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51.だが断る!

金貨130枚。


ニヤリと笑う、ギルド長が出してきた金貨の枚数だ。

すっかり忘れていたが、今回の百鬼行軍ゴブリンマーチの追加報酬にゴブリン1体につき金貨1枚というものがあった。


今回の討伐数は上位種も入れゴブリン130体。キハクと共に倒したとしても、よく戦ったと自分を褒めてあげたい。


「その顔は忘れていただろう。この前グランファ爺の工房で多額の収入を得たと聞くが、もう少し金にがめつくなっても、いいんじゃないのかい」


やれやれ、とでも言うかのように軽く頭を振るギルド長は言葉を続ける。


「でだ。金貨130枚は冗談としても、黒1枚、青3枚が追加報酬だ」


金貨130枚入りの布袋…

ではなく、結果硬貨は4枚。その硬貨が入った布袋がコトリと小さな音を立て、机に置かれた。


この世界のお金ってなくすと大変な事になるんではなかろうか。気をつけよう。


「はい。確かに。さすがにこれで最後です……よね?」


現在までの合計3,583,500N


さすがに、これで全部だろう。いやこれでも今の僕には貰いすぎのような気もするんだけど…。


「お前さん。ホント欲がないな……。俺は一番活躍したんだ!もっと寄越せ!っとかないのか?つまらん」


「いやいやいや。ないですよ!というか言ったら、ギルド長に血だらけにされるイメージしか、浮かばないんですけど!」


冗談じゃなく、真面目な話このギルド長に逆らえば何をされるかわからない。

間違いなく今の僕ではミンチにされる。


気をつけよう…。


「くっくく。言うじゃないか。まぁその未来はほぼ100%正しい!よかったな言わなくて。ギルドが、ギルドの責任において査定した正確な報酬だ。増やす事も減らす事も許されんよ。」


「だから言わないですよ!」


この人のペースにいやでも巻き込まれる。

ここはさっさと退散した方がいいんじゃないだろうか。


しかし、いつの間にかギルド長の膝の上には、だら〜んとなったキハクが横になりその真っ白な毛並みをこれでもかと言うほど蹂躙されている。


そして当のキハクもだらしなく口元を緩ませ、もはや誰が主人か分からない状態になっていた。


お腹を見せていないのがせめてものプライドか……。


「くっいつのまにキハクを人質に……。」


もはや席を立つことも出来ない。


「うむ。やはりキハクは気持ちいいな。このまま私のペットにならんか?」


さすがにこの言葉には、キハクも驚きを見せビクっとなった後、悲しい顔をこちらに向けてきた。


さっきまで、あんなにだらしない顔をしてただろうに。


「ギルド長。キハクをいじめるのはやめてください。それにもう終わりなら、そろそろ帰りたいんですけど」


『主様〜』


キハクがあまりにも可哀想な顔と声をしているので、助け舟をだす。その間もギルド長の手はキハクを思う存分愛でていた。


「そうだな。からかうのはこの位にしておこうか。では真面目な話しだ。G級冒険者ユウ!」


「はっはい!」


急に真面目な顔となったギルド長につられ、まじめに返事を返す。


「この度の百鬼狂宴デスマーチでの活躍を、冒険者ギルドそして迷宮都市ラビエーニが領主クリストフ=ミラーの名において感謝の言葉を送る。貴殿の活躍は此度の戦いにおける第一功とし、ここにその報酬を与えるものとする。」


ギルド長は、キハクを床に戻しソファーから立ち上がり、取り出した書面を前にし読み上げる。

そして、続けて2枚目の報酬目録を読み上げた。


「冒険者ユウ。此度の戦いにおける報酬として、冒険者ランクをDランクに昇格。そして領主様より土地及び家屋とそれに付随する設備が進呈される。おめでとう」


「・・・」


「ユ……ウ 様?」


隣のシルネと顔を見つめ合い、この状況を一生懸命理解しようと頭を回転させる。


「まぁそう言うことだ。領主のミラー様と話してな。ユウの報酬を金じゃなく土地と家にしてもらった。これで2つ目の条件はクリアだな。よかったよかった。あっ!ちなみに領主が与えようとしていた報酬は、1000万Nと宝物庫にあった800万N位の価値の剣な。どうせユウには使えんし、貰った土地と建物は元々領主の別荘で迷宮都市の外にはあるが、魔物除けの結界と転移装置、あとはなんか色々ついてる。それと厨房設備も領主仕様だからかなり充実している。うんうん。我ながら良い仕事をした」


腕を組み、何度も頷きながら満足気な顔をするギルド長。

ただ僕は、どうしても気になる事があった……。


「あの……ギルド長?その家の価値がどう見積もっても1800万Nにならないんですが?」


そう。魔除けの結界に転移装置。それだけでも。いやどちらか一つでも、1800万N以上するのではないだろうか。


「あぁよくわかったな。その通り!まぁ正確な査定は難しいが5000…いや6000万N位か?もっとか?まぁいいじゃないか!元々領主が全く使わず。維持費だけが、無駄にかかっていた別荘だ。誰かが普通に住んだ方が家も幸せだろう。なんて言っても全く来ない別荘に執事やらメイドやらコックやらなんやら諸々で、100人は常駐していたからな。その連中も領主館に戻れて幸せだろう」


6000万!

頭が……。頭が痛くなってきた。


「ギルド長…。そんな規模の館を僕ら2人で、使うんですか?維持費は、維持費はどうするんですか!」


「おっおう。そんなに怒るなユウ。馬鹿みたいに掛かっていたのは、ほぼ人件費。結界は今のところ10年はもつし、転移装置は元々領主館だったのを、迷宮の出口に設定してある。これもあと5年は持つ魔力を注入して貰った。もちろん最高峰の従者達が暇を持て余して、管理していたのもあって管理は完璧だ。だからそう初期費用も、維持費も掛からないし、ユウもパーティメンバーというか、その特異性もあって秘密を厳守させる仲間が増えるだろ?それにユウがやろうとしている事(樹木魔法で農業)は、この迷宮都市じゃかなり異質な行為だからな。人目が全く気にならない場所にあるこの別荘は、うってつけだと思うぞ」


「ぐっ。確かに。それに、それならばあまり維持費を考えなくても良さそうですね。ちなみにどこにその別荘?ですか家はあるんでしょうか」


「おっやっと貰う気になってきたか。うむ場所か……ここだな」


地図を取り出したギルド長が、指し示したのは、迷宮都市ラビエーニの南西にある森の中にある湖のほとり。そこは小高い丘になっており、充分な農地と水場がある外界とは切り離された。まさに別荘地として最良の場所だという事だった。


「すごい場所ですね。ここからどの位かかるんでしょう?」


そう問題はここまでの距離なのだ。距離的には、生まれ育った村よりも遥かに離れている。ここまで遠いと、不便でしかない気がするのだけど。


「ん?ほぼ一瞬だぞ。忘れてないか?転移装置は一方通行じゃなく行き来できるんだ。ほぼノータイム。ここで暮らすのと変わりはない」


「すごい…ですね。ユウ様…」


ここまで完全に無言だったシルネがやっと口を開いた。どうやらとんでもないものを貰ってしまったらしい……。


「よし。そうと決まれば明日、領主のミラー様の館に行くぞ」


「えっ?嫌ですよ」



読んで頂き有難うございます。

じわりじわりと増えるブックマークにも評価にも、ニマニマしております。


これからもよろしくお願いします。

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