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夢の終わりの物語 ~Story of end of dream~  作者: 深水 浅火
外章・黄昏の騎士編
4/11

希望

人の首が無数に落ちている。

草花すらも生えない焦げた大地。

火薬のつんとする香りが臭う。

曇天の空は次第に色を更に黒く染めて行く。

幼さの残る少年は、屍の鎧をまさぐった。金や銀の指輪の一つ出ることも稀ではない。

少年は、腰帯に金目のものを片っ端から吊るして行く。

死人が恨めしそうに見る。

少年は目にもとめない。

所詮、死人だ。

死人に口なし。もはやモノと変わらない。守るべきは過去のモノじゃない。大切なのは今、そして未来に繋ぐことだ。


背後から土を踏む音が鳴る。

咄嗟に振り向く。

少年は急いで距離をとった。

不覚にも間合いまで詰められていた。

男は白髪頭で、マントの下に厚いレザーの服を纏っていた。

洗練された眼光が捉える。

刺すような空気。

少年は睨んで問う。

「なんだよ、おっさん?」

「キミはどう思う?」

質問を質問で返される。苛立ちが募る。

軽く舌打ちを打つ。

「なにをだよ」

「この、戦場のありさまさ」

訊かれ、少年は改めて周囲に目をやる。

溢れかえった死人。人間の野心と憎悪が丸裸にされている。

「ん」

鼻先に冷たいものが触れる。

雨が、降って来た。

瞬く間にざぁざぁ音を立てる。

されど濡れたところで彼らの無念が払い落とされるわけではない。

「別に、なんとも思わない」

「なぜ」

男は憮然とした態度を崩さない。

「俺にはこいつらを助ける手段がない」

「なるほど」

「俺の親は戦争で殺された。戦争で人は死ぬもんだし、いちいち悲しんでられないだろう」

男は少年をじっと凝視する。彼の鷹の如き眼は全てを見透かすかのようだった。

「キミ、私について来なさい」

唐突に男は言った。

「嫌だと言ったら?」

「それならそれで構わない」

不思議な男だった。

強制でないはずだったが、頷かざるを得ない求心力があった。

「……いくよ」

「ああ、いこう」

やがて二人は血が滲む地を去った。





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