができるとでも?」
チークワンブーが眼鏡の位置を直しながら呆れている。
シリアルも無言で頷いている。
「支店はショウタウンにしか出してないよ。あくまでここは龍族のための商会だからね。
色々あれば便利だなぁって思ったから作っただけで、
ギルガメッシュ・ライトが世界規模になったのは、全部ファミマの努力と才能だよ」
「いやいや……現代知識がなけりゃ、あんなシステム構築できんでしょう」
ごもっともだ。
俺は詳細なスキル構成(神クラスの魔法)は見せなかったが、この街の戦略的価値と、
龍族との関係性(不可侵条約)については説明した。
「強すぎる力は、世界の均等を揺るがすからね。俺はバランスを取りたいんだ」
……ショウがそれを言うんだ」
ファミマがジト目で突っ込む。
俺たちは地図を広げた。
魔族の国から谷を進むと、最初にぶつかるのがショウタウンだ。
パラレルたちが所属する人族の王都からは遠く、援軍は期待できない。
「師匠……もし魔族が攻めてきたら、守ってはくれないんですか?」
パラレルが不安そうに聞いてくる。
「大丈夫だ。俺たちにはアレがあるだろ? 『作戦ウラシマ』が」
「あ! そうでしたね師匠!」
パラレルの顔が明るくなる。 『作戦ウラシマ』。
当初からパラレルに教えていた防衛策だが、中身はハッタリだ。
要は「竜宮城(温泉と美食)で骨抜きにして、戦意を喪失させる」か、
最悪の場合は「黒魔法(時間操作)で浦島太郎のように老化させる」という、
アメとムチの極致である。
まあ、山の上からちょっかいを出すだけで終わるだろう。
そこで、今まで無言のフルトが口を開いた。
「……龍王様までいらっしゃるので、正直に話します」
彼の顔つきが変わった。
「今回の件、魔王軍の第3皇子・クロロホルム様が侵略を企んでおります」
「やはりな」
「ただ、魔王様ご本人は許可していません。なんでも昔、この山で『エライ目』に遭ったとかで……」
フルトがちらりとソルビトールを見る。
好々爺は「フォッフォッフォ」とまんざらでもない顔をしている。
昔、ボコボコにしたのだろう。
「私は魔王様から『皇子の暴走を止めるための調査』を命じられたんですが……ぶっちゃけ、
第3皇子は変な貴族と派閥作ってイキってるだけの、世間知らずのボンボンです」
「ほう」
「勝てるわけないっすよ、こんなドラゴンだらけの場所に。同胞に無駄死にしてほしくないし、
何より……あいつバカだし」
シーン。
最後の一言は、本国なら打ち首ものだ。
「……カッカッカ! 気に入ったぞ。お主、スパイに向いてないな」
ソルビトールが笑い、ホエイパウダ龍王も頷く。
「うむ。お前のような正直者は、外交官になれ。親書を渡すから、魔王に届けてこい」
「はっ……! あ、ありがたき幸せに存じます!」
こうして、フルトは一旦本国に戻り、正式な外交官としてショウタウンに
「魔王国大使館」を置くことになった。
◇
憂いがなくなったところで、俺は人事発令を行った。
「チークワンブーさん。あなたは元数学者で、経済や経営のプロだ。
シリアルの指南役として、ギルガメッシュ・ライトの経営戦略を見てくれないか?」
「……私でよければ」
「商品の幅を広げれば、楽〇(ラクテン)やア〇ゾンみたいになれるよ。俺も支援するし」
「お願いします! 家もご用意しますわ!」
シリアルが食いついた。
パラレルも「領土経営も教えてほしい」と目を輝かせている。
最強の頭脳が加わった。
「で、ジャガは引き続き、居酒屋の店主ね」
「なんでだよ!」
ジャガが食い気味に突っ込む。
「いや、君はデザインの天才だからさ。うちの商品開発やパッケージデザインをお願いしたいんだよ。
地下を【空間拡張】してアトリエにするから」
「おお、マジか」
「その代わり、俺が刺身食いたいから居酒屋も続けてね」
「……了解デス」
適材適所。
みんなくすぶっていた才能が、場所を得て輝き出した。
「さすが旦那様。問題を一気に解決ね」
「まあな。場所さえあれば、人は活躍できるもんさ」
俺たちは祝杯を挙げた。
日本の居酒屋メニューと、異世界の酒で。
宴は深夜まで続いた。
……なお。
この時点で、荷物をまとめるために一時帰国していたゴボテン(松下ソニ雄)の存在を、
全員が綺麗サッパリ忘れていたことは言うまでもない。
でん同士でもある35Pです。
体調不良には気を付けないといかんが、3時ぐらいに目が覚めて、書いてたら体調不良になった。
夜は寝なきゃだめだ、寝なきゃだめだ、寝なきゃ。
逆境になればなるほど、浮かぶよね。寒い。




