第42話 倒木を辿って
木の倒れている方向から木々を薙ぎ倒した何かの進路を予測し、そっちに向かって歩を進める。サークの体調やリーチの問題などから、先頭はテオドラが務める事になった。
「一体どこまで続いてるんだろ、これ……」
倒れた木を避けて歩きながら、テオドラが不安げに呟く。林はかなり広かったけど、破壊の痕は見える範囲の限界まで続いていた。
「もしとっくに林を出ているとしたら、不味いな。足取りが追えなくなる」
「せめてこの倒れてる木さえなければ、もっと早く移動出来るのになぁ……」
どこまでも続く倒木の群れを、つい恨めしげにみてしまう。木の大半は外側へと倒れてるんだけど、進行方向を塞ぐように倒れてる木も決して少なくはなかった。
「そうや~、テオ。テオの力でこの木、皆どけたらどない~?」
「え?」
そこに軽い感じで告げられたプリシラの提案に、私は思わず耳を疑う。ば、場を和ませる為に言ってるのかな……?
ところが、テオドラは。
「そうだね。急がないと完全に見失っちゃうもんね!」
そう言って頷くと、近くの倒木の前にしゃがみ込んで手を幹にかけた。い、幾ら何でも無茶だよぉ!?
「『封印解除』」
止めようとした私の目の前で、テオドラが謎の言葉を唱える。そして次の瞬間には――大きな倒木を、まるで小枝でも持つみたいに一気に持ち上げてしまった。
「ええ!?」
「よっ、と!」
そして持ち上げた倒木を、道の端へと放り投げる。その倒木が軽くなんてない証拠に、地面にぶつかった瞬間軽い地響きがした。
「よーっし、この調子でどんどんどけてくから皆、ついてきてね!」
プリシラ以外呆気に取られる私達を尻目に、テオドラはどんどん先へと進み次々と倒木を排除していく。するとプリシラが、私に近付きコッソリと囁いた。
「……テオは魔力が殆どない代わりに、物凄い怪力なんよ~。そのままじゃマトモに生活出来へんから、普段は魔道具で封印してるん~。あの右手の腕輪がそうやで~」
言われてテオドラの右手をよく見ると、青い宝石の付いた細い螺旋状の金色の腕輪を身に付けていた。異世界には、色んな道具があるんだなぁ……。
「……まぁ、先に進みやすくなるなら好都合だ。皆、テオドラに続くぞ」
「うぅ……ルミナエス様、せめてワタシだけでもお守り下さいデス……」
祈るようなレミの呟きを耳に聞きながら、私達はどんどん障害物を取り除いていくテオドラの後を追った。