第15話 転生前日本人の探し方(チークワンブー視点)
2月も中旬となり、寒い日が続きますが皆様いかがお過ごしでしょうか。
職場まで原付で山を越えるので、両脇の下にカイロを張り付けております。
アフリカの都市では有馬温泉。
血流を温め全身にまわすだけではなく、内容物の炭の脱臭にも期待しております。
加齢臭をカット!きっとカット!
独り身の気楽さか、あるいは積年の孤独がそうさせたのか。
チークワンブー(元・森考和)は、モレシャン共和国のパン屋を売却し、
このショウタウンへとやってきた。
堅実な数学者だった前世の自分なら、こんなギャンブルは絶対に否定しただろう。
だが、やってしまった。
「……まずは黒幕を突き止めなければな。何年かかったとしても」
この街に来て驚いたのは、あまりにも「日本っぽい」ことだ。
街中を走る定時運行の乗合馬車、公衆トイレにはシャワー完備、交番、
そして峠の茶屋。
俺が契約した宿は『ライオンパレス』というマンスリー借家だった。
家具・家電(魔道具)付きで、敷金礼金ゼロ。壁が薄いのが玉に瑕だが、懐かしさすら感じる。
荷物を置いた俺は、まず観光に出ることにした。
ガイドブックには「ジンギスカンと温泉が名物」とある。
北海道かここは。
◇
街の中心地から、麓の温泉地までは定期馬車が出ていた。
俺が乗ったのは「貸し切り大型観光馬車」。
ガイドのお姉さんが漫談で楽しませてくれるオプション付きだ。
約1時間で【龍前温泉】に到着した。
そこは、湯けむりに包まれた天国だった。
足湯では、エルフやドワーフ、獣人たちが並んで温泉まんじゅうを食っている。
パンフレットによれば、打たせ湯、壺湯、薬草湯、そしてサウナまで完備しているとか。
俺は迷わず露天風呂へと向かった。
当然、男湯だ。
家族風呂はあるが、混浴はない。
そこだけは異世界ファンタジーではなく、日本のコンプライアンスが適用されているらしい。
ザブン……。 肩まで湯に浸かる。
「……ふぅ」
目の前には、龍族が住むと言われる山脈の絶景が広がっている。
最近できたという人工的な滝も、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
異世界に来て30年。
「俺がこの世界を席巻してみせる」と意気込んだ日もあった。
だが、現実は厳しかった。
言葉は通じても、意思が通じない。
現地の脳筋どもには「ルールを守る」「契約を履行する」という概念が希薄だったのだ。
絶対的な武力や権力がなければ、経済システムの構築など砂上の楼閣。
だからこそ、あの『ギルガメッシュ・ライト』には恐ろしさを感じる。
あれだけの規模で、秩序ある世界企業を作り上げているのだから。
「……いかんな。初日から気を張りすぎている」
俺は自分を宥めた。長期戦だ。
まずはリラックスしよう。
湯を手ですくい、成分を分析する。
「ナトリウム塩化物泉か。ここら辺はケイ素鉱脈もあるから……美白効果が高いな。
だから『白い皿』と『エステ』か。出来すぎ君だろ」
あまりの完成度の高さに、もうここに移住してもいいような気がしてきた。
気分が良くなり、つい口をついて出た。
「ババンバ、バン、バン、バン♪」
昭和の土曜8時、国民的コント番組のエンディングテーマだ。
「「「ア~、ビバノンノン♪」」」
!? 湯けむりの向こう、あちこちから合いの手が聞こえた。
幻聴ではない。
を凝らすと、4人の男たちが湯船を割って近づいてくるのが見えた。
「おぉ、まさかここで日本人と会えるとは」
「奇遇だねぇ」
「マジか、すげーなぁ。ここ異世界だぞ?」
「出会いに感謝だね」
見た目は東洋人っぽくない。
エルフだったり、厳つい大男だったりする。
だが、その魂は間違いなく同郷だ。
俺たちは無言で頷き合い、風呂上がりに大広間で再会することを誓った。
◇
風呂上がり、大広間の座敷にて。
俺たちは瓶牛乳(コーヒー味)を片手に車座になっていた。
1人目、ショウ。
見た目は15歳の少年だが、中身は50歳。
併設の研修センターに原料卸売り業者として来ていたらしい。彼がこの場のまとめ役のようだ。
2人目、ゴボテン(元・松下ソニ雄)。
機械工。魔道具に詳しいエンジニアだ。
3人目、ジャガ(元・岡本キヨシ)。
チャラい。見た目は若いが話が上手く、場の空気を和ませるのが得意な「いいやつ」。
4人目、フルト・フラン。
見た目は魔族。どうやら彼も転生者らしいが……。
「ウィ~……俺ぇ、実は魔王軍のスパイなんすよぉ~」
「おい、バラしていいのか?」
「ここだけの話っすよぉ。魔王とかマジブラックでぇ~」
フルトは酔っ払って、国家機密や自分の素性をベラベラと喋り出した。
俺とショウで必死に宥める。
こいつ、口が軽すぎる。
◇
この縁は大事にしたい。
誰からともなくそんな話になり、俺たちは名刺交換(といっても紙切れに書いただけだが)をした。
そして、ショウの提案で、定期的に会える場所を作ることになった。
「ショウタウンに、龍族専用の会員制バーがあるんだ。
人間は近寄らないから安全だ。そこの地下を使おう」
場所は一等地だが、地下店舗ということで賃料は安いらしい。
いわゆる「大戸屋方式」だ。
「マスターは誰がやる?」
「俺、金ないんで……住み込みでいいならやりたいっす」
手を挙げたのはジャガだった。
彼は以前、酒絡みのトラブル(樽詰め漂流刑)でトラウマを負っており、一滴も酒を飲まないという。 下戸のバーテンダー。
酔って口を滑らす心配もないし、適任だろう。
こうして、異世界に疲れた元日本人たちによる秘密倶楽部――通称【互助会】が結成された。
仲間にエルフといかつい大男がいるそうな。
Geminiよ。設定追加するな!
ならばmエルフはモテ男のジャガ。
大男は魔族のフルトか。
フランクにしようとしたが、フランスじゃないし、永井でもない。
こいつだけ目的違うし、いいか。




