第104話 予期せぬ出会い
「ハアッ、ハアッ……」
誘導に従い、何とか近くの民家に逃げ込んで。扉を閉めて、一息を吐く。
「も、もおおおお……何なの、アレぇ……」
「大丈夫、人間さん!?」
すると奥から、パタパタと女の人が駆けてくる。その姿を見て、私は思わず驚いた。
「えっ!? ……エルフ!?」
そう、女の人の耳は、サークと同じで長く尖っていた。サーク以外のエルフ、生まれて初めて見た……。
隣のサークを見ると、やっぱり驚いたように目を見開いている。サークくらい長く旅をしてても、やっぱり同族は珍しいのかな……なんて思っていると。
「……エリス……?」
「え……? あなた、サーク? やだ、サークじゃない!」
「へ?」
お互いの名前を呼びながら、何だか熱く見つめ合う二人。……え……二人とも知り合い、なの……?
「ふぅ。ただいま、姉さん」
困惑していると、私達を誘導してくれた人が中に入ってきた。よく見れば、この人の耳も長く尖っている。
「ヒューイ、サークよ! サークが来たのよ!」
「え? ……本当だ! まさかサークと会えるなんて……!」
「ヒューイ!? お前まで……!?」
二人のエルフは、サークを見て酷く喜んでいるように見える。対するサークは、現状にまだ理解が追い付いてない、といったような感じだ。
ど……どうしよう。私、どうしたらいいのかな……?
「人間さん!」
「ふ、ふぁい!?」
私が所在無げにしていると、不意に女の人の目が私の方に向いた。少し垂れ気味の鳶色の瞳は、まるで幼い少女のようにキラキラと輝いている。
「人間さんはサークのお友達よね? いいえこんなに可愛らしいのだもの、恋人さんかもしれないわ! お名前は? サークとはいつからのお付き合いなの?」
「……いや。いや、待て、エリス。ちょっと待て」
グイグイと私に詰め寄り質問攻めにする女の人と私との間に、漸く現状を受け入れた様子のサークが割って入る。そして見た事もないような困り顔で、深く、深く溜息を吐いた。
「……驚かせたな、クーナ。今、ちゃんと紹介する。この二人はエリスとヒューイ。その……俺の、従姉弟だ」
「……い、とこ?」
サークのその言葉に。今度は私が、二人をまじまじと見てしまった。