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69.不意に訪れた悪意

「ユウ…様」


放心状態から脱したシルネが、何とも言えない表情をしている。

疑ってはいないが、疑問は多々ある。そんな顔だろうか。

その後、ある程度シルネに《料理》スキルの可能性を説明した。

と言っても、対してわかってないので今回のビッグスライム討伐の経緯と、考察を話した程度だが。


「じゃあこれから倉庫に行くのでいい?」

その場は何とか、食べられる魔物いるという事実だけは納得してもらい。

この後のスケジュールについて確認する。


明日の引越しに向け、必要な物資の買い出しはシルネに頼んである。さすがに、大量の荷物を宿に運ぶわけにもいかず、街の一画にある倉庫を借り、全てそこに運んで貰っていた。

あとは《どうぐ》にしまうだけだ。


「はい。ユウ様荷物は倉庫へと運んであります。倉庫は明日いっぱい借りているので、必要であれば明日の引越し後も、買い出しして運んでもらう事ができるので、何でも言ってくださいね。」


「うん。よろしく」


迷宮前の広場の近くには、貸し倉庫エリアが存在する。

なぜそんなエリアがあるかというと、迷宮へ潜るパーティやらクランと呼ばれる大所帯の組織を構成している冒険者達が、迷宮前の準備や、迷宮探索後の素材の一時保存などに利用しているからだ。


この迷宮都市で最も大きく、有名なクランは総勢300名を超える冒険者を抱える。「黄金の塔」と呼ばれるクランだ。

今最も深く、43階層まで迷宮を走破しているパーティが所属しているらしい。


43階層迄行けば、どんな食材が手に入るのだろうか。

定石通りなら、深い階層ほど美味な食材が取れるはずだ。まずは強くなろう。そして仲間も増やそう。

より深く潜る為に。


倉庫に辿り着くと、買い揃えた大量の荷物が山のように搬入されていた。

テニスコート程の倉庫に、多少の行き来が出来るような細い道幅は確保されていたが倉庫の8割以上を荷物が埋めていた。

《どうぐ》


山の一部に手をかざし、収納を意識した瞬間。一瞬にして、目の前の大量の荷物が消える。


大量の荷物は一回で収納出来ず、数回に分けて収納したがそれでもあっという間に倉庫を埋めていた大量の荷物は《どうぐ》へ収納された。

さすがは固有能力……。


「ほぇ〜。しかし何度見てもユウ様の固有能力は凄まじいですね。まぁこれならグランファさんの鉱石運搬依頼も楽に達成できちゃいま…す…ね……」


悪態をついていた当時の自分を思い出したのだろうか。

シルネはどんどん赤くなり、最後は血の気が引いたように青白くなった。


「何かを思い出したんだな。まぁ受付の時のやり取りは、もう忘れたから気にしないでいいよ」


そう言って、ギルドに行く時の姿である黒髪妹風モードの、シルネの頭を軽く撫でる。


「よし!完了全部入ったね。何があるかも把握できるから、部屋を作るときにその部屋に直接出していこう。あまり他人を引越しとはいえ、家に入れたくないからね」


「んっ?どなたか来たようです」


うん。知ってた。

先程から《気配察知》で感じる。

倉庫の外で、扉の前に立ち、こちらを待ち構えているかのように門前にたつ2人。

その2人が、扉に向かって歩き出した。シルネは気配というより、魔力かなんかで察知してんのか?


ドンドンッ!!


「失礼する!こちらにユウという冒険者がいると聞いた。我らはこのラビエーニの衛兵を任されている者だ。元冒険者グストの一件で話がある!詰所への出頭をせよ!」


あぁ兵士だったのか、倉庫の周りをウロウロしてたのは普通に迷ってたのか?

それよりも、本日2回目の呼び出しか……。

なんとも忙しないな。


「はい。僕がユウですが。なにかありましたか?」


「うるさい!貴様がユウか!何も言わず黙ってついて来い。」


「痛って」


腕を掴まれ、倉庫から引っ張り出されると剣の鞘で背中をかなりの強さで押される。

どう考えても横暴極まりない。何故悪い事もしていないのにこんな事をされないと行けないんだ?


「ちょっと待ってください!ご兄様が何をしたというのですか!」


(あれ?シルネ……。お兄様って……。本気で心配してる?)


「煩い!関係のない者は黙っていろ!」


「キャッ」

「ウゥーー!」


「キハク!待て!シルネ大丈夫⁈」


もう1人の男にに肩を小突かれ、尻餅をついたシルネを見て、キハクが毛を逆だてる。今にも首元にでも飛びかかりそうなキハクを止め、すぐにシルネのの状態を確認する。シルネも軽くぶつけただけだ、大丈夫だろう。


「何をする!用があるのは僕だけだろう!早く連れて行くなら連れて行け!」


「ふんっ おいっ構うな行くぞ!」


シルネに宿に帰って待つように伝え、乱暴に連れて行かれた先は、やはり先程と同じ詰所だった。


しかし、様子がおかしい。先程ジルサさんと話した部屋を通り過ぎ、グスト達のいた牢屋に向かっている。

また顔合わせか?


「おらっここに入ってろ!」


「はっ?ぐふっ」


何を言っているのか理解できぬまま、最初から横柄な態度をとり続ける兵士に、背中を蹴られ牢屋へと倒れこんだ。

すぐに立ち上がるが、なにかの間違いないなんじゃないかと訴える間も無く、あっという間に鍵をかけられ、2人の兵士は去って行ってしまった。


「えっ嘘でしょ?」


意味が全くわからないうちに、投獄されてしまった……。

改めて今回の投獄について自分の行動について思い返してみるが、

「ふむ。全く意味が分からない。取り敢えずジルサさんと話せるように交渉するか?」


4畳半程の、正方形の牢のなかは端に薄い布が引いてあり、隅に穴が開いている。ここで用を足せってことか?

牢だけに、飾り気のないその部屋を見渡し冷静になってみると、グスト達の叫び声が聞こえない。


既にこの詰所にはいないのか。僕以外にここに並ぶ6つの牢屋には全く気配がない。


布の上に腰をおろし、目を閉じる。

蹴られた背中が痛い……。あんにゃろう。いずれここでジルサさんに世話になった礼に食事を振る舞おうと思ったが、あの2人は飯抜きだ!いや。どうせ料理にまだ興味のない世界だ。一口だけ味見させてからオアズケにしよう。


くっくっく。絶対よだれ垂らさせてやる。


「すまない!ユウ!大丈夫!……か?って案外余裕だな……。いや。すまない。今鍵を開けよう」


ここで振る舞う料理を考えながら、30分程妄想していると、慌てた様子のジルサさんと先程とは違う兵士2人が牢に駆け込んできた。

ジルサさんにはバッチリ、思い出し笑いならぬ、妄想笑いを見られてしまった……。


「いやいや中々混乱中ですよ。どういう事でしょう?これは」


「そうだな。すまない。説明するから一緒に上に来て欲しい」


頭を下げる3人の兵士達。やっと呼ばれた理由がわかるみたいだ。

さてさて、ちゃんと説明してもらいましょうか。



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