第13話 日本人を震わせるテレ東
シーズン的に閑職に追い込まれております。
もう今期は作業がないことをいいことに書いております。
寒さのせいか指先が動かんのです。
なのでB1・B12のビタミン剤を発注。
量産体制突入なのであります。
もう一つのバブルが、静かに終焉しようとしていた。
ファミマの、ファミマによる、ファミマ・ビューティ・ホールディングスからの電撃退任だ。
理由は「飽きたから」。
新経営者は新たな経営基盤として、各店舗を独立採算のフランチャイズ(加盟店)方式に
切り替えるという。
「光魔法のヒール(治癒)効果と、名付け親の一発ギャグから名前を付けたの」
ファミマが新しい看板のデザイン画を見せてくる。
「その名付け親の王様って、どんな人なのさ?」
「髭のおじいちゃんだったよ。名前は確か……モリシゲ、ヒ・サ……」
「……うん、後半は聞こえなかったことにする」
昭和の喜劇王の名前が聞こえた気がしたが、気にしないことにした。
翌日、全世界に衝撃が走った。
各国の人気エステサロンが一斉に看板を架け替え、大々的に宣伝し始めたのだ。
実店舗を持たずとも、大手の看板とノウハウを背負って商売ができる画期的なシステム。
俺がポロっと漏らした現代知識が、こんな形で世界を席巻するとは。
広告塔のファミマ本人は「飽きた」と言って山でゴロゴロしているが、世界はそうはいかない。
ギルドですら運営はグダグダなのに、彼女が作った組織は世界を管理し始めている。
そのグループ名は――
『ギルガメッシュ・ライト』
……完全に深夜番組だ。
飯島〇もびっくりだ。
ライト(光)で、女性を癒やす。
意味は通っているが、これを見て「反応」してしまうのは、俺と同じ時代を生きたオッサンだけだろう。
◇
■モレシャン共和国
この国では、硬い皮のパンが主食だ。
街の片隅にあるパン屋の店主、チークワンブー(転生前:森 考和・40歳)は、表面積を増やして
食感を良くした「モレシャンパン」を考案し、細々と暮らしていた。
彼は元々、パン屋ではなかった。
前世では数学者であり、美しい数式で世界の経済を読み解くフィナンシャルグループの
設立を夢見ていた。
だが、この国には「特許」も「著作権」もない。
彼の発明はすぐに模倣され、資本家に奪われた。
今はただ、「元祖」という看板だけを頼りに、粉にまみれる毎日だ。
「……はぁ。美しいレトリックも、ここでは無意味か」
ふと、風に舞ってきたチラシが足元に張り付いた。
そこには、見覚えのあるフォントと、懐かしい響きの言葉が踊っていた。
『ギルガメッシュ・ライト、加盟店募集』
「……ギルガメ? まさか、テ〇東か?」
彼の眼鏡の奥の瞳が、数十年ぶりに輝いた。
◇
■エリカトラウデ連邦
工業地帯の路地裏で、油まみれの男が作業をしていた。
彼の名はゴボテン(転生前:松下 ソニ雄・35歳)。
かつて彼は、腸詰肉を均等に加熱する画期的な魔道具「ローラー式ヒーター」を発明し、
コンビニ文化に革命を起こした……はずだった。
だが、あえなく商会を乗っ取られ、今はその子会社で「修理工」としてこき使われている。
浮かれ気分でロックンロールだった自分を反省する毎日だ。
まだ若いつもりだが、過労で顔色は土気色。バツイチ。
終わらない仕事。薄利多売な毎日。
ここはブラックではない、グレーだと言い聞かせているが、身体は正直だ。
「……多色刷り印刷機の修理、完了と」
試し刷りで出てきた紙を手に取る。
それは、人気エステ店のリニューアルオープンのお知らせだった。
『光を、あなたに。ギルガメッシュ・ライト』
「……こんな俺に、光なんてあるのか。イジリーよ!」
彼はそのチラシを、作業着のポケットにねじ込んだ。
◇
■サンスコン自治領
芸術の都パニーニから、大陸違う未開の大地。
この港で、一人の絵描きが看板を描いていた。
名はジャガ(転生前:岡本 キヨシ・36歳)。
前世では同人作家としてコミケの壁サークルを目指していたが、、、
異世界転生後、彼はその願望を爆発させた。
「芸術は爆発だ!」と叫びながらナンパを繰り返し、まさかギャングの娘とは知らずに
手を出してしまった。
結果、酒樽に詰められて海に投げ捨てられるという「東京湾スタイル」の刑を受け、
何日も漂流した末に、この港の漁師に拾われたのだ。
「生きてるだけで丸儲けや!」
以来、彼は反省し、地元の看板描きとして真面目に生きている。
そんな彼のもとに、お世話になった漁師のおかみさんがやってきた。
「ジャガさんや、娘が店を開くんだけど、看板のデザインを頼めないかねぇ?」
「へい、喜んで! 何のお店で?」
「エステよ。なんでも『ギルガメッシュ・ライト』っていうチェーン店で研修を受けるから、
あんたも護衛として本店までついてきておくれ」
「……ギルガメッシュ?」
ジャガの筆が止まる。
その言葉は、彼の青春(深夜のHな番組)そのものだった。
「へい、行きやす! 手は出しやせんよ、たぶん!」
こうして、世界各地に散らばっていた「負け組」転生者たちが、
一つの「光」に吸い寄せられようとしていた。
かつてオリンピック開会式をも超えた、テレ東の深夜番組。
現代に受け継げないことが先人として悲しい。
テレビ文化の停滞ということか、ネット社会の洗礼なのだろう。
なにがキラーコンテンツなのか、太古の昔からわかっているだろう。
いいのか、それでいいのかテレ東よ!
と、いってみたりして。




