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幕間 その5
「……ふぅん」
総ての顛末を見終わると、女は使い魔との通信をぷつりと切った。
「あれが噂の『神の器』……。バルザックを倒したほどの実力者だっていうから、どんな猛者なのかと思ってたけど」
言いながら椅子の縁に肘を付き、溜息を吐く。その目には、明らかな失望の色が浮かんでいた。
「ダメね。全然ダメ。あの程度の出来損ないにも苦戦するようじゃ」
その言葉と共に、一匹の大蛇が頭に器用にワイングラスを乗せながら、するすると女の元へやってきた。女は優雅に微笑むと、大蛇からグラスを受け取り、注がれた血のように赤い液体を一気に飲み干す。
「仕方無いわね。私が手伝ってあげるわ。『神の器』には強くなってもらわないと、こちらが困るものね?」
空になったグラスを、女は無造作に投げ捨てる。床に落ちたグラスは、ぱりんという乾いた音を立てて粉々に砕けた。
「でも……途中で壊れちゃったら、ごめんなさいね?」
細められた女の目が、蛇のように、妖しい輝きを放った。