五月七日の奇跡(未完)
壁の飛ぶ鳥が描かれたカレンダーに、今日五月七日が丸で括られていた。
なんの日だったろう。なにか意味があったはずだけど。全く覚えてない。暗記は得意じゃないんだよ。
白染蓮真はベッドの上を寝転がりながら悪態をついた。
既に針は数字の1を指さそうとしている。
ゴールデンウィーク最終日は誰と遊ぶ約束もしていない。
今みたいな時間を愛してやまないのだが、どうにも生きた心地がしない。
ぐぅぅと腹の虫がなる。
一人暮らしでご飯を作ってくれる者もいない。不服ではあるが彼は起き上る、
雑に黒いズボンにワイシャツを着て家を出た。財布を忘れて一度戻った。
誰だっけあの子。
蓮真は軽く首を傾げた。
高層ビルの立ち並ぶ通りの一角のファミレス。
ポテトとハンバーグを食べながら、彼の視線は釘付けにされた。
俺はあの子を見た記憶がある。
小中の同級生かなぁ。いや、あんな美人を俺は知らない。
彼の目先には、青黒い長髪が美しい少女が座っていた。異様なぐらい色白で、目鼻立も整っている。不気味なくらいに浮世離れした雰囲気があった。
目、青いな、ジュースを飲みながら彼は思った。ハーフなんだろうか?
ふと、蓮真は自身を振り返る。
このままでは不審者じゃないか。
サッと視線を何気なく戻し、誰もいない正面席と向き合った。
少女は二人組で来店していた。
もう片方は、丁度父親ぐらいの年齢であった。さすがに彼氏ではないだろう。まさかの援助交際じゃ……。
彼は軽く首を横に振った。
馬鹿なことを考えるもんじゃないな、と苦笑した。
結局、昼飯を終えるとそのまま退店した。
いくらなんでも初ナンパがその子の親の目の前とかは怖すぎる。
蓮真は外に出て、スーパーに寄って行った。
今日の晩飯はどうしようか。
うん、そうだなぁ、肉じゃがかなぁ。
彼は食材をカゴに入れた。
スーパーを出た頃は既に日も傾いていた。
蓮真は歩きながら、オレンジに染まるビル壁、通りすがる車を眺めていた。
家への帰路の人影も減ってきている。
特にもこの道は軍事区へと直でつながっているから軍人以外の、学生とかの出入りも元々多くない。だから静かといえば静かなエリアだ。ときたま軍用ジェットがソニックブームをしている程度だし。
家に着くと、蓮真はそうそうに調理を始めた。
面倒臭そうに人参ジャガイモ云々を切り刻み、最後は眠たげに煮えるのを待っていた。
晩飯にありついた時は既に八時を回っていた。
内心で「いただきます」と呟いてから食べる。
寂しい一人暮らしでは、こういう料理なりでそういう気を紛らわせるのは得策と言えた。
それに自分で作った料理は三割り増しで美味しく感じる。
テレビは連日の異能消失事件を取り上げていた。
正直蓮真にはあまり関心がなかった。
正確には、自身の街でこんなことが起きている実感が湧かなかった。