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50.ゴブリン討伐の報酬

「よく来た!」

ギルド長の部屋に入ると、机で書類と格闘していたギルド長が立ち上がり大きく手を広げた。



計画通り、宿ナザーレを出てからすぐに路地に入ると、変化の魔道具を起動しシルネは違う姿になった。

ギルドに入る時の姿は、真っ黒な髪をポニーテールのように後ろで束ね、少し僕に似た感じの美少女になってもらった。


「これでいいですかお兄ちゃん」


シルネの悪ふざけに一瞬吹き出してしまったが、所謂兄妹(本当はシルネが年上だがエルフは精神の成熟が少し遅いらしいから問題ない…)設定で通そうと考え、シルネに僕に似せて変化してもらい、この姿の時は【シル】というギルド長が呼んでいた名前で呼ぶことにし、首輪の義務のない奴隷制度に感謝した。


案の定、誰もシルネをシルネとは分からず、すんなりとギルド長室へたどり着く事ができた。


「ギルド長。【ゴブリンキング】討伐の際は、宿まで運んで頂き有難うございます。お陰様ですっかり回復することができました」


「いや。いいんだ。この戦いにおいて、間違いなく第一功の働きをしたんだ。こちらが感謝したいくらいだ。ありがとうこの街のために戦ってくれて」


そう言うと、ギルド長は深々と頭を下げた。


「おっキハクだね。もう姿を変えるのはやめたんだね。まぁこれなら以前のグレーパックウルフだと思う奴はいないだろう。キハクにも感謝するよ。君のお陰で多くの冒険者が救われた」


そう話しながら、ギルド長は屈み込みキハクと視線を合わせ、ゆっくりと頭を撫でた。


今はキハクもシルネも元の姿に戻っている。

そして、成長したキハクは隠す必要がなくなり真っ白の姿のまま外へ出す事にした。


『主様。褒められました』

うんうん。キハクも嬉しそうだ。真っ白で太めの尻尾がブンブンと勢いよく振られている。



「さて。シルネもよく来たね。うん。上手くいってるみたいだね」


シルネの表情から、何かを感じ取ったギルド長は穏やかな表情で、シルネの頭も撫で僕らをソファーに座らせた。


「さて、本題といこうか。ユウたちの今回の報酬の話だが、まずギルドからは緊急招集に対する報酬で金貨5枚。これは通常の百鬼巡行ゴブリンマーチでは、でないのだが、今回はギルドの調査ミスもあり百鬼狂宴デスマーチだった事への参加者全員への報酬だ」


コトリ。

と置かれた布袋。そこには5枚の金貨が入っていた。


これは本来義務である緊急招集では報酬はでない。しかし今回は間違った情報で冒険者を戦いへと赴かせてしまった詫びの報酬が出る事になったと言うことだった。


「そして次だ、報酬計算のためユウの気絶中にカードを見せてもらった。今回はそれを元に計算してある。受け取ってくれ」


ジャラ。

と先程よりも鈍く、硬貨が擦れる音をたてて置かれた布袋。


今回の単純な討伐数だけの報酬だ。もちろんキハクが倒した分も僕のカードに反映されて計算されている。


【ゴブリン】 ※55体

【ホブゴブリン】 ※2体

【ゴブリンナイト】 ※21体

【ゴブリンシーフ】 ※9体

【ゴブリンファイター】※22体

【ゴブリンモンク】 ※3体

【ゴブリンメイジ】 ※6体

【ゴブリンアーチャー】※6体

【ゴブリンプーリスト】※0体

【ゴブリンテイマー】 ※5体

【ゴブリンキング】 ※1体


ゴブリン達のアンデットを倒した分は、その性質上カウントされないみたいだ。

聞けば迷宮にしろフィールドにしろ、死体に神力が吸収されてアンデットになったものはカウントされるらしいが、ネクロマンサー が自らのMPで作り出したアンデットは魔法生物的な扱いになり、倒しても実入りが少ないらしい。


それでも、上位種がこれだけいれば相当な報酬になるだろう。

布袋の紐を解き、中身を確認する。


「では、説明しようか。ゴブリン自体はユウも知っている通り、討伐報酬 1体 12銅貨で、魔晶を1個3銅貨で買い取っている。つまりはゴブリン1体で銅貨15枚だな。ここまではいいか?」


「はい。大丈夫です。」


「そうか。ではこの後は上位種での報酬だ。討伐のみで魔晶がなくとも今回は総回収した後ギルドで引き取っているからな。報酬は魔晶込みの金額になっている。かなりあるからな簡単に説明するぞ」


