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因果

『―見てごらん!鳥だ!』

『オシリス兄様、セト兄様待って…!』

『ネフティスはトロいなぁ…俺の手に掴まれよ!』

『うん!イシス姉様も早く!』

『ごめんなさい、…オシリス兄様、鳥さんは?』

『いるよ、あ、セト、だめだよ触っちゃあ。』

『何でだよ兄上?俺鳥触りたい!』

『眠いところに邪魔をされたらセトは嫌だろう?だからそっとしておかなきゃ』

『ネフティスも見たい!』

『よし!俺と交換しよう!』

『イシスも見る?僕と場所を変えよう。』

『いいわ、一度ちらりと見れただけでも私は満足だから。』

『姉上は欲がねぇなぁ…』



―あはは…くすくす…







 

どうして時はあのまま止まってくれなかったの



どうして貴方は狂ってしまったの



どうしてこんな事になったのだろう







 

どうして兄上ばかり…いつも…いつも兄上ばかりそうだ…










 

『 殺 し て や る 

  オ シ リ ス ! 』

ヌトとゲブが空と大地となって幾星霜、世は神と人間が混沌とする世になった。

流れ流れた砂時計の時。砂時計を何度回転させただろう。5日間を与えられて生まれた5人の兄弟はもはや大人になっていた。


ハロエリスはラーと融合、悪く言えば【贄】にされて共に育つ事は出来なかったが、後の4柱はそれぞれ神としての役割を与えられた。


長男オシリスには【豊穣】を

長女イシスには【誕生】を

三男セトには【嵐と暴風】を

末ネフティスには【城の守護】を


与えられた役割を4人は文句一つ無しに果たして行った。

全てが自ら満足できる役割だったからだ。

性格の違う兄弟ではあったが4人共とても仲良く付き合っていた。



そして4人は兄弟同士で夫婦となった。

オシリスはイシスと、

セトはネフティスと、

双方仲睦まじい夫婦となった。

…はずであった。




 

それは、ラーによる【人類抹殺の刑】の神話の後の話。

この事によりラーは【神の王座】を手放す事となった。

その事は全てね神に伝わって言った。

そして、我こそはと名乗る神、いや彼こそがと推奨する神が現れた。


その推奨のうちには、【オシリス】と【セト】の名が上がっていた。

オシリスが心配そうにイシスに見送られると、再び片付けに取り掛かった。しかしこの様子だと当分終わりそうではなかった。


―まぁ、あんなに酔ってらっしゃってるし、すぐに寝てしまうわね…




幾度と食べた。幾度と飲んだ。しかし満たされない。何かがつっかえている…セトにはそれが何か分かってはいた。


【オシリス】と【自分】


どうあがいてもこれは変わる事は無い。同一になるのは不可能だ。墜ちるのは容易い事、しかし昇るのは苦難の技。

さしずめ己は堕落者なのだろう。劣等感が止む事は無い。むしろ茫漠と広がるのみだ。


―どうして兄上ばかり…


頭の中はそればかり。これは醜い感情だ。消さなければならない。この感情はあってはならない。そう思えば思うほど自分の醜さに押し潰されそうになる。


「俺に唯一与えられたのは力と【(ネフティス)】だけ、か……」

口に出したのがよくなかったのだろうか。無性に腹が立ってしまったセトは、ネフティスのいる部屋へと戻る事にした。



その頃オシリスは、月に照らされた石廊下をおぼつかない足取りで歩いて部屋へ向かっていた。

酔いが逆に回ってしまったようだ。しかしなんとか部屋に辿りつくと、そこには先程まで片付けをしていた自分の最愛の妻が寝床に腰を下ろしていた。


「戻っていたのか…イシス…」


しかしイシスは返事をしない。酔いで視界が揺れるオシリスは近付いてみることにした。


「…!なんという姿でいるのかイシス…!」


そのイシスの姿は、一糸纏わぬ裸体だった。

すると、オシリスに向かい歩んで来るとオシリスの胸元に顔を埋めた。胸元が濡れるのを感じ、初めてイシスが泣いているのを知った。


「お兄様…私は…貴方と契りたい…一度でいい…私と…お願い…お願い…!私は…オシリス兄様が一番好きなのに…!!」


「…イシス…?」

オシリスは最初は戸惑ったが、次第にイシスが可愛く思え、優しく頭を撫でた。


「…私達は夫婦ではないか。」


その口調はとても優しかった。

そして、イシスの顔を優しく持ち上げるとゆっくりと口付けを落とし、営みを始めた。




「………兄…上…?」


その様子をセトが部屋の外から信じられないとでも言うような形相で見ていた。


「何で…」


それもその筈だ


「どうして…」

オシリスが抱いているのは




「…【ネフティス】までもアンタは俺から奪うつもりか…!?」




【自分の最愛の妻】なのだ


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