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星空の小夜曲~恋と未来と、少女の決意~  作者: 由希
第2章 中央大陸編
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第113話 エリスの想い

 ……エリスさんの話が終わった。

 私は打ちのめされて、暫く何も言う事が出来なかった。サークがこんなに重いものを背負ってきたなんて、思ってもみなかった。

 きっと、サークが私に話してない事はもっといっぱいあって。その分だけ、サークの心は傷を抱えていて。

 支えられるのかな。たったの十六年しか生きてない、私に。


「……あなたは本当に優しいのね」


 俯いてしまった私に。エリスさんは、優しく微笑んでくれた。


「あなたはサークの傷に、寄り添う事が出来る人。だからそんな風に、自分の事のように悲しんでくれる。……ねえ、あなたはサークが男の人として好きなの?」

「えっ……」


 突然の質問に、私は思わず頬を熱くしてしまう。な、何で今、エリスさんはそんな事聞くんだろう?


「な、何で、そんなっ」

「そうね、私がそうだったらいいなって思っただけ。それと……もしそうだったら、後悔して欲しくないの。私のように」

「エリスさんの、ように……?」


 そう言われて、一瞬どういう意味だろうと思ったけどすぐに思い当たる。それはエドワードさんの事を話していた時の、エリスさんの表情。

 もしかして……エリスさんはエドワードさんを……?


「私はね……何もかもが遅すぎたの」


 私の疑問を肯定するように。エリスさんが、寂しげに笑った。


「エドワードがいなくなって、私は初めて、自分が彼に恋をしていた事に気が付いた。でもサークのように何もかもを捨てて外の世界に出て行く勇気もなくて、その後も森に留まり続けた。そして、やっと森を出る決心をした時には、人間である彼はもう……」

「……エリスさん……」

「だからあなたには、私みたいな後悔をして欲しくないの。……想いを伝える先がなくなってしまってからじゃ、もう遅いんだから」


 ……エリスさんの後悔が、痛いほどに伝わってくる。エリスさんは伝えられなかった想いを抱えて、何十年も生きてきたんだ。

 伝えられるかな。今はまだ、勇気も自信も全然ないけれど。

 いつか、サークの一番側でサークを支えられる存在に、私はなれるのかな……?


「長々と話に付き合わせちゃってごめんなさいね、クーナちゃん」

「う、ううん! 私の方からお願いしたんだから」

「ふふ、明日も早いし、そろそろ寝ましょ?」


 エリスさんの言葉に、私は頷く。色々考える事はあるけど、まずは目の前の事態を解決しなくちゃ。


「おやすみなさい、クーナちゃん」

「うん、おやすみなさい、エリスさん」


 互いに声をかけ合って、私は、そっと目を閉じたのだった。

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