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第58話 忍び寄る闇

 イドの大通りを、サークと並んで歩く。お祭りが近いからか、初めて訪れた日よりも街は賑わいを見せていた。


「変わった飾り物が吊るしてあるね、あれは何?」

「あれは提灯。カンテラみたいなもんだな。宿の行灯みたいに、夜はあの中に蝋燭を入れて灯りにするんだ」

「へぇー!」


 サイキョウは何度も行ったというサークに解説して貰いながら眺める街並みは、何もかもが目新しくて。沈んでいた心が、ウキウキと浮かび上がるのが解った。


「ねぇねぇ、折角サイキョウまで来たんだから、何か名物が食べたい!」

「名物なぁ……歩きながら食えるって言うと……やっぱり団子か」

「ダンゴ? じゃあそれにしよ!」

「へいへい。現金なお嬢様だ事」


 口では呆れたように言いながらも、サークの顔は笑っている。私が本当に楽しんでいるのが、伝わってるみたいだ。

 お祭りまでは、急な出費を取り戻すのも兼ねてサイキョウに留まるって二人で決めたし。サイキョウを出れば、きっとまた厳しい日々が始まるけど……。


「ねぇ、サーク」


 少しだけ前に出て、それから振り返る。顔は自然と、笑顔を作っていた。


「ん?」

「デート、誘ってくれてありがと!」

「デートっておま……ま、いいか。礼を言うにゃまだ早えよ、バーカ」


 せめて今日は、素敵な一日になりますように!



 お菓子やさんで買ったみたらし団子という美味しいお菓子を食べながら歩いていると、やがて大きな広場に出た。辺りには無数の提灯が飾られ、その中央には木で出来た見張り台のようなものが建っている。


「あれ何?」

「あれは物見やぐら。サイキョウの祭りじゃあれを中心に輪になって、皆で踊るんだ」

「それ、すっごく楽しそう!」

「お前達、こんな所で何をしている?」


 サークの説明を聞きながら未知のお祭りに夢を膨らませていると、後ろから声をかけられた。振り返ると、そこにはベルが立っていた。


「あっ、ベル」

「ゲッ……テメェこそ、こんなとこで一人で何してんだよ」

「国からの依頼でな。祭りが無事開催されるよう、警備の任に就いている。本来は衛兵の仕事なのだが、このところ小さな事件が多くて手が足りないらしい」

「そうなんだ……」


 そういえば、前にギルドに行った時はすぐにショウヘイさんと話をしたから、依頼の掲示板はちゃんと見ていなかったのを思い出す。小さな事件……もしかしてまたフレデリカみたいに、異神の手先が悪さをしてるのかな?


「で、お前達はここに何をしに来たのだ?」

「見りゃ解んだろ。デートだデート」

「サ、サーク!?」


 ところがベルへのサークの返答に、一気に顔の熱が急上昇する。い、いつものサークだったらこんな事言わないよね!?

 私達を見る、ベルの眉が片方ピクリと上がる。そしてあからさまに機嫌の悪そうなひきつった笑みで、サークに言い返す。


「……ほう? 女一人まともにデートにも誘えん、腰抜けエルフだと思っていたが」

「そういう訳で部外者はお呼びじゃねえんだよ。オラとっとと仕事戻れ」

「生憎、可憐な少女に不埒な輩が悪さをしないか見張るのも私の仕事でな」

「ち、ちょっと……」


 何故かいつも以上に険悪な雰囲気の二人に、どうしていいか解らなくなる。な、何でこんな事になってるのー!?

 私が二人をどう止めるべきか悩み始めた、その時。


 ――ゴゥンッ!


 そんな大きな音と共に、地面から無数の紫の太い蔓が突き出て、広場を覆った。

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