1/39
プロローグ 『終わり始まり』
「……!……ド!!」
外から、声が聞こえる。
誰かの叫ぶ声。
叫んでいるのはわかるがやけに音が小さく、よく聞こえない。
「エド! エドッ!!」
エド?
あぁ、俺の名前か。
「エド! しっかりして! エド!!」
うっすらと目を開くと、目の前で若い女性が叫んでいた。
「死んだらダメ! このバカ!!」
そういや俺、何してたんだっけ……。
敵国と戦争してたよな。
今日はそいつらが攻め込んでくるって聞いてるのに、俺とこいつは何してんだ。
「もうちょっとだから! もうちょっとで何とかなるから!!」
もう耳鳴りでほとんど聞こえない。
全身が燃えるように熱く、身体も石のように動かない。
息をしようにも肺が膨らまないし、話そうにも口が開かない。
呼吸ができず、段々と意識が遠ざかっていく。
「……ド! ……!」
瞼を閉じれば、何も見えず、何も聞こえず、何も感じない世界が出来上がる。
俺はそのままゆっくりと最期の一息を終えた。