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第40話 新たな同行者

「おい、起きろ」

「うーん……お腹いっぱい……」


 サークが眼鏡の女の子に声をかけてみるけど、女の子が目覚める様子は全くない。この子……死ぬかもしれなかった状況でこれだけグッスリ寝れるって、もしかしたら大物なのかもしれない……。


「うーん……私が起こしてみるよ。……ねぇ、起きて」


 仕方無く私が、優しく揺り起こしてみる。女の子は「フガッ」と一声鳴いた後、突然ガバッと身を起こした。


「ワ、ワワワワタシは美味しくないデス! 食べるならもう一人から先に……アレ?」


 大袈裟に身ぶり手振りをしながら、必死に主張し出す女の子。けどすぐに辺りの様子に気付いたのか、動きを止めて辺りをキョロキョロと見回した。


「アレ……オーク達が遂にワタシ達を食べに来たんじゃないデス?」

「ちゃうよ~。ウチら助かったんやで~」


 傍らのプリシラが相変わらずののほほんとした調子でそう言うけど、女の子はすぐには変化した状況を理解出来なかったようだった。女の子は何度も、何度も辺りの様子を窺うと、やがて恐る恐るといった風に口を開いた。


「……ワタシ、オークに食べられなくて済んだデス?」

「せやで~」


 プリシラが頷くと、女の子は唇をグッと泣きそうに歪ませた。そして今にも泣き出そうとしたその時、サークが少し強引にそこに割って入った。


「おっと、安心してるとこ悪いがこっちはお前に聞きたい事があるんだ。答えて貰うぞ」

「ヒッ!? ……あ、あなたはワイルダー卿の屋敷でワタシの邪魔をしたエルフ!?」


 サークの姿を確認した女の子が、喉をひきつらせて後ずさる。なおも詰め寄ろうとするサークの前に、サッとプリシラが立ちはだかった。


「エルフのお兄はん~何があったかはウチ解らんけど、あんまり乱暴なのは良くないで~。この子かて怖かったんや~」

「……チッ」


 そんなプリシラに、サークは小さく舌打ちすると大人しく引き下がった。代わって私が、女の子に視線を合わせて問いかける。


「えーっと……あなた、名前は何だったっけ」

「……レミデス」

「レミ、何であなたはこんなところにいるの? あの大きい神官さんは一緒じゃないの?」


 私が訪ねると、女の子――レミは急にシュンとしてしまった。そして、力無い声でこう答える。


「……神殿を追放されたデス。勝手にワイルダー卿を浄化しようとした事がバレて……」

「あー……」


 納得の理由に、私は曖昧な返事を返す事しか出来ない。同時に、神殿にとってもレミ達の行動は処罰の対象だった事にちょっとホッとした。


「追放は、各地のルミナエス神殿を巡礼して許しを得る事で解けるデス……だから仕方無く旅に出たんデスが、そこで運悪くオークの群れに遭遇してガンツと離れ離れに……」

「うーん……」


 という事は、今もガンツさんはレミを探してるって事かな? あの人、理由はよく解らないけどレミに忠実そうだったし、きっと見捨てたりはしないと思う。


「……なら、しょうがねえな。今日のところは全員で俺達の野営地まで戻って一夜を明かして、朝になったら全員でそのガンツってのを探すか」

「え!?」


 溜息と共にそう提案したサークに、私以外の全員が驚いた目を向ける。さっきまでのサークの口ぶりからすれば、確かに意外な提案だったかもしれない。

 でも、私は知ってるんだ。サークが本当は、とっても面倒見がいいって事。


「い、いいんデスか!?」

「ここでその辺に放っていくのも夢見がわりぃだろ。但し、同行すんのはお前が連れと合流するまでだ」

「こ……こっちだって、こうなった原因を作ってくれたあなた方と必要以上に馴れ合う気はないデス!」


 サークに張り合うようにイーッと歯を剥き出しにするレミに、思わず笑みが漏れる。とりあえずは、元気を取り戻してくれたみたいだ。

 一時的とはいえ思わぬ大所帯になっちゃったけど、きっと何とかなる……よね?


「話し込んでるうちにすっかり暗くなっちまったから、お前ら、くれぐれもはぐれんなよ。もし勝手にどっか行ったりなんかしたら、絶対探しになんて行ってやらねえからな」


 表向きはやる気のなさそうなサークの言葉に、私達は大きく頷き返した。

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