村の拡大
少し早めに身支度をした3人は開店前のブラウン服店に来ていた。
「おはようございます変態領主様」
「うん、否定はできないけど朝っぱらから変態はないよね」
「でも変態ですよね、いきなり領主になってさらに侯爵様になるとか。
そんな魔族聞いたことないですよ。
も、もしかして王妃様にパンツとブラを献上したんですか!
爵位がもらえるなんて、そうとしか考えられないですよ。
で、王妃様のブラのサイズはいくつだったんですか!
参考までに教えてください!
もしかして、公女殿下のサイズも把握済みとかですか!
それはさすがに鬼畜ですよ! 公女様はまだ12歳なのに!」
「え、ブルーレットそれマジなの?」
「採寸なんかしてねーよ、お前ら俺を一体なんだと思ってるんだ」
「文字通りパンツと共に羽ばたく変態」
「ちゃんと功績を讃えられて侯爵になったんだよ!
いや、確かに王宮で大量のパンツ飛ばしたけどさ」
「マジですか」
「ガチのマジです」
「ブルーレットさん、パナイっすね、マジ尊敬するっす!」
「国王の奥さんと子供が『破廉恥ですわ!』って言ってたきがする。
そうか、あの子は12歳だったのか」
「うわー、王妃に破廉恥って言わせたとか、それ極刑案件だよブルーレット」
「さすがはパンツ伝道師、そこにしびれる憧れる!」
「ちょっとまて、メリッサさんはアノ漫画知らないよね?」
「アノマンガ? なんですかそれは」
「いや、知らないなら知らないでいいんだけど……」
「そうだ、ブルーレットがね、新しいパンツ作れるようになったんだよ!」
「!!」
メリッサがものすごい勢いで圭に抱き付いた。
「好き」
「おい、お前が好きなのはパンツだろ」
「私の体、好きにしていいから、めちゃくちゃにしていいから、パンツください」
「そういうのはリーゼで間に合ってるから」
「おや、お二人はもうすでにそんな関係ですか」
「昨日、ブルーレットにパンツまさぐられた、パンツ濡れた」
「ミミルもおまたがサワサワされて濡れたですにゃ!」
「ほほう、それは興味深い報告ですね、お姉さんちょっと興奮してきましたよ」
「お前ら3人とも頭おかしいだろ、濡れたとかそういうこと言うなよ。
あれは村のためで故意にやったわけじゃないんだからな!」
「で、濡れた惚れたは別にして、パンツ。
パンツはまだか! 早く出せこの変態魔族!
お姉さん我慢の限界だ!
ほら、早く出しちゃえよ、ポロンって出しちゃえよ。
触らせろよ、テイスティングさせろよ」
「パンツは口に入れるものじゃないからね、メリッサさん興奮しすぎ」
パンツのためならキャラ崩壊だっていとわない、それがパンツ伝道師の精神だ。
そしてカウンターの上に出されたのは、色とりどりのデザインパンツ。
水玉、縞柄、花柄、そのた諸々。
「こんな感じでデザインの制限がなくなったんだ。
こんなデザインがいいとかあったらその通りに出せるけど」
「おお、神よ! この世界はなんと美しいのだ!」
「ねえ、それ、パンツに頬ずりしなが言うセリフじゃないよね。
あとは遊び心でこんなのもあるけど」
圭が追加で出したのはキャラ物のバックプリントパンツだった。
ネコ、イヌ、クマ、ウサギ、ハムスター。
それに反応したのはミミルだった。
「うにゃにゃにゃ! 可愛いですにゃ!」
キラキラした目でネコパンツを広げて凝視するミミル。
そして、メリッサも同じ反応をした。
「もうだめ、私、死んじゃうかも」
震える手でバックプリントパンツを天にかかげるメリッサ。
両目からは涙が流れていた。
「ねえメリッサさん、パンツは御神体じゃないからね、崇めたりしないでよ」
メリッサが正気を取り戻すまでにそこから10分ほど時間を要した。
その日の納品オーダーはバックプリントパンツ600枚だった。
日本だったら子供用として使われるデザインだけど。
そんな固定概念が無いこの世界では、初めて見るカワイイものに年齢など関係なかった。
さらに紙が普及していないこの世界では、絵というもの自体が希少とも言える。
それがパンツにコミカルに描かれているのであれば、見えないオシャレとして欲しいと思うのは、無理からぬことだった。
いつものように露店で朝食を取り、ついでに昼食も買い込む。
昼食は村で食べる用だ。
昨日と同じパンツ鳥で飛んだ3人はエッサシ村へと降り立った。
井戸の広場にはすでにサトウとササキ、そしてヨシダの3人組がいた。
ほかにもチラホラと村民数人が井戸の周りで活動していた。
「おおブルーレット、相変わらず変態すぎる登場だな。
下着を乗り物にするとか人類じゃ考えられないぞ、さすが魔族と言うべきか」
そう言ったサトウの手には昨日作ったレンガが握られていた。
「今朝見つけたけど、どうやってこれを半日で作ったんだ?