そう言って、上位種の査定額を説明し始めた。やはり、普通のゴブリンと違って査定額が高い。


【ホブゴブリン】1体6銀貨

【ゴブリンナイト】1体15銀貨

【ゴブリンシーフ】1体18銀貨

【ゴブリンファイター】1体12銀貨

【ゴブリンモンク】1体15銀貨

【ゴブリンメイジ】1体25銀貨

【ゴブリンアーチャー】1体18銀貨

【ゴブリンテイマー】1体24銀貨 リーダー35銀貨


となっていた。


「あぁちなみに、テイマーの値段だが乗っていたモンスターによって変わる。今回はブラックウルフとシャドーウルフという、機動力のあるモンスターだから高めだ。それと今回リーダーの【ゴブリンテイマー】はそのテイムした魔物にやられたのを私が見ていた。そして、もちろんギルドカードにも【ゴブリンテイマー】の討伐数は4となっている。だが今回はユウ達が討伐したとみなし、査定した。実際シャドウウルフを討ったのもユウ達だしな。」


ギルド長が説明しながら、今回の報酬の計算表を持ってくる。紙にはそれぞれどのゴブリンを何体倒し、1討伐当たりの金額と、今回の倒したゴブリンの数による報酬額が記載されていた。


【ゴブリン】 ※55体 15銅貨\8金貨25銅貨

【ホブゴブリン】 ※2体 6銀貨\12銀貨

【ゴブリンナイト】 ※21体 15銀貨\31金貨5銀貨

【ゴブリンシーフ】 ※9体 18銀貨\16金貨2銀貨

【ゴブリンファイター】※22体 12銀貨\26金貨4銀貨

【ゴブリンモンク】 ※3体 15銀貨\4金貨5銀貨

【ゴブリンメイジ】 ※6体 25銀貨\15金貨

【ゴブリンアーチャー】※6体 18銀貨\10金貨8銀貨

【ゴブリンテイマー】 ※5体 24銀貨\35銀貨\9金貨6銀貨 4金貨9銀貨


「どうだ。これがユウの倒したキング以外のゴブリン達の頭数と、報酬額が書いてある。よく確認してから懐へ入れてくれ。」


報酬の布袋をひっくり返し、ジャラジャラと硬貨を取り出すと、確認したところ、黒い硬貨が1枚、青い硬貨が2枚、金貨が8枚銀貨が3枚、銅貨が5枚入っていた。


「これは?」


黒い硬貨と青い硬貨を持ち、ギルド長へ確認する。さすがに金貨までは見たことがあったが、この2色の硬貨は見たことがない。いったいどれくらいの価値なのだろうか。


「あぁそうか見たことがなかったか。この青いのが青貨、金貨10枚分の価値になる。そして、こっちが黒貨。青貨の10倍で1,000,000Nの価値になる。まぁ今回のキング以外の報酬は1,283,500Nという事だな」


ちらりとシルネをギルド長がみると、机の上に置いてある報酬額の記載された紙を、シルネがちらりと確認し、頷いた。


「はい。ユウ様確かに報酬に間違いはないようです。」


一瞬で報酬額を確認したのだろうか。やけに自信ありげだ。


「ユウ様。スキルです……」


小声で耳元で囁くシルネに、自分が確認した事をすっかり忘れている事に気がついた。


(あぁ《計算》のスキルか!すごいなスキル。暗算レベルのスピードじゃなかったぞ。)


「そして、今回のメインの報酬だ」


シルネと小声で話していると、ギルド長がもう一つの小さな布袋と、先程と同じ大きさの紙を机に置いた。


【ゴブリンキング】 ※1体 1黒貨\ 従えていた部下数による査定


報酬部分への記載はたった1行。その1行には【ゴブリンキング】の報酬の記載がされていた。


「1黒貨…。100万Nですか?1体で!」


それは、驚きの報酬だった。

倒したと言っても最後の最後。ギルド長が弱らせてくれたのに対し、留めをさしただけだ。それでこの報酬……。


「はっはは。良い反応だ!肝の座ったユウの驚いた顔が見れて満足だよ。くっくく。まぁなんだあの状況を作り出したのは間違いなくユウであり、その従魔であるキハクだ。私はその隙をついたにすぎんよ」


それでも高すぎるんじゃ。

と思っているのが、わかったのか、ギルド長はさらに言葉を続ける。


「それに普通はもっと高い。なんなら今回の報酬は【ゴブリンキング】として過去最低額かもしれん。なんせ部下0なんてキングは今までいなかったはずだからな」


「そういえば、【ゴブリンキング】の強さは部下の数で決まるんでしたね。それなら……」


「うむ。ユウが何を言ってもこの金額は上がりもしないし、下りもしない。これがギルドが出した正式な報酬額だ」


3つの布袋を受け取り、懐に入れるふりをしながら《どうぐ》へとしまい込む。


これで終わりかとお礼を言おうとすると、先にギルド長が口を開いた。


「さて、ここまでが魔物を討伐した事による討伐報酬だ。いいかな?」


そう言ったギルド長の顔はニヤリと含んだ笑みだった。




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