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第49話 不幸を視る占い師

「……頭イテェ……」


 こめかみの辺りを軽く押さえながら、サークが呻く。どうやらゆうべは、大分飲み過ぎたらしい。


「もう、人にはいつも体調管理はちゃんとしろって言ってる癖に」

「……今回ばっかは返す言葉がねえわ……」


 私の文句にも、サークは反論せず項垂れるばかり。どうやら仕事の前に飲み過ぎてしまった事を、相当悔やんでるみたい。確かにプロ意識が高いサークには珍しい事かも。


「あの、それじゃ村に出発しますが……本当に大丈夫ですか?」


 そんな私達にどこか不安げに声をかけるのは、昨日ギルドで出会った今回の依頼人、ショウヘイさん。ショウヘイさんの村までは、彼の乗ってきた荷馬車に乗っての旅になる。


「大丈夫です! サークはどんな時でも、仕事には手を抜きませんから!」

「それならいいんですが……では、荷台に乗って下さい。不便をおかけしますがすみません」

「いいんですよ! それに私、荷台に乗るの結構好きですから!」


 サークの代わりにそう受け答えして、私はサークと一緒に荷台に乗る。私達が乗ったのを確認すると、ショウヘイさんは御者台に乗り込み馬を走らせ始めた。



 ギルドで聞いたショウヘイさんの話は、以下の通りだ。


 最近村に、旅の女占い師が住み着いた。占い師の占いはとても良く当たるが、それは悪い事ばかりだった。

 もしかして占い師はわざと悪い事を起こして、占いの結果と偽っているのではないか。そう考え始めた村の人達はショウヘイさんを使者に立て、町の衛兵に掛け合う事にした。

 けど衛兵は、大した被害もないのに騒ぎすぎだと一蹴。占い師は自分の占いにそれほど高いお金は取らなかったから、詐欺とするには被害が少なすぎると思われたらしい。

 そこで今度は冒険者ギルドに掛け合うものの、こちらも人間の起こす犯罪は衛兵の管轄だと取り合わず。すっかり困ってしまったショウヘイさんは、手ぶらでは帰れないとそのまま冒険者ギルドで個人的に冒険者を探す事にした、というのが事のあらましのようだ。


 正直、私も、それほどこの件に事件性があるとは思えない。聞いた占い料は寧ろ相場よりも安いくらいだったし、その為にわざわざ悪い事を起こすなんて割に合わない。

 それでもショウヘイさんの村に私達が向かう事にしたのは、占い師の方に興味が沸いたからだ。不幸を予言する占い師。もしその力が本物なら、もしかしたらこの世界の人じゃないかもしれない。

 この世界のものじゃない力には、この世界のものじゃない知識を。今は対抗手段になりそうな情報は、どんどん取り入れていかなくちゃ!

 あ、ちなみに、昨日テオドラ達から貰った腕輪は、腕にはひいおじいちゃまの小手があるのと腕輪の伸縮性が物凄かったので腕じゃなく太ももに装着してある。ついでにインナーもズボンから前に旅先で買ったショートパンツに変えたんだけど、サークはまだ気付いてないみたい。


「うあー……今この揺れはヤベェわ……脳にクる……」

「サーク、大丈夫? はい、お水」

「サンキュ……そのうち二日酔いに効く薬とかも開発されねえかな……この百年でこんだけ文明発達してんだからイケんだろ……」

「はいはい。とりあえず今日は我が身を反省してね」


 ……不安も期待も一杯あるけど、とりあえず今は、隣でダウンしてるサークとのこんな些細なやり取りを楽しむとしよう。

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