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第41話 林の破壊者

「……クソ、頭がふらつく……」

「サーク、大丈夫?」


 いつもとは逆に、私の半歩後ろを歩くサークを心配して振り返る。目の下には軽いクマが出来ていて、見るからに万全とは程遠い体調なのが解る。

 何でもゆうべは、殆ど寝ていないのだという。サークからしてみれば私達全員半人前だろうし、保護者として気を張らせちゃったのかも。


「サークさん、やっぱり少し休んでいこうよ。またゆうべみたいに皆で一緒に……」

「いい! とにかくさっさとガンツとかいうのを探してサイキョウに行く!」


 そんな事を考えてると、心配そうなテオドラの言葉を遮ってサークが声を荒げる。ゆうべ……うん、ゆうべのアレ(・・)は、今思い返すと私も恥ずかしいかな……。

 ……もしかしてサークが寝られなかったの、アレ(・・)で誰かを意識しちゃったせい? うぅ、私ぐらいの歳の子はサークは興味ないと思ってたから安心してたのに……。


「んん~? あれ何やろ~」


 不思議そうなプリシラの声に、ハッと我に返る。プリシラの指差した方を見ると、そこで私達の歩いていた林は途切れていた。

 ――けれど。


「な、何デス、これは……」


 その光景を目にしたレミが、震える声で呟く。林は自然に途切れていたんじゃない。何かの手によって無理矢理林じゃ(・・・・・・・)なくならされていた(・・・・・・・・・)のだ。

 私達の目に飛び込んできたのは、林の木々がことごとく薙ぎ倒されている光景。その断面は酷くギザギザで、これら木々を倒したのが刃物じゃなく凄まじいほどの力だという事を私達に伝える。

 折れた木々は丁度、私達の進路を横断するような形で道を作っている。まるで、木をへし折った何かが移動した跡みたいに……。


「クーナちゃん、サークさん、この世か……じゃなかった、この辺りではこういう事、よくあるの?」


 テオドラが私とサークを振り返り、不安げに問いかける。それに対し、私達は揃って首を横に振った。


「ううん。もしこれが何かの魔物の仕業でも、こんな事が出来る魔物なんてそうそういないよ」

「だがこれを出来る奴で、この辺りにいてもおかしくない奴ならいる。……オークの変異種、キングオーク。もしもそいつが生まれていて、俺達がオーク共を倒した時にはたまたまあの集落にいなかっただけだとしたら……」


 サークの言葉に、辺りに一気に緊張が走る。……だとしたら、部下を失って怒り狂ったキングオークは何をするか解らない!


「サーク、すぐにこれをやった誰かの所へ行こう! もしこれをやったのが予想通りキングオークで、人里を目指してるんだとしたら、大変な事になる!」

「ヒェッ!? ジジジ、ジョーダンじゃないデス! こんな事出来る奴となんか会いたくもないデス! さっさとここから離れるデス!」


 私が言うと、完全に怯えきった様子でレミが反論を口にした。……そりゃ、私だって本当は関わらずに逃げ出したいよ。

 でも、私が勇気を出さなかったせいで救えた筈の人が救われなかったら……そっちの方が私は苦しいし、きっと一生後悔する!


「レミは逃げてもいいよ。私は……例え一人でも、これをやった誰かを追う!」

「ちょっ……! 何言ってるデス!? 正気デスか!?」

「私は本気だよ。どんなに危険な選択でも、私、後悔だけはしたくないから!」


 胸の前で拳を作り、私はそう言い切る。するとサークが大きな溜息を吐きながら、ボリボリと頭を掻いた。


「んっとにこのじゃじゃ馬が……馬鹿かお前は。お前一人で行かせられる訳ねえだろ」

「でも……」

「だから俺も行ってやる。一人より二人の方が勝率は上がんだろ」


 面倒そうに言いながら、小さく笑うサーク。それを見たテオドラが、両の拳を握って言った。


「ならボクも手伝うよ! 二人には色々親切にして貰ってるし、少しでも恩を返さなきゃ!」

「ウチも~。今は戦う力はないんやけど~、敵の気を引くくらいなら出来ると思うで~?」

「な、なっ、あなた方まで……」


 テオドラとプリシラの申し出に、心が熱くなるのを感じる。今なら……どんな相手にだって負けない気がする!


「レミはんは~、安全なとこに避難しとき~」

「大丈夫だよ。ボク達絶対に、無事に戻ってくるから!」

「う、うう……」


 呻き声を上げながら、迷うように私達を見回すレミ。そして。


「お、置いてかないでデス! こんな所で一人っきりにされるのはもっと嫌デスー!」


 やがてレミは、涙声でそう絶叫したのだった。

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