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幕間 その2

「『神の器(クリスタ)』が見つかったというのは本当か?」


 等間隔の松明に照らされた、薄暗い古城の中。漆黒の甲冑に身を固めた人物が、玉座に座るノアに言った。

 声からすると、壮年の男性であるらしい。ノアは優雅に笑うと、甲冑の男に頷き返した。


「ああ。自らの血を飲ませてヴァレンティヌス様の支配を解き、更に支配に抵抗する力まで与えた。間違いない」

「これで私達の悲願に、一歩近付いたという訳ね」


 その言葉を受けたのは、胸の開いた真紅のドレスを身に纏った妖艶な美女だ。ウェーブがかかった深緑色の長い髪は、まるで蛇が体に絡み付いているような印象を見る者に与える。


「でもよォ、なら何ですぐに連れて来なかったんだよ? さっさとカッ拐っちまえば良かっただろうが」


 不満げに舌打ちをしたのは、青い髪を逆立てた青年。何も身に付けていない引き締まった上半身はやはり青の刺青で覆われ、まるで全身で周囲を威圧しているかのようだ。


「……あの娘はまだまだ強くなる。強くあればあるほど、より『神の器(クリスタ)』として相応しくなるだろう?」

「なら、私達のやる事は……」

「そうだ。『神の器(クリスタ)』に試練を与え、より完全なものとする」


 ノアと美女が、互いに深い笑みを浮かべる。そんな二人に、ノアの傍らにいたビビアンが不満げに言った。


「……ビビアンは認めてナイから。あんなオンナが『神の器(クリスタ)』なんて」

「ギャハハッ、お姫サマは王子サマを盗られてご機嫌ナナメ、ってかァ?」

「うるさい、バルザックの癖にビビアンに意見しないで」

「あァん? 『四皇しこう』でなくなったテメェが、何オレ様に舐めた口聴いてんだァ?」


 それを揶揄した青年とビビアンとの間に、剣呑な空気が走る。だがそこに、甲冑の男が割って入った。


「止めぬか、ビビアン、バルザック。今は味方同士で争っている場合ではないだろう」

「……チッ!」

「……フン」


 甲冑の男の制止で二人が沈静化したのを確認すると、ノアは大仰に両手を広げてみせた。そして、高らかに宣言する。


「さぁ、存分に踊ろうじゃないか。ヴァレンティヌス様の加護の元、この地を僕らの新たな故郷とする為に」


 その言葉と共に、玉座の後ろの闇が大きなうねり、辺り一面に広がっていった。






【第1章 西大陸編 fin】

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