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幕間 その1

 薄暗い、等間隔に立てられた松明の灯りに照らされた玉座に、一人の少年が足を組み座っていた。

 恐らくは少年と青年の合間といったところだろう。細身だが華奢とも言えない均整の取れた体に、演劇で使うような赤い裏地の白マントを羽織っている。

 そして、その顔の上半分は、目元に横に細長い穴が開いただけの真っ白な仮面に覆われていた。


「ノア~♪」


 不意に暗闇からそんな甘えた声が聞こえ、少年は顔を上げた。すると松明と松明の間にいつの間にか、黒とピンクを基調にしたゴシックロリータ姿の桃色の髪の少女が立っていた。


「たっだいまぁ~ノア、会いたかったヨォ~♪」

「お帰り、ビビアン」


 ビビアンと呼ばれた少女は両手を広げてノアと呼ばれた少年に駆け寄り、勢い良く抱き着く。そしてノアの昏い金髪に頬を擦り寄せるビビアンの喉を、ノアは猫を愛でるように撫でた。


「それで? 今回の首尾は?」


 ところがノアがそう聞くと、ビビアンは途端に顔を跳ね上げ不機嫌な顔になった。頬を膨らませ唇を尖らせるビビアンの姿は、まるで駄々を捏ねる幼い子供のようだった。


「それがさー、聞いてよノア~! 変な奴らに、兵隊ゼーンブヤられちゃった!」

「変な奴ら?」

「魔法使いのクセに拳で殴ってくるオンナと、妙に強いエルフの二人組! カオスキューブまで使ったのに倒せなくてさー」

「カオスキューブを勝手に使ったの?」

「……あっ」


 感情のままに不満を口にしていたビビアンだったが、ノアの指摘にしまったという顔になる。先程までの勢いから一転、視線は泳ぎ、顔には冷や汗が流れている。


「えっとぉ~、そういえばカオスキューブをニンゲンに使った事ってなかったなって……」

「結果は?」

「パワーやスピードは上がるけどダメだネ~、魔物と違って理性までブッ飛んじゃう」

「ふぅん……」


 トントンと椅子の肘掛けを指で叩きながら、ビビアンの報告を聞くノア。その唇がやがて、小さな笑みを形作った。


「まあ今回は貴重なデータが取れたという事で、不問にしてあげるよ。いずれはカオスキューブを与えた人間達で軍隊をとでも思ったが、考え直した方が良さそうだ」

「アリガト~! ノア、大好き!」

「僕もだよ、ビビアン」


 ノアの言葉に、ビビアンの顔がパアッと明るくなる。そしてノアの頬に、軽い口付けを落とした。


「けどその二人組、興味深いね」


 ビビアンの口付けに応えるように喉を撫でるのを再開したノアが、愉悦を含んだ声で言う。それを聞いたビビアンが、ニヤリと悪い笑みを浮かべた。


「デショ? そう言うと思ってちゃーんとマーキングしといたカラ♪」

「流石ビビアン。僕の興味の持ちそうな事はちゃんと把握してるね」

「アイツらを手駒にすれば、計画がもーっと捗ると思うんだぁ♪」

「ああ。僕らの大いなる計画の為に、優秀な手駒は多い方がいい」


 そう言って、ノアが背後を振り返る。そこにはただ、深い深い闇があるだけだった。


「それと、丁度いいからあの国からは撤収しよう。既に必要な分のカオスキューブは貯まったしね」

「リョーカイ♪」

「さて……フフフ。その二人組とやらがどこまでやるか、まずは拝見といこうか」


 静かに笑う二人の視線の先で、闇の塊が大きく蠢いたような気がした。

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