その男、ある意味で狂暴につき
カメラやレフ板、スケッチブックを持った男達が慌ただしく動き回る室内。
大きなベッドの上で息を切らす者に背を向け、彼は立っていた。
「監督の要望と言え、少し激しかったですか?」
「いえ……大丈夫です、ここまで感じたの初めてで」
息も絶え絶えに出てきた言葉に彼は少し笑い、右手でサヨナラの合図を送るとすっ裸のまま部屋を後にした。
浅黒い肌に6つに割れた腹筋と引き締まった手足に左サイドを刈り上げた黒い髪、そして体中にある傷と火傷の跡。
彼の本業を知らずに会った者は一様に軍人と勘違いする。
いや、それは間違いでは無いか。
彼、長門ケイスケは数年前まで一兵士として人類以外の存在と戦い続けて居たのだから。
戦いも終わり、退役した彼を待っていたのは戦闘スキルを持っただけの20代の無職という現実。
映画やドラマのように偶然入ったビルや船でテロリストと戦う羽目になったり、突如現れた宇宙からの侵略者と戦ったりといった展開もなくハローワークに通いながら生活のために貯金を崩す日々。
TVのCMでやっていた[好きな事を仕事にしよう]というキャッチコピーで思いついたのが、現在の仕事[セクシー男優]いわゆるアダルティな作品の出演者である。
シャワー室に移動後、グラビアアイドルなみにセクシーなポージングでシャワーを浴びるケイスケ。
シャンプーやリンスが並ぶ棚から、石鹸を取った瞬間だった。
「!!」
足元に現れた六芒星の魔方陣。
簡易な個室とタイプのシャワールームを包む眩い光。
光が終息した時、無人のシャワールームはお湯の流れる音だけが残った。