あと丸太も見たけど、あれは本当にリーゼがやったのか?」
「それも含めて今から説明するよ。
もうね、俺も吹っ切れたよ、今日はこの村を変態に染め上げてやる!
全員ここに集めてくれ」
「おう、わかった」
言うや否や全員に召集をかけるサトウ。
「ねえブルーレット、もしかして全員に魔法使うの?」
「希望者がいればね、とにかく今日一日で片を付けるぞ。
人海戦術でやれば今日だけでこの村を何倍にもできる家の資材が揃うはずだ」
「にゃ~、みんなのパンツ濡れまくりですにゃ~」
「コラコラ、そういう表現はダメだからね」
ほどなくして、村民全員が集まった。
「えーと、今日はみんなにやってもらいたいことがある。
この村を発展させるために家を沢山建てる」
要点をまとめて圭が説明していく。
魔力が得られたら木を伐ったり加工したりできること。
土からレンガや石材を作れること。
力を付与されたらそれらの資材を簡単に運べること。
さらに地面に柱を刺したり、重たい丸太を組み上げたりなど、家を作る段取りが出来ること。
圭の希望は今日一日で資材の全確保、さらにモデルハウスの完成までこぎつける。
そこまでの話を聞いた全員が驚きの声を上げるが。
「まあ、ブルーレットさんだから、できるでしょ」
との村長の一声でみんななぜか納得した。
全ては変態魔族の一言で片付けられてしまうこの悲しさ。
「そして俺が力や魔力を与える方法なんだけど、パンツのココを履いた状態で1分俺が触ります」
昨日リーゼとミミルに説明した内容そのまんまで伝える。
「はっきり言おう、こんなに変態じみたスキルがあってたまるか! って俺も思うんだけどさ。
仕方ない、これしか方法がないんだ。
小さい子供にはしません、てゆーか俺が無理だから。
さらに旦那さんがいる人は遠慮したい、さすがに旦那さんに申し訳ないからね。
以上のことを踏まえて、村のために力が欲しいって人はここに残ってくれ。
それ以外の人は森で薪になる枝を運んだり、出来たレンガを運んだりしてほしい。
特に簡単な力仕事は男に人にやってもらいたい。
一応、どんな感じか実演してみせる。
リーゼ、パンツ触るよ」
「うん、今日もお願いねブルーレット」
パンツを頭に被り人間に変身した圭は、リーゼのパンツをまさぐる。
悶える艶めかしい声を出すリーゼが、1分後には魔力満タン状態になっていた。
圭が木の棒を放り投げると、リーゼがかまいたちでそれを真っ二つにする。
「こんな感じだ」
「なんと! これは凄いですな」
村長をはじめとした面々が驚きの声を上げる。
圭の説明がヨタ話ではなく、本当なのだと皆が理解する。
そして一歩前に出た女性、震える手で杖を突く、曲がった腰の老婆。
この村最年長のヘンリーお婆ちゃん、94歳、その人である。
「こんな老いぼれでも、力が貰えるのかのう、私も力が欲しいですじゃ」
本編初登場、リーゼが度々脅しに使っていたヘンリーお婆ちゃん。
頬は赤く染まり、期待に満ちた眼差しで圭を見る。
すがる思いでリーゼを見たら、グッスマイルで親指を立てていた。
チクショウ、やれと言うのか、四面楚歌、味方は無し。
確かに変態の限りを尽くすと言ったが、これはレベルが高すぎませんか?
いきなり心が折れそうですよ、シエル以外に心を折られるとかマジで不本意。
「わかりました、村のためです」
血涙を流した圭が、ヘンリーのもんぺズボンに手を差し込む。
やさしく、いたわるように、股間を撫でる。
「ふおおおお、この感じ、50年ぶりくらいですじゃ!」
頬がさらに赤く上気するヘンリー。
「しかもこんな若い男に、ありがたや、ありがたや、生きててよかったですじゃ」
口から魂が抜けかけた圭はその1分を耐え抜いた。
ズボンから手を抜くと同時にヘンリーお婆ちゃんの目が光る!
