第127話 招かれざる客
私達は仕方無く、村の集会所に行く事にした。
霧は相変わらず濃かったけど、サークが一番大きい建物を精霊に探させたおかげで集会所の方向はすぐに解った。精霊を操るサークを見て、御者さんが感心したように息を漏らす。
「はあぁ……霊魔法ってなあ便利なモンですねえ……」
「自在に使えるようになるまでが面倒だがな。っと、どうやらあの建物だな」
サークが指さした方向に、平屋の大きな建物が浮かび上がる。静かな霧の中に佇むその姿は、どことなく不気味な印象を与えた。
「静かでやすねえ……本当にここに他の旅人達がいるんですかねえ?」
「行ってみなきゃ解るまいよ」
御者さんはこの静けさを不安がるけど、ここはサークの言う通り、とにかく行動するしかない。待って状況が改善するようには、どうしても思えなかった。
三人で入口に近付き、サークが扉をノックする。すると中から「……入れ」とだけ返事があった。
「お邪魔します……わっ」
中に入ったところで、思わず息を飲んだ。集会所の中にいた人間、その全員が、決して好意的でない目を私達に向けていた。
「……チッ、また無駄飯食らいが増えやがった」
そう毒づいたのは、中心にいた眼帯の男の人だ。他の人達も同意見だというのは、雰囲気から見て取れた。
「無駄飯食らいとは、また随分な言いようだな」
「事実だ。お前さん方が食糧をたんまり持ってきてくれたってんなら別だがな」
「ヒ、ヒィ……」
剣呑な空気に、御者さんはすっかり縮こまってしまっている。私はこの空気を変えようと、何とか声を張り上げた。
「あ、あの! 皆さんはどのくらい、ここに留まってらっしゃるんですか!?」
「……五日だ。俺が一番長い」
答えたのは、やっぱり眼帯の男の人だった。他の人は、私達と話をする気はないみたいだ。
「残りの食糧は、どれだけある」
それならこちらも要点だけを告げるとばかりに、静かな声でサークが聞く。途端、眼帯の男の人が眉間に深く皺を寄せた。
「俺達の手持ちは、どれだけ節約しても三日ももつまいよ」
「村からの援助は?」
「あるが、雀の涙程度だ。ここにいる全員の空腹を満たす事なんて、とても出来やしねえ」
成る程、私達が歓迎されてない理由が解った気がする。困窮した食糧事情が私達のせいで更に悪化したとなれば、厄介者と思われても仕方がないのかもしれない。
「……」
サークは少しだけ考え事をする素振りを見せた後、皆に背を向ける。その背に、眼帯の男の人が声をかけた。
「どこへ行く?」
「少しこの村を調べてくるだけだ」
「そうか、気が済むようにしろ。ああ……だが、くれぐれも村人達には注意しろよ」
その忠告に、サークが少しだけ振り返る。私も理由が解らずに、男の人を見た。
「何故だ?」
「アイツら、妙にコソコソしてやがる。命は取らないまでも、何かしら俺達に隠していやがるのは間違いない」
「……成る程。忠告、受け取っておく」
言い残し、サークは集会所を出た。私もほんの刹那悩んだ後、その後を追った。