表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/188

第37話 テオドラの主張

「これで……最後ぉっ!」


 テオドラが戦斧を横薙ぎに振るい、目の前のオークの首を撥ね飛ばす。辺りにもう動くオーク達がいない事が解ると、テオドラは大きく息を吐き顔の汗を拭った。


「はぁ……やっと片付いた……」

「そうだな。じゃあ妹とやらに合流する前に聞きたい事があるんだが」


 疲れ切った様子のテオドラとは対照的に、まだ余裕の見える様子のサークが曲刀を納めないまま問いかける。サークの聞きたい事……それは多分、私の聞きたい事と一緒だ。


「えっ? 何?」

「お前、この世界の人間じゃないだろ」

「!!」


 サークの問いに、テオドラの顔がビシリと強張る。……やっぱり、そうなんだ。


「な、ななな何の事!?」

「無駄話をする気はねえ。率直に聞く。……目的は何だ。この世界の支配か」

「何それ!? ボク達はそんな事の為にこの世界に来たんじゃな……あっ……」


 反論しようとしたテオドラだったけど、途中で自分の失言に気付いて慌てて口を押さえる。……この子、多分本当は隠し事が凄く苦手なんだと思う。

 それを見て、私の中で疑問が生まれる。……テオドラは確かにこの世界の人じゃないけど、だからって敵とは限らないんじゃないかな?


「へぇ。この世界の人間じゃないのは認める訳だ」

「いや違っ……あのっ……」


 ますます冷たさを増すサークの表情に、テオドラは困ったように視線をさ迷わせる。けれどやがて、腹を括ったように言った。


「……そうだよ! ボクとシラはこの世界の人間じゃない。けどボク達はただ人を探してるだけだ!」

「人探しだぁ?」

「ボク達はボク達の兄さんを探してる。それでこの世界にやってきただけなんだ! お願い、信じて!」


 テオドラが、真っ直ぐにサークを見つめる。僅かな沈黙。そして。


「……はぁ。やりにくいな。どっかの誰かさんと同じ目してやがる」

「え、え?」


 そう言って、サークが面倒そうに溜息を吐いた。突然の態度の変化に戸惑うテオドラを余所に、サークは私を振り返る。


「クーナ、お前こいつどう思う」

「え……っと、多分悪い子じゃない、と思う」


 おずおずと私が答えると、サークはもう一度大きな溜息を吐いた。そして、手にした曲刀を鞘に納める。

 ……ひとまず、サークもテオドラを信じる事にしたみたいだ。その事が、私は何だか嬉しかった。


「……妹ってのを助けたら、改めて詳しく説明して貰うぞ」

「う、うん!」


 コクコクと何度も頷いたテオドラに頷き返して、私達はオークの集落の調査を開始した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