表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星空の小夜曲~恋と未来と、少女の決意~  作者: 由希
第2章 中央大陸編
81/188

第65話 誰よりも特別なあなた

 サークと初めて出会ったのは、私が五歳の時だった。



 あの日の事は、今でも鮮明に思い出せる。私はひいおばあちゃまに手を引かれ、ひいおばあちゃまのお客様に一緒に会いに行った。

 お客様がどんな人なのか、何故かひいおばあちゃまは何も教えてくれなくて。不思議だったけど、ちょっぴりワクワクしたのを覚えている。

 ひいおばあちゃまに連れられた先には、一人の人がいた。耳が長くて、背の高い男の人。お母様と話をしていたその人は、私達に気付くとこっちを振り返った。


 その瞬間、私の世界には――私とその人しか、いなくなった。


 綺麗な人だった。サラサラの砂色の髪に、宝石みたいに輝く紫の瞳。肌も白くて、まるで物語に出てくる妖精みたいだった。


『……あなた、だぁれ?』


 頭で考えるよりも早く、私はそう口にしていた。その人は暫くキョトンと私を見ていたけど、やがて不思議そうに聞き返してきた。


『君は?』

『わたし、クーナよ。……あっ』


 それに答えた瞬間に思い出した。ひいおばあちゃまが言っていた、私が生まれる前に亡くなったひいおじいちゃまと一番仲が良かったエルフの話。

 同時に、理解した。この人が――ずっとずっと会いたいって思ってた、「サークおじさま」なんだって事を。


『わかった! おみみがながいから、あなたがひいおじいちゃまといちばんのなかよしのサークおじさまね! わたし、ずっとおあいしたかったの!』


 そう言った時のその人の顔は、今でも忘れない。眩しそうな、懐かしそうな、泣きそうな……色んな感情が、ごちゃ混ぜになったような顔。

 一瞬にも、永遠にも思えた時間。やがてその人は、くしゃりと顔を歪ませて。


『……ああ、そうだ。はじめまして、クーナ』


 そう言って、嬉しそうに、笑った。



 あの頃の私は、まだ子供すぎて。「好き」に種類があるって事も、ちっとも解ってなかった。

 でも。でも、きっと。


 あの日から、その人は――サークは、私の「特別」になったの。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