第37話 テオドラの主張
「これで……最後ぉっ!」
テオドラが戦斧を横薙ぎに振るい、目の前のオークの首を撥ね飛ばす。辺りにもう動くオーク達がいない事が解ると、テオドラは大きく息を吐き顔の汗を拭った。
「はぁ……やっと片付いた……」
「そうだな。じゃあ妹とやらに合流する前に聞きたい事があるんだが」
疲れ切った様子のテオドラとは対照的に、まだ余裕の見える様子のサークが曲刀を納めないまま問いかける。サークの聞きたい事……それは多分、私の聞きたい事と一緒だ。
「えっ? 何?」
「お前、この世界の人間じゃないだろ」
「!!」
サークの問いに、テオドラの顔がビシリと強張る。……やっぱり、そうなんだ。
「な、ななな何の事!?」
「無駄話をする気はねえ。率直に聞く。……目的は何だ。この世界の支配か」
「何それ!? ボク達はそんな事の為にこの世界に来たんじゃな……あっ……」
反論しようとしたテオドラだったけど、途中で自分の失言に気付いて慌てて口を押さえる。……この子、多分本当は隠し事が凄く苦手なんだと思う。
それを見て、私の中で疑問が生まれる。……テオドラは確かにこの世界の人じゃないけど、だからって敵とは限らないんじゃないかな?
「へぇ。この世界の人間じゃないのは認める訳だ」
「いや違っ……あのっ……」
ますます冷たさを増すサークの表情に、テオドラは困ったように視線をさ迷わせる。けれどやがて、腹を括ったように言った。
「……そうだよ! ボクとシラはこの世界の人間じゃない。けどボク達はただ人を探してるだけだ!」
「人探しだぁ?」
「ボク達はボク達の兄さんを探してる。それでこの世界にやってきただけなんだ! お願い、信じて!」
テオドラが、真っ直ぐにサークを見つめる。僅かな沈黙。そして。
「……はぁ。やりにくいな。どっかの誰かさんと同じ目してやがる」
「え、え?」
そう言って、サークが面倒そうに溜息を吐いた。突然の態度の変化に戸惑うテオドラを余所に、サークは私を振り返る。
「クーナ、お前こいつどう思う」
「え……っと、多分悪い子じゃない、と思う」
おずおずと私が答えると、サークはもう一度大きな溜息を吐いた。そして、手にした曲刀を鞘に納める。
……ひとまず、サークもテオドラを信じる事にしたみたいだ。その事が、私は何だか嬉しかった。
「……妹ってのを助けたら、改めて詳しく説明して貰うぞ」
「う、うん!」
コクコクと何度も頷いたテオドラに頷き返して、私達はオークの集落の調査を開始した。