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74.ラビとの迷宮

迷宮の5階層

そこへと降り立った2人と1匹。その2人の姿は頭の先から足首までをすっぽりと覆うローブを纏っていた。


逃げるようにして登録した5階層に入り、辺りに誰もいないことを確認すると着ていたローブを脱ぐ。

ベテランの冒険者でも手に入れるのが難しい、名工グランファの装備を隠す為……といっても《そうび》で換装するだけなんだが、流石に換装前の装備じゃ迷宮前で止められる。


だからこそ、ローブで隠して

《そうび》

意識下で固有スキルの《そうび》を発動する。


装備2

胴体 魔芋虫の肌着

武器 血桜

右手 チタニウム鋼の手甲 右

左手 チタニウム鋼の手甲 左

帯 腰帯

脚 チタニウム鋼の脚甲

足 布の靴

その他1 黒鋼のブレストプレート

その他2 石袋


迷宮内で換装する。


そして、もう一人もゆっくりとフードを脱ぎ、その顔を露わにした。

銀色の混じったような白髪に、頭のてっぺんに伸びた2本の兎耳の少女。その姿は見る者の時を一瞬止め、大きく息を呑ませる。天使のような愛らしい容姿に、くっきりとした大きな目は炎のようなオレンジ色の色彩を揺らめかせる。


その少女の名はラビ。齢10歳前後の容姿だったラビは、溜め込んでいた獣人族特有の成長期を一気に解放し一晩にして年相応の美しい少女となった。

奴隷にした時は妹のような感覚で見ていられたが、本来は自分よりも3つ歳上のラビ。一気に表情も身体つきも大人びてしまい、変に意識してしまう……。


よし、ラビのステータスをもう一度確認して落ち着こう。


名前:ラビ (月兎族 女)

年齢:18

性別:女

職業:奴隷(契約主 ユウ)

スキル:槌術 脚力増加 薬学


「ご主人様……。」


無言で見つめる僕に不安になったラビが泣きそうな顔でこちらを見つめる。


朝起きてベッドの上から飛び退き土下座を敢行したラビに、昨日の晩の食事後からの経過について説明した。

途中何度か(同じ席での食事。食事中、しかも主人より先に就寝。主人に運ばせベッドへ。主人より遅く起きる………etc)取り乱し、怯えながら頭を下げ続けるラビをなんとかなだめ、これ以上謝られても話が進まない。それこそ主人に対し失礼だとシルネが言い聞かせやっと普通に話せる状況になり、自身に何が起きたのかを伝えた。


「ご主人様のお役に立ちたいです!」


全ての説明を聞き、真っ直ぐとこちらの目を見て言ったラビ。

本来月兎族は、戦闘と医学に秀でた種族で成長出来ず弱々しい体をラビ自身、恥じていたらしい。月の兎は薬師に通ず。

前世の伝説のようなその兎族達は、ハンマーのような重量級の武器を扱う事に長け、自ら危険な場所に赴き様々な素材を自らの手で採取し、薬を調合し生計を立て暮らしていた。


そんなある日、父親に連れられ採取に出掛けた森の中で行き倒れた商人を助けた事が悲劇の始まりだった。

深い傷を負った商人の為に傷薬を調合し、看病した父親に商人は命の恩人へのせめてもの礼儀だと自らの食料と酒を振る舞った。

始めは断っていた父親も商人の一口だけでも互いに飲み交わしたいという言葉に負け、休憩小屋にて互いの椀に注がれた酒を一口商人と共に飲み交わした。


そして口に含んだ瞬間、父親の体は麻痺しその身を縛られ人質とされた。


父親を人質に取られたラビは、そのまま奴隷商人だった商人に奴隷の首輪をつけられ、目の前で麻痺している父親は殺されてしまった。その後前の主人に買われ、多くの幼女姿で成長を止められた獣人達と生活していた。


そして、前の主人が殺されたあの日は、必要最低限の食事のはずが、新入りの給仕が食事の配膳を間違え食事を多く取ってしまい、止む無くその男の仕事に付き添う形で迷宮へと向かったらしい。


その後のことは僕の知っている通りだった。

そして、命を助けられただけでなく成長までさせてくれた僕に対し、忠誠を誓い先程のセリフへと繋がった。


目の前のラビは、不安な顔をしつつもしっかりと、片方が平らで反対側を尖らせた柄頭を持つ非常に重い戦鎚を握りしめている。

グランファさんの店の見習いがフラつきながら運んできたその戦鎚を軽々と受け取り、その場で感触を確かめるようにブォンブォンと鈍い風切り音を響かせるラビに、スキルの理不尽さを改めて実感させられた……。


その余りにもギャップの激しい光景に、グランファさんが爆笑しラビの専用装備を作ってくれることになったのはラッキーだった。


「よし。行こうか」


「ウォン!」

「はい!」


5階層の階段を1つ上がり、グスト達のいた4階層へと戻る。

戦鎚を軽々と持ち上げるラビも、急な成長で体の感覚が幼女時代と大きく変わり、その動きがいくらかぎこちなさが残っている。一度4階層に上がり、気配察知をフルに活かし人を避けつつこの階の魔物であるビッグアントの群れを探る。


この4階は、ビッグアントがほぼメインの魔物で刃が通り難く団体で襲われる可能性があり、初心者にはリスクが高い割に倒すのに時間がかかり素材を売ってもそれなりの量が必要な為、稼ぐという事に非常に効率悪く人気がない。


だからこそ、あまり人に会わず多くの魔物に遭遇できるこの階は、僕らにとっては非常に都合がいい。

階段のある部屋を進み、4階層から3階層への階段のある部屋へと向かう。


暫く進むと前方にビッグアンの気配を察知するが、その瞬間


「ご主人様 !前方に魔物の足音3体分!お気をつけを!」

『主様〜 合ってるよ〜。前方の部屋に3つの匂いがするよ〜』


僕らの前方にて確かに反応のある3個体。


『キハク。今回は手を出さないで。ラビの力をみたいから』


しっかりと索敵もこなせるラビを先に行させ、その成長を確かめる為闘いを見学する事にする。

そして索敵通り、3体のビッグアントのうちの、先頭のビッグアントの姿を確認した瞬間。


ドンっという音とともに地面を一蹴りし、持ち手から先まで160cmくらいの鉄の棒に、戦鎚にすべく平の部分と尖った部分をもつ柄頭を取り付けた鈍器を軽々と振り上げビッグアントに一瞬にして迫るラビの姿があった。

更新遅くなりました。

読んで頂き有難うございます。


ブックマークや評価が増える本当に嬉しいです!調子のって筆も進みます。

これからもよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] いつも楽しく読ませて頂いてます。 他作品共、更新が滞っているようですが、 このままエタッてしまうのでしょうか?
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