「のおおおお! 力が、力がみなぎってくる!」
曲がっていた背中は真っ直ぐに伸び、杖を放り投げた手は握りこぶしを作り、両腕が上にかかげられる。
それは最強の二字を背負った老婆だった。
人類最強の力を手にした老婆の誕生。
「なんか俺、とんでもない生物を生み出したのだろうか」
「ヘンリーお婆ちゃん、元気になってよかったね」
「ありがとうございますブルーレットさん、10代に若返った気分ですじゃ」
「いえいえ、どういたしまして。
あ、そうだ、みんなに言っておくルールがあった。
撫でたパンツは脱いでしまうと効果がなくなるからね。
足首まで下すだけなら大丈夫らしい、つまりは厠に行くだけなら脱いだことにはならない。
でも力を失うのがもったいないって、何日も履いたままは、そのね、やめてね。
ブルーレットお兄ちゃんとの約束だよ」
圭も圭でおかしなテンションになっていた。
童貞なのに90代のパンツをまさぐるという偉業をこなしたのだ。
もはや怖いものなど何もない。
パンプアップした超お婆ちゃんを見た女性陣が、我先にと名乗りを上げた。
その数約30人、村民の3分の1である。
その中には既婚者も含まれていたが、夫が「村のためにやってくれ」と後押しした。
それを聞いた男衆が同じように「俺の嫁も」と男の器の大きさを競うように嫁の背中を押す。
この程度のことで浮気だとか騒ぐような、器の小さい男に思われたくなかったのだろう。
ましてや村を救ったブルーレットとの共同作業。
それは村を上げての一大イベントである。
尻込みする理由など微塵もなかった。
本人の希望を聞き、風、土、力の3グループに分けてパンツを触っていく。
圭の変身が解ける頃には30名強の、特殊能力精鋭部隊が誕生した。
おそらくこの全員の力があれば、この世界を制圧できるのではないかと、圭は思ったりした。
風の指導はリーゼが担当。
土の指導はミミルが担当。
力の指示は圭が行い、それぞれ作業にかかる。
能力の付与を希望しなかった者と男性陣は、それぞれで出来る手伝いをする。
総合的な指揮は圭が取った。
そして、時間は流れ、夕方前。
街道沿いの村に隣接する草原エリアには、道の片側に住宅街が出来上がっていた。
井戸が1つ、これは土魔法で簡単に掘られた。
そしてログハウスが井戸1つに対して10棟の配置。
今日は井戸1つとログハウスのモデルが1棟出来ればいいかなと思っていたのだが。
意外とみんな頑張ってくれて10棟も出来てまった。
釘などの資材を使わずに風魔法で臍を切り、組み合わせる方式を選んだ。
さらに圭の希望で丸太を板に割き、床材として採用、靴を脱ぐ土禁の家にしてみた。
レンガは暖炉に使われ、石材も生成し玄関など家の各所に使われた。
若干の試行錯誤はあったものの、圭の思い描いた通りの家が出来上がった。
明日は同じエリアに井戸1つと家10棟。
さらに道を挟んだ反対側に井戸2つと家20棟。
流れ作業で作る予定だ。
ただ、ドアの蝶番などの金物は作れないので圭が街で買い付けることになった。
今はまだ窓やドアのない家状態だ。
細かい大工仕事は、専門の大工を雇って家を仕上げる、という話でまとまった。
「魔力が切れた人は、一晩寝れば回復するはずだから。
明日もみんなお願いね」
村人にお礼を言われながら3人はパンツ鳥で街へと帰る。
「なあ、村長さん」
「どうしたのですかサトウさん」
「あんたこの世界で一番幸せな村長だと思うぞ」
「奇遇ですね、私もそう思います。
ブルーレットさんには足を向けて寝れませんね」
「ああ、もうほんとに変態すぎるよ、一日で村総動員させて、家を10棟も建てるとか。
いまだに信じられない。
俺は木材の仕入れが難しいって相談しただけなのにさ。
普通ここまでするか?
なんなんだあの変態魔族は。
今本気で思うのは、ブルーレットに捕まった時に、命乞いをしなくて良かったって、心の底からそう思うよ」
「多分そうでなくても、ブルーレットさんなら違う形で助けたと思いますよ。
あの人は私にとって最高の友人です」
「変態だけどな」
「ですね」
こうして建材調達転じて村拡大工事の1日が終わった。
頬染めし
老婆の股を
まさぐれば
魂抜けしは
秋の童貞
なんかね、ヘンリーお婆ちゃんを出したかったんだよ。
パンプアップしちゃったけど。
俺も若返りたいなぁ。




