表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星空の小夜曲~恋と未来と、少女の決意~  作者: 由希
第2章 中央大陸編
118/188

第99話 神の器(クリスタ)

「……クッハハハ。参ったなァ。こりゃオレ様の完敗だ」


 全身を、尽きる事のない炎に包まれながら。どこか満足げに、バルザックは嗤った。

 どうやらもう、氷を生み出す力もないらしい。さっきのようにバルザックが、氷で炎を消火する事はない。


「約束よ。教えて。クリスタって、一体何なの?」

「いいぜ……教えてやるよ。どうせ知ったところで、テメェらにゃどうにも出来ねェしなァ」


 体が鉱物で出来ているからだろう、こんな姿になっても流暢にバルザックが言う。そして今までと比べると実に静かに語り始めた。


「……『神の器(クリスタ)』ってなァ、カミサマの器。オレ様達のとは別の世界にヴァレンティヌス様が降臨する為に必要な、聖なる依り代の事さ」

「依り代……?」

「『神の器(クリスタ)』になれンのは、降臨させたい世界の人間だけ。それもその世界のカミサマに、近い人間に限られる」

「どうして?」


 私が問いかけると、バルザックが炎の中でニヤリと嗤うのが見えた。その笑みに、私は軽い寒気を覚える。


「神に近い人間を器にする事によって、ヴァレンティヌス様の中にその神の力が宿る。そうすりゃ、その世界の神の加護を打ち消す事が可能になる」

「なっ……!」

「そうすりゃ神の加護を受けた人間だろうが何だろうが関係ねェ。あのお方に敵うものは、その世界のどこにもいなくなる」


 そんな……その為に必要なのが、私? 私の体を使って、この世界を滅ぼそうっていうの……!?


「『神の器(クリスタ)』となる者が強けりゃつえェほど、それを依り代としたヴァレンティヌス様の力も増す。いやァ、嬉しい誤算だぜ。この世界の『神の器(クリスタ)』が、オレ様を倒せるくらいつえェとはなァ……!」

「……っ、私は『神の器(クリスタ)』なんかにならない! 絶対に……!」

「なるさ。テメェは絶対に逃げられねェ。オレ様の勘は当たるんだよ」


 バルザックの体のひび割れは、最早顔にまで広がっている。もうすぐ、その命は消える事だろう。

 最大の脅威である筈の、『四皇しこう』の一人を倒した。それなのに……こんなに心が晴れないなんて……。


「それじゃあ、精々これからも強くなってくれよ。オレ様達の為になァ……ギャハッ、ギャハハハハハハハハッ!!」


 高笑いを上げ、バルザックの体が崩れていく。私の耳には、バルザックが完全に動かなくなってもなお、その嗤い声がずっと響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