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おかしな見習い魔女は自立したい ~約束の小さな旅 編~  作者: とうもろこし@灰色のアッシュ書籍版&コミカライズ版配信中


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第21話 資質の覚醒


「えっ、えっ!?」


 体に紫電を纏い、瞬間移動するように魔法を回避したニーナだったが、彼女自身も自分の身に何が起きているのか完全に理解していない様子。


 同時に静電気で長い髪を逆なでながらも、二度も魔法を放たれて未だ生きている事実に驚きを隠せないといったところか。


「な、なんで……! クソがッ! クソがッ!」


 肩から血を流す男は三度目の魔法を放つ。


 未だ戸惑いを隠せないニーナだったが、力の使い方は理解してきたようだ。


 発射された魔法を睨みつけると、紫電の力を使って回避する。


 バヂッ! と稲妻が迸るような炸裂音を鳴らし、地面には焦げ跡の軌跡を残し、一瞬でリリベルの隣に移動する。


「ひゃー! ニーナ、すごい!」


「これがニーナ様の持つ英雄の資質なのかしら?」


 バヂンと弾ける音を炸裂させながら移動したニーナがリリベル達の隣に立つと、リリベルとレダの髪が静電気でピンと空へ向かって逆立ってしまう。


 もちろん、犬精霊であるテオの毛も。


 脅威的なスピードを誇る力の余波は周囲にも影響を及ぶすようだ。


「こ、こうなったら……!」


 男はニーナを殺せないと判断したらしく、次の狙いを無防備なマルカへ向けた。


 魔法陣を片手で構築しつつも、マルカを捕らえて人質にするべく走り出すが……。


「させるわけないでしょッ!」


「ぎゃっ!?」


 レダの弓が唸る。


 素早く放たれた矢は今度こそ男の頭部に命中し、射抜かれた男は絶命した。


「マルカ!」


「お嬢様! お怪我は!?」


「マルカこそ怪我なくて!?」


 ニーナはマルカへと駆け寄り、主人と侍女は抱き合いながら無事を確認する。


「もう敵は潜んでいないかしら?」


「向こうもそろそろ終わりそうかな?」


 ニーナを守ることに専念していたリリベル達が前へと振り返ると、そこには大活躍するアレスとハイネ、カミ爺の姿がある。


「うおおおおッ!!」


 英雄の資質をフル活用するアレスがマリオネットの頭部を斬り飛ばす。


 横から隙を狙っていたもう一体のマリオネットがアレスに剣を振り被るが、その腕をハイネが斬り飛ばした。


 二人がマリオネットを相手にしている隙に、今度はイルミナスの男達が魔法を放ってくる。


「させぬわッ!!」


 更にそれを阻止するのは肩で大きく息を繰り返すカミ爺だ。


 未だ魔法を使用しているが、顔は脂汗塗れ。繰り返す息の荒々しさも含めて、今にも倒れてしまいそうに見える。


 ただ、対魔法として脅威でもあったマリオネットは全て殲滅できたようだ。


 残るは生身の人間のみ。


「リリベルちゃん!」


「うん!」


 レダとリリベルの援護も加わって形勢逆転。


 どんどん敵は討ち取られていき、最後に残されたのはリーダーの男。


「お前からは詳しい話を聞かせてもらおうか」


 剣先を向けて言うのはハイネだ。


 同時にアレス達も大きく頷く。


 イルミナスという意味不明な組織について、詳細な情報を吐かせたいとの思いは全員が一致している。


 敢えて残したリーダーの男を拘束し、じっくりと組織の実態や背景、目的の意図など全て吐かせてやろうと。


「その後じっくり、お嬢様への殺害未遂による罪を断罪する!」


「フフフ……。それはどうかな?」


 男は懐中時計のような道具を手にする。


「何をする気よ!」


 何か切り札があるのではないか? そう考えたレダが矢を射る。


 レダの矢は男の腕に命中するが、命中する寸前に道具を地面へ叩きつけた。


 更にそれを足で踏み潰し、証拠隠滅の如く破壊してしまったのだ。


「貴様!」


 それを見て声を荒げたのはカミ爺だった。


 何かしらのヒントになる物を残さない。最後まで悪あがきしてみせる、とばかりに男はニヤリと笑う。


「これは終わりではないぞ! いつか、お前達は全員駆逐される! 何故ならそれが神の望みだからだッ!」


 男は隠し持っていたナイフを抜き――


「新たな世界に光あれ!」


 そのナイフを自身の首に突き刺した。


「なッ!?」


 最後は自害という結末。


 その容赦なく、躊躇いすらない行動に全員が言葉を失った。



 ◇ ◇



 リーダーの男が自害した後、ハイネはアレス達と部下達と共に敵の死体を処理し始めた。


「持ち物は……。これといって無いですね」


 敵の男達が身に着けているのは平凡な服のみ。特徴的な黒いローブも特に特別なところはなく、どこにでも売っている品だ。


「ふぅ~。これが壊れてしまったのが痛いな」


