おいのりさん
誰もいない帰り道。
明かりの少ない狭い道。
そこにはいつも、不気味なお姉さんが現れる。
ごく普通の服装に、ごく普通の歩き方。
ごく普通のスピードで、ごく普通の顔をして通過する。
ただし、ひとつだけ普通ではない点がある。
それは、ずっと手が祈りの形をしていること。
ものすごい、何かを祈っていること。
あれだけ祈られたら、この道のことなど、色々と疑ってしまう。
今日も、あのお姉さんは現れた。
だが、いつもと少し様子が違う。
今日は、前で手を合わせていない。
腰の後ろで、しっかりと合わせている。
少し疑問に思ったが、特に気にせずアパートの部屋に戻った。
すると、部屋は荒らされており、お札が数枚なくなっていた。
そしてすぐ、頭の中にひとつの考えが浮かんだ。
あのお姉さんの、手のなかに?