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第3話 ゴブリン退治

 ゴブリン達が根城にしている洞窟には、それからすぐに辿り着いた。広めの天然の洞窟で、少しくらい派手に暴れても問題なさそう。

 入り口の前には、弓を持った見張りのゴブリンが二匹。二匹はそれぞれ別々の方を向いて、全方向をカバーしている。


「よっし、まずはあいつらを片付けないとだね!」

「おい、ちょっと待て」


 両の拳を打ち鳴らして気合を入れていると、サークが私の肩をがし、と掴んだ。そしてジト目になって、低い声で言う。


「お前、何する気だ?」

「え? あいつらやっつけるんでしょ?」

「何で拳を鳴らした?」

「サークに魔法で援護して貰って私は突っ込もうと思って」

「……一つ聞きたい。お前の本職は何だ?」


 言いながら、サークのこめかみがひくひくとひきつり始める。私はそれに怯まず、負けじと言い返した。


「だって! 強くなるには実戦を重ねる事が一番でしょ!?」

「それはその通りだが問題はそこじゃねえ。何で魔法使いが先陣切って殴りに行こうとしてんだよ! お前が魔法でさっさと焼き払やいいだけの話じゃねえか!」

「私はもっと強くなりたいの! 魔法で後方支援するだけなんてヤ!」

「我が儘言うなクソガキ! いいからとっとと魔法使え!」


 勿論これらは二人とも小声で言ってる。敵の目の前で大声で喧嘩するほど馬鹿じゃない。

 暫く、二人唸り声を上げながら睨み合う。先に折れたのは――私の方だった。


「うー……わーかーりーまーしーたー! 大人しくここから見張りを仕留めたらいいんでしょ!?」

「それでいいんだよ。あんまり不用意に前に出るな、お前に格闘術を教えたのは護身の為であって積極的に殴りに行かせる為じゃねえ」

「ぶー……」


 「解ったな」と肩を叩いて少し後ろに下がるサークを、恨めしげに睨み付ける。この分だと、さっき見回りのゴブリン達を相手にした時すぐに魔法を使わなかった事が知れたらまた怒られそう。

 私に格闘術を教えたのは、他ならぬサークだ。本人はあくまで護身術のつもりで、私に教えたらしい。

 サークにとって誤算だったのは、サークの予想以上に私が修行に熱心だった事。そして撲殺は出来なくても、魔物を素手で気絶させられるレベルにまでは腕が上達してしまった事だ。

 私としては格闘術だけでも十分やっていけるほどに腕を上げたいんだけど、サークからはこんな感じで必要以上に前に出ないよう口酸っぱく言われてる。確かに魔法を使った方が、安全だし早いんだけどね……。

 まあ、これ以上愚痴っても仕方ない。今一番やるべき事は、自分の我を通す事じゃなくて受けた依頼をきちんとこなす事だって解ってる。ならそれに向かって前進あるのみだ。


「……『我が内に眠る力よ』……」


 左手を前に突き出し、解放の言葉を唱えながら意識を集中させる。中のゴブリン達に気付かれない為にも、なるべく破壊音は抑えて倒さなきゃいけない。

 頭の中に、イメージを形作る。あのゴブリン達を一匹ずつ焼き払える、程好い大きさの二つの火球を強くイメージする。

 そのイメージを左手に乗せて……そして……解き放つ!


「『爆炎に変わりて……敵を撃て』!」


 詠唱を終えると同時、左手が手の甲の石を中心に激しく燃え上がり、その中から半径一メートル程の火球が二つ生まれる。二つの火球は宙を滑るように、猛スピードで二匹のゴブリン目掛けて飛んでいった。


「ギギッ!?」


 ゴブリン達は突然飛んできた火球を見て慌てて逃げようとするけど、もう遅い。火球は狙い違わずゴブリン達の全身を飲み込み、猛烈な勢いで焼き始めた。


「ギギイイイイイィッ!!」

「よし、俺が先に行く。お前は支援を頼む」

「あっ……!」


 上がった断末魔の悲鳴を合図にするように、サークは腰の曲刀を抜くとさっさと駆け出してしまう。私も慌てて、その後を追いかけた。

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