創造主、俺！
俺にはちょっとした、ささやかな趣味がひとつある！
それは夜寝る前に自分だけのオリジナル世界を空想すること！
まぁその世界はゲームや漫画なんかでよく見るファンタジーの世界って言ったら想像してもらえやすいかな。
そこにこんなキャラがいたらいいなーとか、こんな場所があったらいいなーとか、こんなシチュエーションとかあったら熱いよなーとか、そんな自分だけの理想のファンタジー世界を、俺は夜な夜な温かい布団の中で眠りに落ちるまでの短い時間を使って毎日考えている。
これが眠るまでの退屈な時間の良いヒマつぶしになるし、なにより妄想した自分の世界が毎日どんどん広がっていくのが楽しくって、もう俺も３６歳の良い大人になるっていうのになかなかどうしてやめられない。
そういやもうこの妄想を始めてから、かれこれ３０年くらい経つのかな。
布団に入ってから眠るまでのわずかな時間だけとはいえ、毎夜毎晩欠かすことなく妄想をし続けた結果、今や俺でも把握しきれないくらいの壮大なファンタジー世界が俺の頭の中には広がっている。
きっとこの妄想を何かしらで形にすることができるのであれば、超大作のゲームか漫画が一本作れてしまうことだろう。
ただ、俺はそんなことをする気は一切ない！
だってこれは俺の創った俺だけの世界なんだから！
―――今日は何を創造しようかな……！―――
こうして今日もいつものように寝る前に妄想をする。
あ、ちなみに俺はこの妄想の世界の創造主という設定だ。
登場キャラクターたちからは創造神として信仰の対象にもなっていたりする。
特に、この妄想の世界の中でも俺が特別に気に入っているキャラクターというのが二人いるのだが、その二人は神である俺の熱心な信奉者で、創造主である俺を最高位の神と定めた創造神教を創設までしてくれているのだ。
いやぁ、なんて可愛いヤツらなんだろう。
……ん？
いや、まぁ、たしかに自分で考えたキャラクターたちに自分の事を崇拝させるのは流石にちょっと気持ち悪い設定かもしれないけど……
べ、べつに良いだろ？
俺が創った俺の妄想の世界の話なんだからさ。
あ！ そうだ！
話のついでだし、その二人の事を紹介しようか！
まず一人目はアリス！
やっぱりこの子は外せない！
なんてったって俺がこの妄想を始めて一番最初に創ったキャラクターなんだから！
年齢は妄想を始めたばっかりの頃の当時の俺と同い年の６歳の女の子！
で、髪は太陽のようにキラキラと輝く金色で、長さは風でサラサラと揺れるくらいのストレートのロングヘア！
そして、肌は雪のように真っ白で、さわったらきっとモッチモチでスッベスベ！
んでもって目は、空のように透き通った、キレイな水色のパッチリとした大きなおめめ！
そんな完全無欠の美少女がアリスだ！
妄想を拗らせすぎた俺の初恋の女の子でもある！
そういやこの妄想を始めたばっかの子供の頃は、けっこう妄想と現実がごっちゃになっちゃってたりしたんだよなぁ。
そのせいでアリスが本当にこの世界に実在するんだと思い込んじゃって、その結果、アリスのことが本当に現実で見えちゃってた時期があったりしたっけ。
たしかこういうのってイマジナリー・フレンドって言うんだよな。
いつからだったか、大人になるにつれ自然と見えなくなっちゃったんだけどねぇ。
いやはや、懐かしい。
……あ、スマン！
感傷に浸ってる場合じゃなかったな！
さぁ、それじゃあ気を取り直して、続いて俺のお気に入りのキャラクターの二人目を紹介しよう！
その名はマリアさん！
年齢は２０歳！
俺がマリアさんを創ったのは俺が中学二年の１４歳の時だったから、そんなマリアさんは俺にとって永遠のお姉さんキャラだ。
今や俺の方が一回り以上も年上だが、そんな事はまったく関係が無い。
マリアさんはいつまで経っても俺の中ではマリアさんなのである。
で、ちなみにそのマリアさんなのだが、アリスの母親という設定だ。
なので外見的にはアリスと姉妹のようにそっくりだったりする。
もちろん、そのボンキュッボンとした曲線の麗しい体つきは除いてになるが。
と、ここで、やっぱり気になるのはマリアさんの旦那の存在だろう。
ハッキリと言おう！
マリアさんの旦那なんぞと言うものは存在しない！
今いないのではなく、元からいない！
処女受胎でアリスを産んだという設定なのだ！
ああ！ キモい設定だと思われても結構！
俺のツラかった中学時代をずっと優しく支え続けてくれたお姉さんなんだぞ！
マリアさんは俺だけのマリアさんじゃなくちゃイヤだ！
今までも！ これからもずっと！
……
…………ハァ。
こんな事ばっかり考えてっから俺はいつまで経っても彼女の一人もできねーんだろうなぁ……
でも、アリスやマリアさんほど俺のことを想ってくれる人なんてこの世にいるわけなんかないし……
あーあ……
もういっそのこと、俺も妄想の世界の住民になれねーかなぁ……
そしたらアリスとマリアさんに会えるのに……
あー……
二人に会いたいなー……
あー……
あれ……眠気が……ヤバ……
まだ……今日なんにも……創造して……無いのに……
あ……
