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辺境伯令嬢フローラ 精霊に愛された女の子  作者: 加藤汐郎
第2部 ローレンの聖女
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第29話 (番外)主要登場人物のおさらいとおまけ

 ①フローラ・エリザベート・フォン・シュタインブルク。

 本作の主人公でローレン王国の次期女王、現時点で十四歳。ファーストネームのフローラは、花と春を司る豊穣の女神という意味。


 ローレン王国は異民族と国境を接する大国であり、帝国に加わった時点で皇帝より辺境伯爵の爵位を授けられた。もっとも貨幣の鋳造権を有し自主独立の国であるから、爵位なんかどうだって良いと本人は思っている。最悪は帝国からの離脱も視野に入れており、常に先を見ようとする。


 ただ辺境伯爵は次期皇帝を決める選帝侯フュルストの地位にあり、家臣たちからは女性形でフュルスティンと呼ばれることが多い。

 基本的に聖職者からは聖女と呼ばれ、敵対する者からは魔女と呼ばれる。まあ本人にとってはどうでもいいらしく、ミジンコほども気にしてないもよう。


 シュタインブルク家の女子は精霊の姿が見え、思念で意思の疎通をはかる能力を持つ。天界の神々より授けられた力で、精霊女王から神の巫女であると教えられた。

 現在は六属性の精霊さん達とお友達で、魔力を通す触媒となり使えるスペル(言霊)は幅広い。ただし大技を連発すれば睡魔に襲われる弱点を持ち、使いどころには細心の注意が必要となる。


 ひょんなことから霊鳥サームルクに寄生され、更に古代竜ミドガルズオルムの魂を宿すこととなった。彼女の使う魔法が今後どう変化するかは全くの未知数であり、精霊女王と精霊王が経過観察をしているところ。


 お稽古事の脱走常習犯ではあるが、ブラム城でメイド長アンナの監視下に置かれ、そういう訳にもいかなくなったっぽい。

 分家であるマンハイム家のグレイデルを信頼しており、彼女の恋路にはキリアと共謀し何かとお節介を焼く。シュタインブルク家の女子は長生きできず、命短し恋せよ乙女を地で行く恋愛観を持つ。


 法による秩序か、武力による秩序か、その天秤で彼女は揺れ動いている。どちらも人間を支配することに変わりはなく、新たな千年王国を築く上で何が正義なのか悩んでいる真っ最中。


 ②グレイデル・フォン・マンハイム。

 シュタインブルク家の分家である、マンハイム家の長女。公爵令嬢で二十四歳。


 フローラの教育係としてアウグスタ城に招かれたが、脱走した次期女王を捕まえるのが事実上の仕事になってたりして。ブラム城に滞在する限りはアンナの目が光っているから、教育係として本来の仕事が出来てるもよう。

 父の仇討ちをヴォルフと共に果たし、その過程で彼に恋心を抱く。伝道の書にタイムの葉を添えて贈ったのは、純粋な求愛であり嘘偽りは無い。弟のアーノルドⅡ世がいるから、嫁に行くのは全く問題なし。


 分家とは言ってもシュタインブルク家の血を引く女子、グレイデルも風属性のお友達を持っている。最近フローラから火と水と地の精霊を預けられ、四属性持ちとなった。使える魔法の幅は広がったが、睡魔に襲われる弱点は同じ。


 ③ヴォルフ・ミューラー。

 ミューラー家の長男で三十四歳、爵位は準伯爵。ローレン王国では伯爵の補佐という意味から、子爵を準伯爵としている。


 本来であれば騎士は、傭兵と同じく契約制の雇われ軍人だ。だが祖先が当時の女王に感銘を受け、契約ではなく叙爵を受けて譜代の家臣となった。騎馬隊の騎士たちも似たような経緯で、雇われではなく家臣となっている。

 ヴォルフはブラム城奪還に貢献し首級を挙げたことから、アルメン地方の領主となることがほぼ決まっていた。その場合は準伯爵から伯爵に昇格し、正式にブラム城の城主となるだろう。


 恋愛に疎いためこの年齢まで独身だったが、女性の扱いは紳士的なことから割りと人気があったりして。知らないのは本人だけで、弟のマルティンからは鈍感の極みと思われている。キリアがいなかったら、グレイデルを悲しませるところであった。


