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星空の小夜曲~恋と未来と、少女の決意~  作者: 由希
第2章 中央大陸編
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第131話 届かない言葉

「……マジかよ……この村が、伝染病の巣……」


 私の反対も空しく、サークは、伝染病の事を集会所にいる全員に伝えた。その上で、誰がこの閉鎖空間を作り出したかを突き止める為の協力をして欲しいと。


「そんな事しなくても、病気の奴らを全員ブッ殺しゃいい! そっちの方が早いだろ!」

「そうだ! それからじっくりと、脱出の方法を考えりゃいいじゃねえか!」


 村人さん達と、そして私が懸念した通り、周囲は見る間に殺気立っていく。それを制したのは、サークの静かな一言だった。


「お前らの家族が同じ理由で殺されても納得出来るなら、そうすりゃいい」

「……っ」

「それに、捨て鉢になった相手に逆に殺されるかもしれない。そのリスクを、わざわざ自分から背負いにいくつもりか?」


 サークの言葉に、場が一気に静まり返る。……凄い。言葉だけで、この人数を黙らせた……。


「……皆には、それぞれの家を見張って欲しい」


 静まり返った屋内で、サークはやっぱり淡々と言った。


「これだけの人数がいれば、全部の家を見張れるだろう。ここには彼を残しておくから、見張ってる家に何か動きがあればここに戻って報告してくれ」

「え、あっしですかい!?」

「俺も見張りに回りたいからな。頼めるか?」


 指名を受けた御者さんは、戸惑った様子を見せながらも、何度もコクコクと頷いた。それを見た、ここの人達の中心格である眼帯の男の人が眉根を寄せながら口を開く。


「……今のところは、お前の提案に従おう。だが他の奴らはともかく俺は、のんびり事態解決を待つつもりはない」

「と言うと?」

「今日一日は、言う通りにしてやる。だが朝を迎えても何も動きがなければ、俺はこの村を焼き払う」


 眼帯の男の人の宣言に、周囲が再びにわかにざわつき出す。けれどサークは、顔色一つ変える事はない。


「……解った。明日の明朝までだな」

「サーク!」


 私は耐え切れず、大声を上げてサークに縋る。サークはそんな私に一瞥いちべつをくれただけで、振り向いてくれさえもしない。


「他の奴らもそれでいいか?」


 確認を取る眼帯の男の人に、他の人達は曖昧な雰囲気ながらも頷き返していく。多勢が決してしまった今、私一人が声を上げてももう届かないだろう事は容易に想像出来た。

 それに……今皆を止めるのに必要なのは、説得力のある言葉だ。嫌だ嫌だとただ駄々をこねるだけじゃ、何にもならない。

 悔しいけど、私の頭じゃ、どんなに考えても皆を納得させられる言葉が出てこない……。


「決まりだな。誰がどの家を見張るかは、実際に全部の家を回った俺にやらせてもらおう」


 私が、自分の無力さに唇を噛み締めている間にも。サーク主導の話し合いは、着々と進んでいくのだった。

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