 疲れ果てた顔のカミ爺は粉々になった懐中時計に似た道具の欠片を回収するが、繊細な物だったのかほとんどのパーツが粉々になっている。


「全員に共通する持ち物といえば、このネックレスか」


 イルミナスに所属する男達全員が所持していたのは、六芒星の形をしたネックレスだ。


「これってよく見ると六芒星の中に()が生えているのね?」


 レダも回収したネックレスを持ち上げ、まじまじとその形を見つめる。


 ネックレスは六芒星の形をしているのだが、その中心に木――大樹のような形がある。


「小さいのに精工な作りだ。イルミナスとやらは腕の良い彫金職人を抱えているのか?」


 全て一定のクオリティで作られており、どれも雑さや妥協が見られない。


「こいつら、少なくともトリニア人じゃないですよね?」


「そうだな」


 改めて男達の顔を眺めてみると、やはりトリニア人とは思えない顔の造りだ。


「あとは向こうのマリオネットとやらか」


 カミ爺は腰を叩きながらも「よっこいせ」と立ち上がる。


 そして、壊したマリオネットの残骸へと近付いていく。


「うーむ……。こりゃなんだ? こんな物も錬金術で作れるのか?」


 比較的損傷が少ないマリオネットを探して検分を始めるも、カミ爺は切断された頭部を片手に唸り声を上げる。


「カミ爺でも分からないことってあるんだ?」


「そりゃそうだ。ワシは魔法の研究者であって錬金術師ではないからな。とはいえ、これほどの物を作るには……」


 仮に錬金術の技術を用いて作られた物ならば『本場』の仕事ではないか? とカミ爺は推測する。


「本場って……。大陸西側?」


「そうだ。西側は東側よりも錬金術の技術が進んでおるし……。さすがに東側の国がこんな物を作れるとは思えないが……」


「しかし、国の研究機関が秘密裏に開発したということもあるでしょう?」


 ハイネは東側にある国のどこかが、技術成長自体を隠しているのではないか? と。


「それもあるかもしれませんが、あんな組織に技術を流しますかね? 発覚したら国際問題に発展するんですよ?」


 他国の貴族さえも躊躇わずに狙う意味不明な集団。


 そんな者達に国ぐるみで技術提供していたとして、発覚すれば周辺国から総叩きに合うのは目に見えている。


「最悪、戦争になりかねない」


 周辺国が連合を組み、問題の国をぶっ潰す! という状況にだってなりかねないのだ。


 そんなリスクを国がとるだろうか? そこまでするメリットがあるのだろうか?


「とにかく、死体を埋めて早々に出発しよう」


「そうですね。また現れても厄介ですし」


「ああ、ちょっとだけでもいいからマリオネットの残骸を回収してくれ!」


 アレス達は魔獣が寄り付かないよう男達の死体を土に埋め、マリオネットの残骸を出来る限り回収。


 その後、再び領地に向けて出発した。



 ◇ ◇



 出発後、キャビンの中にいたニーナは頬を赤らめるほど興奮状態になっていた。 


「な、なんだったのかしら、あれは……!」


 ニーナは自身の両手を見つめながらも「ふーっ、ふーっ」と荒い鼻息を漏らす。


 淑女らしからぬ姿ではあるが、自分でも制御できないほど興奮してしまっているようだ。


「お嬢様が持つ英雄の資質なのではないですか? テオ様もアレス様と匂いが似ている、と仰っていましたし」


「英雄の資質ってこんなに体がカッカと熱くなるものですの?」


 ふんす、ふんす、と鼻息を荒くするニーナは若干ニヤけながら続ける。


「あ、あのバチバチさせながら走るの。く、クセになってしまいましたわ」


 どうやら紫電を纏っての移動は快感すら感じるらしい。


「それにしても凄かったね。どうやって出来たの?」


「私もよくわかりませんの。飛んでくる魔法が見えて、リリベルの『避けて』という声が聞こえて……」


 当初、ニーナは「死にたくない」と強く思ったと。


 そして、リリベルの声に従って足を上げると――想像以上に自身の足が軽かったと語る。


「そうしたら、速く走れましたの」


「速いって次元ではなかったよね」


 テオは舌を出しながら呆れる。


「……私が魔法を使えなかったのは、この力のせいなのかしら?」


「あり得る話かもね」


 そう言ったテオは改めてニーナの匂いを嗅ぐ。


「……アレスより濃い匂いがする」


 匂いの濃さが力の強さに比例するのかは分からない、とテオは明かす。


「だけど、確実に君は英雄の資質を目覚めさせたようだね」


「そう……」


 ニーナは少し俯き、マルカへ顔を向ける。


「これでお爺様も納得してくれるかしら?」


「喜んで下さると思いますよ」


 ニーナの問いに笑みを浮かべるマルカは彼女の手を握った。


 安堵するニーナが笑みを浮かべ――その後、彼女は無事に実家へ辿り着くことができた。


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