 ④キリア・グラーマン

 ローレン王国に支店をいくつも持つ、グラーマン商会の奥方。若い頃に商隊へ参加し、大陸各地を巡った経験を持つ。商人としての才覚で、物資の調達を得意とする。

 兵站部隊にいた事もあり、今回フローラ軍の兵站隊長に抜擢された。人材を育てることにも長け、厳しくも人情味のある良き先生だ。


 ⑤ゲルハルト・トゥ・リヒテンマイヤー。

 リヒテンマイヤー家の当主であり、爵位は侯爵。地方豪族の長で、治める領地規模は小国の王と変わらない。実際に小国だったのだが他国から攻められ、ローレンの聖女に救われたことがきっかけで家臣となった。古き良き騎士道精神を堅持しており、家臣団からの信頼も厚い。


 息子に家督を譲っているから隠居を考えてもいたが、グリジア王国の侵攻で騎馬隊長に指名された。フローラ軍の百人隊長たちも、似たようなものである。


 ⑥ファス・メイドの三人娘。

 ケイトは十四歳、ミューレとジュリアは十三歳。

 ミン王国出身で人さらいに遭い、奴隷商人へ売り飛ばされてしまった子たち。ただし庄屋の娘で、れっきとした地主貴族の出身。


 帝国には無い東方料理の造詣が深く、立ち居振る舞いも洗練されている。フローラの側近にすべく、アンナが目をかけている。


 ⑦アンナ・トゥ・アマニス。

 本人はメイドじゃないのだけれど、ローレン王国では一番偉いメイド長と言われる伯爵夫人。祖先が一般軍人から武勲を上げ、叙爵され貴族となった経緯がある。ゆえに貴族と平民の線引きを、殊更に嫌う一面を持つ。彼女自身、平民を領民と呼んでいるくらいだ。


 使用人を叱るときには、必ず理由を添えるのが彼女の良いところ。理解した者には見込みがあると判断するが、理解できない者はバッサリ切り捨てる鬼教官である。


 ⑧レディース・メイドのミリアとリシュル。

 ミリアの実家は仕立屋さんで、現在十八歳。

 リシュルの実家は船を使った水上運送業で、この子も現在十八歳。


 フローラが成人し女王となった時、側近として仕えるべくアンナのもとで修行中。主人から衣服を下げ渡されるため、メイド服ではなく貴族の衣装を身にまとう。

 アンナの指示を受けファス・メイドに、ウェイティング・メイドとなる教育を任されている。二人は三人娘を可愛がっており、自分たちの事をお姉さまと呼ばせていたりして。


 ◇  ◇  ◇


 ここはブラム城のスティルルーム。

 ファス・メイドの三人がミリアとリシュルの前に、小皿を並べていた。乗っているのは粉砂糖をかけた、豆らしき物体。


「これは何というお菓子なの? ケイト」

「甘納豆と言います、ミリア姉さま。貯蔵庫に豆類がいっぱいあるので、三人で作ってみました。白いのが白花豆、黒いのが黒豆、緑がえんどう豆です」


 摘まんでひょいっと頬張る、ミリアとリシュル。豆が本来持つ味と程よい甘さが心地よく、自然と二人の頬が緩んでいく。

 宮廷料理で提供されるデザートのお菓子は、甘すぎて喉がひりひりするような物が多い。砂糖は高価ゆえ王侯貴族が、自らの権勢を示すためにそうなったのだろう。


「保存期間はどのくらいかしら、ミューレ」

「冬ならひと月は持ちますよ、リシュル姉さま」


 贈答用にしたら喜ばれるかもと、ミリアとリシュルは頷き合う。そこへジュリアがこれもどうぞと、蒸し器を持ってきましたよっと。中からあちちと取り出したのは、甘納豆を混ぜ込んだ蒸しパン。


「これはこれで、ねえミリア」

「美味しいわねリシュル、お茶会に良いかも」


 この三人娘がアウグスタ城へ行ったら、最初の配属先はきっとスティルルームだろう。直属の上司となるハウスキーパーは、準伯爵夫人のクララ・アルトマンになる。根っからのお菓子好きだから、きっと気に入られるだろうと二人は微笑む。


 そこへ休憩に入った兵站糧食チームと、キャッスル・メイドがやってきた。それは何ですかとテーブルを囲み、みんなしてわいきゃい。今日のスティルルームも、お茶とお菓子で賑やかだった。

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