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星空の小夜曲~恋と未来と、少女の決意~  作者: 由希
第2章 中央大陸編
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幕間 その6

「ハァ……今回は散々な目に遭った……」


 一人の男が、重い足取りで自宅の扉を開く。それはクーナとサークを乗せた、あの乗合馬車の御者だった。

 男の顔はすっかり憔悴し、この数日ですっかり老け込んでしまったようだった。霧の村での出来事は、生き残った全員の心に深い傷を残したのだと解る。


「……ハァ……」


 また一つ大きな溜息を吐き、男は自宅へと足を踏み入れる。その、次の瞬間。


 突然石になったかのように、男の動きが止まった。


 ずるり。どこかで何かが這う音がする。


 ずるり。男の目がぐるりとひっくり返り、白目を向く。


 ずる、ずる、ずるり。大きく開かれた男の口から、何かが這い出す。


 それは、人の腕ほどの大きさの蛇だった。蛇が完全に体内から這い出ると、男の体はその場に崩れ落ち、二度と動き出す事はなかった。


「なかなか面白い見世物だったわよ」


 いつの間にか、家の中に女がいた。布地の少ない真紅のドレスで己を飾ったその女は、男から這い出た蛇をその身に纏わせる。


「霧のせいで、途中まで視界が悪かったのは残念だけど……まぁいいわ。肝心の絶望は見れたもの」


 心底楽しそうに言いながら、女は紅い唇を弧に歪めた。その笑みは妖艶で、蠱惑的で――そして、どこまでも冷たかった。


「さぁ、そろそろ私が相手をしてあげようかしら。対決に相応しい舞台を整えて……ね」


 その呟きと共に、女の体はすうっと闇に溶けた。

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