表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星空の小夜曲~恋と未来と、少女の決意~  作者: 由希
第2章 中央大陸編
167/188

第144話 変わり果てた地

 街道を離れ、道無き道を進む。

 方向はいつも通り、コンパスと知識と勘でサークが割り出してくれた。アウスバッハ領の中心――私の生家であるアウスバッハ邸を目指して、私達は一直線に進む。


(お父様、お母様、兄様、ひいおばあちゃま、皆……お願い、無事でいて……!)


 それだけをただ祈りながら。私は、休む間も惜しんで足を動かし続けた。



「……酷い……」


 目の前の光景に、私はただ呆然とする。一昼夜ひたすら駆け抜け、やっと辿り着いた領内は、すっかりと荒れ果てていた。

 家は焼かれ、田畑は踏み荒らされ。収穫の時期が既に過ぎ去っていたのだけが幸いだろうか。

 とにかく、そこに、見慣れた平和な風景はどこにもなかった。


「……気をしっかりもて、クーナ」


 私の体をしっかりと支えながら、サークが言った。


「あの衛兵達は反乱は起こってる最中だと言った。ならまだ、最悪の事態には至ってねえ。足を止めず、早くハリーやエルと合流するんだ」

「……うん」


 その言葉に、私は頷く。そうだ。今すべき事は、起こってしまった事を嘆く事じゃない。

 これ以上の悲劇を防ぐ。その為に今は、とにかく行動しなければならない。


「貴様ら、そこで何をしている!」

「!!」


 その時前方から、衛兵達がやってくるのが見えた。衛兵達は手に武器を携え、鎧を鳴らしながらこっちに向かってくる。


「数が多いな。倒す事も不可能じゃないが、アウスバッハ邸につくまでは無駄に体力を消耗したくない」

「解った。それじゃあ……『地の底から出で、総てを阻め、紅蓮のほむらよ』!」


 右手を前にかざし、詠唱を終えると、衛兵達の行く手を阻むように炎の壁が地面から噴き上がった。それに衛兵達が足を取られている間に、私達は急いでその場を離れる。

 うるさいくらいに鳴り響く動悸は、ずっとずっと、止む事はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