第14話 春の女王と白いもの
100円ショップで爪切りを買うのだ!
と思っていて2か月が経った。
なぜだ、その間にウエットティッシュは買い続けているというのに。
きっとショップ入口に”爪切り忘れろ電波”を発射しているのだろう。
恐ろしき世の中よ。
アマゾンで買うか。
ショウタウンの領主・パラレルには、密かに想いを寄せる少女がいた。
ガラス職人の娘・カーコだ。
彼女はパラレルが病弱だった頃、献身的に世話をしてくれた幼馴染であり、歌が上手く、
そして......実家が頑固なガラス工房だった。
領主となったパラレルは、恩返しのために彼女の父の工房へ大量発注を行った。
この街の特産品として、軽くて丈夫な「白いガラス皿」を売り出そうとしたのだ。
だが、慣れない事務仕事で、発注書の桁を2つ間違えてしまった。
10000枚のつもりが、1000000枚。
そりゃあ、頑固オヤジも泣きながら「一生ついていきます!」と感謝するわけだ。
「......どうしよう、師匠」
「金ならあるだろ? 俺がやったドラゴンのウロコ売れば?」
「金の問題じゃないんです! 城の倉庫が皿で埋め尽くされて、物理的に寝る場所がないんです!」
パラレルが頭を抱えていると、城門の方から騒がしい声が聞こえた。
◇
パラレルの姉・シリアルもまた、人生の岐路に立っていた。
彼女はかつて、村の羊毛を売り込むために王都の協会で働いていた。
画期的なマーケティング戦略で収益を5倍にしたものの、出る杭は打たれるのが世の常。
古参の理事たちに疎まれ、閑職に追いやられていたのだ。
そんな彼女を救ったのが、彗星のごとく現れた「ファミマ・ビューティ」だった。
これまで「光魔法=修道院」という常識を覆し、エステティシャンという新たな職域を開拓した
カリスマ・ファミマ。
シリアルはその手腕を買われ、管理会社の事務局長としてヘッドハンティングされた。
だが、そのカリスマが「飽きた」と言い出した。
解散の危機だ。
シリアルは踏ん張った。ここで終わらせてなるものか。
彼女は新たなビューティーネットワークを築くため、自身の故郷に近い新興都市「ショウタウン」で、
大規模な研修と総決起集会を企画した。
「最近、我がFCの名を語る偽物も増えている......。本物の証となる『シンボル』が必要ね」
そう意気込んで帰郷した彼女だったが、呆然と立ち尽くした。
実家の村が、消えていたのだ。
代わりにあったのは、巨大な城塞都市。
「な、なによこれ......!?」
パニックになりながら領主城を訪ねると、そこには立派な服を着た弟がいた。
「あ、姉さん? 久しぶり」
「パ、パラレル!? あんた子爵になったの!?」
姉弟の再会は衝撃的だった。
ずっとタヒにそうだった弟が都市の長になっている。
「世界企業のCEOって、やっぱり姉さんすげぇや」
「い、いや......あんたの方が凄いでしょ......」
お互いを称え合う中、パラレルが深刻な顔で倉庫を指差した。
「......姉さん、経営のプロとして助けてほしい。あれを捌かないといけないんだ」
そこには、山のように積まれた「白い皿」があった。
◇
数日後。 ショウタウンの大広場は、異様な熱気に包まれていた。
ステージには「ギルガメッシュ・ライト生誕祭」の横断幕。
そして中央には、イメージガールのファミマが立っている。
「皆さん、世界をビューティーにしましょう!」
ファミマの声が響く。観客のボルテージが上がる。
「今、会員登録していただくと......なんと!この『白いお皿』をプレゼント!」
「「「おおおおお!!」」」
ファミマが手に持ったのは、カーコ父の工房で作られた強化ガラス製の皿。
白く、滑らかで、割れにくい。
彼女はそれを顔の横に添え、ニッコリと微笑んでポーズを決めた。
「ギルライだけの、オ・リ・ジ・ナ・ル。......春のパンならぬ、春のファン祭りよ!」
最後に彼女は、謎の決め台詞を叫んだ。
「ギルガーメッシュ!」 「「「ライトーーーッ!!」」」
従業員と観客が熱狂の渦に巻き込まれる中、観客席の端にいた男が震えていた。
パン屋のチークワンブーだ。
「......間違いない」
彼は眼鏡の位置を直しながら、ステージ上のファミマ(と白い皿)を見つめた。
「あの白い皿......。そしてシールを集めて皿を貰うという、あのシステム......。
あれは日本だ。俺たちの『春のパン祭り』だ......!」
パン屋である彼にとって、それは神聖な儀式にも等しい。
彼は確信した。
この街の裏には、間違いなく同郷の「誰か」がいると。
あるフランス都市の経済を支えているという白い皿。
スーパーでバイトしているとき、裏に大量の皿があったことを覚えている。
で、相当余った。
あれは回収されるが、どうしているのだろうか?
溶かして新たな皿に転生しているのではないか?
ん~リサイクル。




