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第8話 これからのこと

 クロウはそう言って話を切り出した。ボク自身これからどうなるのかわからないので、きちんと話に参加しておきたい。


「でもその前にヴェリドとシグノアは挨拶して」

「ヴェリドです。よろしくおねがいします」


 ボクは自分の語る経歴なんてないので名前だけ答える。


「ご紹介に与りましたシグノアと申します。私の魔力は心覗です。心を読むことができる能力ですが悪用はしませんので悪しからず」

「えっ、魔力に名前なんて付いてるんですか? 魔力を言うのってマナーだったりします?」


 もしマナーだとしたらボクはどうしたら良いのだろう? 魔力なんて今日発現したばかりで名前なんてついてない。


「いえ、マナーではありませんよ。ただ私の能力が心を読むという能力なので、これから仲良くさせてもらう方にはお話させて頂いています」

「はい、挨拶が終わったからこれからの話をするよ」


 シグノアさんが優しい笑顔で教えてくれた。マナーではないということでボクはホッとため息をつく。

 そして再びクロウが話を仕切りだした。


「これからヴェリドには強くなってもらう。ただ一日中修行という訳にもいかないから、ガーリィの弟子として薬学を習ってほしい」

「あたしは薬学だけでいいのか?」

「ガーリィは瘴気の使い方と薬学を、シグノアは武術と色々な知識をヴェリドに教えてあげて」

「拒否権は?」

「ない」


 シグノアさんが質問をするがクロウにバッサリと切り捨てられる。この二人には何か因縁でもあるのか、少し空気が悪くなった。


「クロウはボクに何か教えたりしないんですか?」

「俺は忙しいからしないよ」

「クロウは私とあったときからこんなだ、気にしたら負けだ」


 静寂の間を埋めるためにボクから質問をしてみた。ガーリィさんは呆れたような顔をしていた。クロウの適当な雰囲気は昔からのことらしい。何が忙しいのかと聞いても教えてくれないだろうから追求するのはやめておく。


「そういうことでお話はおしまい! 明日から皆よろしく頼むよ。ヴェリドは俺についてきて。君の部屋に案内するよ」


 これからのことはクロウがほとんど一方的に話して終わってしまった。なんだか締まりが悪いが、これから竜を倒すための特訓が始まると考えて納得しておく。


 クロウにボクの部屋を案内され、ボクはベッドに倒れ込む。今日一日でいろんなことがあって疲れていたこともあり、眠りに落ちるまで大した時間はかからなかった。


※×※×※


 その部屋には眠らない二人の人影があった。


「なぜ彼をこちら側に引き込んだのですか? 彼はまだ人の道を歩めるはずです。答えてください、鴉」

「『俺たち』の目的のためだよ。彼は力を持っている。俺より深く見えてるんだろ? 何が見えているんだい、心覗くん?」


 シグノアはクロウのことを名前で呼ばずに、蔑みの意図を以って鴉と呼んだ。クロウの顔には仮面越しにわかるほどの暗い笑顔があった。


「貴方の言う『俺たち』に私たちは含まれていないでしょう。何をするつもりなのか知りませんが、貴方の理想のために彼を使わないでもらいたい。彼はまだ何も捨ててない」

「そんな言葉で止まる俺たちじゃないことは知っているだろ? お前が何を抱えているのか知らないけど、そんなに言うならお前がヴェリドが何も捨てないで済むように指導してあげてよ。都合よく教育係に任命されたんだから」

「そうさせてもらいます。貴方の手のひらで踊りますよ」


 彼らの思いが静かにぶつかり合う。ただでさえ張り詰めていた空気がより一層張り詰め、もし他の人がいたならば息をすることも苦しいだろう。


「くれぐれも俺に歯向かうとかはやめてくれよ。お前を殺すのは面倒だ」


 クロウは殺せないとは言わずに面倒だという言葉を使った。クロウの体から闇が溢れ出し部屋の暗闇と溶け合う。まるで今すぐに殺せると言わんばかりに闇が揺れる。


「貴方を殺せるというほど私は思い上がっておりません。それに彼と出会う機会をくれた貴方に感謝してているのです」


 シグノアは首を振りながら苦笑する。彼の綺麗な白髪が闇と共に揺れた。同じく白の視線が闇を切り裂きクロウを貫く。シグノアの目に映ったのはクロウの執念だろうか、それとも他の何かか。


「そうかい、良い夜過ごせよ」

「ええ、良い夜をお過ごしください」


 クロウは溢れる闇を止めること無くそのまま闇に溶けて消えいった。

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